2020年3月4日水曜日

04- 新型インフルエンザ対策特別措置法改正の問題点!

 安倍首相2日の参院予算委で明らかにした新型インフルエンザ等対策特別措置法は、首相が「緊急事態」を宣言することで、医療などに必要な物資の入手、施設建設のための土地の収用などで強制力を持つもので、政府関係者は、新型インフルエンザの特措法は民主党政権時に制定されたので、その改正であれば「一週間もあればできる」とみています
 しかし日弁連は特措法制定当時、「人権に対する過剰な制限がなされる恐れがある」との反対声明を発表(12年3月)しており、当時事務総長だった海渡雄一弁護士は法整備について「感染症予防で人権制限をするには、節度と正確な事実把握が大事。後手後手の政府が突然、言い出した印象で、まずは法律がなくてもできるPCR検査をきちんとするべきだ」と話しています

 海渡弁護士は同氏のブログの中で、「安倍政権の政策の最大の問題点は、検査させない政策で、まともに感染状況を把握しようとしていません。重症化するまで、検査しないなどという異常な政策が、今も改められていません。そして、専門家はおろか、文科大臣のいうことも聞かないで、突然全国の休校措置を要請したりしているのです。科学的根拠と関係なく、権力を行使しているのが安倍首相です」として「安倍政権にこのような立法を与えることは、あまりにも危険で戒厳令に等しい状況をつくられてしまう危険性があるのです」と述べています

 東京新聞と同氏のブログを紹介します。
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<新型コロナ>インフル特措法 改正検討 首相、緊急事態で強制力
東京新聞 2020年3月3日
 安倍晋三首相は二日の参院予算委員会で、新型コロナウイルス感染拡大に備えた法整備について、既存の新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正する方向で検討していることを明らかにした。同法は、首相が「緊急事態」を宣言することで、医療などに必要な物資の入手、施設建設のための土地の収用などで強制力を持つ。専門家には、国民の私権の制限につながると懸念する声もある。(村上一樹)

 首相は「常に最悪の事態を想定し、あらかじめ備えることが重要だ」として、特措法と同等の措置ができるよう法整備を急ぐ考えを示した。
 特措法は二〇一二年に制定、一三年に施行された。新型インフルエンザが流行し、政府が国民生活に重大な影響が生じると判断した場合に、首相が緊急事態を宣言。都道府県知事が不要不急の外出の自粛、学校や映画館など人が集まる施設の使用制限、イベントの開催自粛などを要請できると定める。
 知事は医薬品や食品の売り渡しや保管の命令も可能で、応じない場合は罰則の適用もある。病院が足りない場合、土地や建物を借りて臨時の医療施設を設置。所有者が正当な理由なく同意しない時は強制的に使用もできる。
 政府はこれまで、新型コロナウイルスに関し、国会の議決が必要ない政令で対応してきた。重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じように知事が患者に入院を強制できるようにしたり、発熱などの症状がない人も発症者と同様に扱えるようエボラ出血熱など最も危険性が高い感染症並みの措置も可能にしてきた。
 首相によるこれまでのイベント自粛や臨時休校の要請も、法律に基づかない首相・政府の独断による措置だった。政府関係者は、新型インフルエンザの特措法は民主党政権時に制定されたことも踏まえ、その改正であれば「一週間もあればできる」とみている。

 日弁連は特措法制定時に「人権に対する過剰な制限がなされる恐れがある」との反対声明を発表。当時の事務総長だった海渡雄一弁護士は法整備について「感染症予防で人権制限をするには、節度と正確な事実把握が大事。後手後手の政府が突然、言い出した印象で、まずは法律がなくてもできるPCR検査をきちんとするべきだ」と話している

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安倍政権による緊急事態宣言、
新型インフルエンザ対策特別措置法改正に異議あり!
   海渡 雄一(弁護士) 2020年3月3日
 昨日(3/2)の参院予算委員会で、安倍首相が新型インフル特措法の改正と緊急事態宣言を発すると発言しました。野党の立憲民主党の議員の方々も賛成される方向性だと聞き、大変な危機感を持ちました。この法律と、それを安倍政権が行使することの問題点について、与野党の心ある国会議員の皆さんは自覚してほしいと考え、次のとおり、意見を表明します。

 この法律では次のような措置が可能となります。
 全国的かつ急速なまん延により、国民の生活及び経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態となった場合、内閣総理大臣は「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行う(第32条)。
 新型インフルエンザ等緊急事態において、以下の措置が可能になる。
 外出自粛要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示(潜伏期間、治癒するまでの期間等を考慮) 都道府県知事は住民に対し外出の自粛を要請できる(第45条第1項)。
 また、罰則はないものの、多数の者が利用する施設(学校、社会福祉施設、建築物の床面積の合計が1,000平方メートルを超える劇場、映画館や体育館など)の使用制限・停止又は催物の開催の制限・停止を要請することができる(第45条第2項)。
 正当な理由がないのに要請に応じないときは、特に必要があると認めるときに限り、要請に係る措置を講ずべきことを指示できる。外出自粛や使用制限の期間は、新型インフルエンザ発生後の最初の1-2週間が目安とされている。
 住民に対する予防接種の実施(国による必要な財政負担)
医療提供体制の確保(臨時の医療施設等) 臨時の医療施設を開設するため、土地や建物を強制使用することも可能である(第49条)。
 緊急物資の運送の要請・指示
 政令で定める特定物資の売渡しの要請・収用
都道府県知事等は、新型インフルエンザ等の対応に必要な物資の売り渡しを業者に要請することができ、不当に応じない場合は収用することも可能である(第55条)。また、不当に売り渡しに応じなかった業者に対して、罰則を適用することもできる(第76条)。
 埋葬・火葬の特例
 生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)
 行政上の申請期限の延長等
 政府関係金融機関等による融資 

 昨日の投稿でもふれたように、個人の自由や権利の制限につながるおそれもあることから、日本弁護士連合会は2012年3月に反対声明を出しています。この声明を添付します。日弁連声明 (⇒(12年3月2日)新型インフルエンザ対策のための法制に関する会長声明

 この法律は民主党政権時代に作られました。第5条において、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものでなければならないと定められていますが、はたして、このような自制が安倍政権の下できちんと働くかどうかをよく考えてほしいのです。
 確かに、抑制の取れた政府が、正確な情報を把握したうえで、このような法律を適用することができれば、私も反対しません。民主党政権の時は弊害は出ませんでした。それは、この時の政権には抑制が効いていたからです。
 台湾では1月15日に指定感染症に指定し、中国からの人の流れを止めました。日本政府は強い警鐘があったのに、政令改正は1月31日で施行は2月7日という信じがたいスピードで、批判を浴びて施行だけは前倒しされました。この間、武漢からの観光客まで受け容れていたのです。それに付け加えて、ダイヤモンドプリンセス号からの下船者を、伝染病予防法で隔離すべきだったのに、隔離しないで帰宅を認めたために、大きな感染拡大をまねいたのです。明らかに政府の失策に基づく人災です。

 安倍政権の政策の最大の問題点は、検査させない政策で、まともに感染状況を把握しようとしていません。重症化するまで、検査しないなどという異常な政策が、今も改められていません。そして、専門家はおろか、文科大臣のいうことも聞かないで、突然全国の休校措置を要請したりしているのです。科学的根拠と関係なく、権力を行使しているのが安倍首相です。
 安倍政権は、これまでのコロナウィルス対策の失敗をこの法律改正で吹き飛ばそうとしているのです。安倍政権にこのような立法を与えることは、あまりにも危険です。政府の対策を批判する集会すら開けなくなります

 当時民主党に属しておられた政治家の多くが、自分たちの作った法律だから大丈夫と軽信するのはあまりにもナイーブすぎます。安倍政権に強大な権限を与えることは、戒厳令に等しい状況をつくられてしまう危険性があるのです。独裁政権と化した安倍政権の永続化につながる危険性がないかという角度から、慎重に法案を審議していただきたいと思います。