2015年5月22日金曜日

ポツダム宣言を読んでいないことを認めた安倍首相

 安倍首相は20日の共産党志位委員長との討論で、先の日本の戦争が間違っていたという認識があるのかと問われましたが、いつものようにまともに答えませんでした。
 次に、ポツダム宣言の第6項(=世界を征服しようという誤りを犯した勢力を永久に追放する)と第8項(カイロ宣言に基いて、侵略し略奪した領土を返還する)を具体的に例示して、その宣言の内容を認めるのかと問われると、言を左右にしつつも「(宣言の第6項と第8項を)つまびらかに承知をしているわけではないので、今ここで直ちに論評することは差し控えたい」と答えました。
 
 いつもの逃げの積りでしょうが、「戦後レジーム」からの脱却を叫んで登場した安倍氏が、その原点であるポツダム宣言を読んでいないというのには驚かされます。また行政府の頂点にいる人間がポツダム宣言を「論評する」と述べるのも不適切な表現です。
 
 共産党は翌21日に、安倍氏が自民党幹事長代理のときに月刊誌「Voice」の対談で、「ポツダム宣言というのはアメリカが原爆を落とし、日本に惨状を与えた後、『どうだ』とばかりにたたき付けたもの。あたかも自分自身が戦勝国であるかのような態度で日本の総理を責め上げる。大変な違和感を覚えた」、と語ったことを明らかにしました。
 ポツダム宣言が出されたのは1945年7月26日で、広島と長崎に原爆が投下されたのは8月6日と9日ですから、そうした基本的な認識もなかったようです。
 
 何よりも安倍首相がポツダム宣言を読んでいないことが明らかになったことは、国際的に大変に問題にされることです。
 
 もしも先の米議会での演説で、「ポツダム宣言の内容についてはつまびらかにしないので評価は差し控える」と述べたら、議会は凍りつき、その瞬間に演説は終了になっただろうといわれます。
 
 元外交官の天木直人氏のブログ記事:「ポツダム宣言を読んでいない事を認めた安倍首相の致命的答弁」を紹介します。
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ポツダム宣言を読んでいない事を認めた安倍首相の致命的答弁
天木直人 2015年5月21日 
 今度の党首討論の最大の意義は、安倍首相がその答弁の中で、ポツダム宣言を読んでいないことを認めてしまったことだ。
 すなわち共産党の志位委員長が侵略戦争に関する歴史認識を質問した際に、ポツダム宣言を引用し、これでも間違った戦争だったと認めないのかと迫った。
 それに対し、なんと安倍首相は、ポツダム宣言をよく読んでいないから論評を差し控えると答弁したのだ。
 これは日本の首相として致命的な答弁である。この発言を引き出した志位委員長の質問の大殊勲である。
 言うまでもなくポツダム宣言の受諾は日本が戦後国際社会に復帰した際の大前提である。
 そこには、ナチス・ドイツ軍と並んで日本軍が並記され、連合国側は日本に対し、世界征服に乗り出す過ちを犯した無責任な軍国主義を世界から駆逐する事を受け入れる事を無条件で求めている。
 そして日本はそのポツダム宣言を無条件で受け入れたのだ。
 安倍首相は口が裂けても「読んでいない」などと言っていけなかった。
 ウソでもいいから読んでいる振りをしなければいけなかった。
 ウソをつきたくなかったら、ポツダム宣言を完全にスルーして、単に「論評は控える」とだけ言って逃げればよかったのだ。
 安倍首相はその知恵がなかった。
 そこまでの余裕はなかった。
 悪知恵を働かすには、安倍首相はあまりにも正直だということだ。
 大手メディアは共産党の志位委員長の質問と、それに対する安倍首相の答弁としてごまかしているが、大手メディアこそこの安倍首相の答弁を大声で批判すべきなのだ。
 中国がこの安倍首相の発言を聞き逃すはずがない。
 安倍首相は8月15日の安倍談話に向けてさらなる窮地に立たされるだろう。
 安倍首相の致命的な発言をした。
 この安倍首相の致命的発言を引き出した今回の党首討論は、かつてない 有意義な党首討論だったということだ(了)