2015年5月3日日曜日

「九条の会」共催上映会 練馬区教委が後援断る

 東京大空襲で家族を失ったエッセイスト海老名香葉子さん(81)の実体験を描いたアニメ映画「うしろの正面だあれ」上映会「ねりま九条の会」共催)は、上映会は29日に開かれ区民ら約百人が参加しました。
 
 しかし開催にあたり2月に「ねりま九条の会」練馬区教委に後援依頼の申請書を提出したところ3月24日に、会が昨年の都知事選で宇都宮健児氏を支援したことを挙げ、「特定の主義主張をもって政治活動を行う団体への承認は、教委の政治的中立性を損なう恐れがある」として不承認の返事がありました。
 
 護憲団体が開く憲法関係のイベントをめぐっては、「政治的中立性を損なう」などの理由で自治体が後援申請を受け付けない動きが相次いでいます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「九条の会」共催上映会 練馬区教委、後援断る
東京新聞 2015年5月1日
 一九四五年の東京大空襲で家族を失ったエッセイスト海老名香葉子(かよこ)さん(81)の実体験を描くアニメ映画「うしろの正面だあれ」上映会の後援を、東京都練馬区教育委員会が断った。日本国憲法を守ろうと活動する区民団体「ねりま九条の会」が共催していることなどが理由という。上映会は四月二十九日に開かれ、区民ら約九百人が参加した。
 
 作品は、東京の下町で家族と仲良く暮らしていた少女が、空襲が激しくなったため疎開し、東京に残った家族を東京大空襲で失うストーリー。
 海老名さんが自らの体験をつづった児童書を、有原誠治監督(67)が一九九一年に映画化した。
 制作会社の倒産などで長く上映されていなかったが、有原さんが「外地の出来事だと思っていた戦争が、ある日突然爆弾になって身近に迫る様子を描いている。今こそ見てほしい」と上映会を企画、今年一月に実行委員会を立ち上げた。
 小説家の大江健三郎さんら文化人を中心に憲法九条を守る活動を展開している「九条の会」に共感した有原さんらで結成した「ねりま九条の会」が、上映会を共催することになった。
 二月に有原さんが練馬区教委に後援依頼の申請書を提出したところ、窓口の担当者から、九条の会が関わっていると後援は難しいと難色を示されたという。有原さんは繰り返し窓口を訪れ「憲法を守るのは公務員の義務だ」などと抗議したが、三月二十四日になって、区教委から断りの書面が郵送された。
 書面は、ねりま九条の会が昨年の都知事選で宇都宮健児氏を支援したことを挙げ、「特定の主義主張をもって政治活動を行う団体への承認は、教委の政治的中立性を損なう恐れがある」と不承認の理由が記されていた。
 
 区教委の岩田高幸教育総務課長は本紙の取材に「どの団体がどの人を支持しようと構わないが、団体を後援すると教委が団体と同じ考えだと誤解を受けかねない」と説明。有原さんは「我々には政治活動をする自由がある。終わった選挙を理由に持ち出すのはそれこそ政治的ではないか」と反発している。
 
◆各地で後援拒否の動き続く
 護憲団体が開く憲法関係のイベントをめぐっては、「政治的中立性を損なう」などの理由で自治体が後援申請を受け付けない動きが相次いでいる=表参照。各地の九条の会のイベントでは昨春以降、長野県千曲(ちくま)市や鳥取市、栃木県佐野市などで後援が拒否されている。
 東京都調布市は今年1月に開催された「調布九条の会『憲法ひろば』」の創立10周年記念イベントについて、会の活動が「政治的活動に当たる」などとして後援を断っている。
<九条の会> 憲法九条を守ろうと2004年6月、作家の井上ひさし氏や大江健三郎氏、沢地久枝氏、憲法学者の奥平康弘氏ら文化人、知識人9人が「呼びかけ人」になって発足。趣旨に賛同した人が、各地の地域や職場で九条の会を結成している。
 
 写真