2015年5月1日金曜日

安倍首相の米両院会議での演説に批判

 安倍首相は毎晩、昭恵夫人がうるさくて悲鳴を上げるほど練習したということですが、その割には米上下両院合同会議での英語のスピーチはたどたどしい感じのものでした。
  首相は「積極的平和主義」を2度口にし、安全保障法制を夏までに成立させて自衛隊が米軍をサポートできる体制を築くと述べました。
 あとは米国と米人に対する歯の浮くようなお世辞とついしょう(追従)に終始していたので、米議員や傍聴者の自尊心を大いに満足させる効果はあったようです。しかし「大戦」への反省は述べられたものの、隣国である中国や韓国への加害の反省と謝罪の言葉がなかった点については彼らも批判していました。
 
 辛口で知られる「世相を斬る あいば達也」ブログは、30日付で「虚しき安倍訪米 大枚叩いた議会演説も詭弁と認識の錯誤」と題して酷評しました。
 
 やはり辛口の批評をする植草一秀氏は、30日付のブログで次のように批判しています。
 
 “米国の植民地日本の総督が宗主国を訪れて、忠誠を誓ったのが今回のスピーチと表現できるだろう
 安倍晋三氏がスピーチの冒頭で、「日本が、世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからであります」と述べたのはブラックユーモアである。
 安保法制について、「この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟はより一層堅固になります」と述べた。それは日本の自衛隊を米軍の支配下に組み込み、米国が創作する戦争に日本が自動的に加担する体制を整えることを指している。スピーチの核はこの点のみで、残りは意味のない情緒的な陳述ばかりであった。”
 
 猪野亨弁護士も、「演説は最低最悪 米国議員に媚びへつらうだけで歴史を歪曲するもの」とするブログを公表しました。
 
 あれだけ米国や米人を持ち上げることが出来るのであれば、せめてその1/10 でも中国や韓国にそうした配慮を分けることが出来なかったのかという思いに駆られます。
 
 猪野 亨弁護士のブログを紹介します。
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安倍氏の米両院会議での演説は最低最悪 
米国議員に媚びへつらうだけで歴史を歪曲するもの
弁護士 猪野 亨のブログ 20150430
 安倍氏が4月30日(日本時間)で米両院会議で演説を行いましたが、最悪の内容です。
 米国に媚びを売るだけのものです。
 
 米国に向けた演説ではこれ。
かつての敵、今日の友
 みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。
 近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。こう、おっしゃっています。
 「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉をたたえることだ」
 もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のおじいさんこそ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした。
 これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。
 熾烈(しれつ)に戦い合った敵は、心の紐帯(ちゅうたい)が結ぶ友になりました。スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。ほんとうに、ありがとうございました。
 
 アジアに対する侵略国日本が欧米諸国を軍事力をもって排除しようとしたアジア・太平洋戦争。
 軍事力で徹底的に敗北し、戦後は米国の属国になることを選択した日本。その米国の議員たちに対して安倍氏は最大限のエールを送り媚びを売ったのです。
 安倍氏の頭の中には、こんな歌が流れていたのかもしれません。
 
「昨日の敵は 今日の友 語ることばも うちとけて
 我はたたえつ かの防備 かれは称えつ わが武勇」(水師営の会見より)
 
 アジア・太平洋戦争に対する認識はこちらです。
アメリカと戦後日本
 戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思いは、歴代総理と全く変わるものではありません。
 「痛切な反省」と「アジア諸国民に苦しみを与えた事実」を述べていますが、やはり出てこない「侵略」と「心からのお詫び」の言葉です。
 こうなると「痛切な反省」とは一体、どのような内容の反省なのでしょうか。
 私たちの日常生活だって、「反省します!」と言ってみても、普通ならその反省の内容が問われるのは当然のことです。
 安倍氏が言うと、米国様にたてついしまったことへの「反省」のようにしか聞こえなくなります。
 「アジア諸国民に苦しみを与えた」も日米戦争のとばっちりを与えてしまって申し訳ないというレベルのものでしょう。
 村山談話と比較すればよくわかります。
「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」
 村山談話では、痛切な反省は、「とりわけアジア諸国の人々」に向けられたものです。安倍演説ではその順番を変えて、「アジア諸国民に苦しみを与えた」を後に持って行ってしまうところに大きな意味があります。
 しかも「大戦」という言葉も第二次世界大戦を指すと思われますが、安倍氏は米国を念頭に置いているから当然なのですが、「大戦」といえば、1939年9月にドイツ、イギリス・フランス間での戦争が始まった以降の戦争を指す概念であって、1931年に日本が行った中国東北部への侵略、1937年に行った中国への全面的な侵略戦争については含まれません。
 安倍氏の演説がいかに村山談話とは全く別物であることがわかろうというものです。
 米国の個々の議員たちのご機嫌とりにはある意味では成功したのかもしれませんが、しかし、それ以外の人たちの納得を得るものになるはずがありません。
 安倍氏は、過去の歴史を歪曲する最悪の首相です。
 
     
              写真はハフィントンポストより