2018年9月14日金曜日

統計所得の集計方法を変更し 賃金上昇率を実際よりも過大に

 GDPの計算では、全科目を集計することは物理的に不可能なので、定められた代表的な項目について集計しそれに係数を乗じて求めます。政府は、16年にそのリストアップ項目をGDPが高くなる方向に変更し、総額が巨額になる各企業の研究開発費を新たに加えるなどしました。その結果、先に5年間でGDPが52兆円アップしたと公表しましたが、そのうち31兆円は計算方法の変更による嵩上げ額だと言われています。
⇒ (9月13日) 8月の倒産件数が急増
 
 ところが国民所得の計算でも全く同じ手法で、見掛けの数字がアップするようにしていたことが分かりました。
 「毎月賃金統計調査」がそれで、厚労省が全国約33千の事業所から賃金や労働時間などのデータを得てまとめているのですが、1月に新たな作成手法を採用し、調査対象事業所の半数弱を入れ替えました
 その結果今年に入ってからの「現金給与総額」の前年比増加率は17年の04大きく上回り、安倍政権の狙い通りの結果になったということです。
 賃金アップが高まるように統計の母集団を変えたのですから、そうなるのは当たり前のことで、「詐欺まがいの手法」と言われても仕方がありません。
 詳細は添付の西日本新聞の記事をご覧ください。
 
 政府は、調査対象の入れ替えとならなかった半数強の事業所だけで集計したのも「参考値」として公表することを理由に居直るようですが、そもそも大多数の 国民は「参考値」にまで注意を払うことはしません。まさに国民を騙す「印象操作」の手法です。
 それに政府にとって都合の良い結果を得るための組み替えを、「無作為抽出」方式で行ったというのも俄かには信じられません。膨大な手間ヒマのかかる変更を、結果が出ないと分からない無作為抽出で行う筈がないからです。
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統計所得、過大に上昇 政府の手法変更が影響 専門家からは批判も
西日本新聞 2018年09月12日
 政府の所得関連統計の作成手法が今年に入って見直され、統計上の所得が高めに出ていることが西日本新聞の取材で分かった。調査対象となる事業所群を新たな手法で入れ替えるなどした結果、従業員に支払われる現金給与総額の前年比増加率が大きすぎる状態が続いている。補正調整もされていない。景気の重要な判断材料となる統計の誤差は、デフレ脱却を目指す安倍政権の景気判断の甘さにつながる恐れがある。専門家からは批判が出ており、統計の妥当性が問われそうだ。
 
 高めになっているのは、最も代表的な賃金関連統計として知られる「毎月勤労統計調査」。厚生労働省が全国約3万3千の事業所から賃金や労働時間などのデータを得てまとめている。1月に新たな作成手法を採用し、調査対象の半数弱を入れ替えるなどした
 その結果、今年に入っての「現金給与総額」の前年比増加率は1月1・2%▽2月1・0%▽3月2・0%▽4月0・6%▽5月2・1%▽6月3・3%-を記録。いずれも2017年平均の0・4%を大きく上回り、3月は04年11月以来の2%台、6月は1997年1月以来21年5カ月ぶりの高い伸び率となった。安倍政権の狙い通りに賃金上昇率が高まった形だ。
 
 しかし、調査対象の入れ替えとならなかった半数強の事業所だけで集計した「参考値」の前年比増加率は、1月0・3%▽2月0・9%▽3月1・2%▽4月0・4%▽5月0・3%▽6月1・3%-と公式統計を大きく下回る月が目立つ。手法見直しで、計算の方法を変更したことも誤差が生じる要因とみられる。
 
 誤差に対しては、経済分析で統計を扱うエコノミストからも疑義が相次いでいる。大和総研の小林俊介氏は「統計ほど賃金は増えていないと考えられ、統計の信頼性を疑わざるを得ない。報道や世論もミスリードしかねない」と指摘。手法見直し前は誤差が補正調整されていたことに触れ「大きな誤差がある以上、今回も補正調整すべきだ」と訴える。
 
 厚労省によると、作成手法の見直しは調査の精度向上などを目的に実施した。調査対象の入れ替えは無作為に抽出している。見直しの影響で増加率が0・8ポイント程度上振れしたと分析するが、参考値を公表していることなどを理由に「補正や手法見直しは考えていない」(担当者)としている。