2020年3月21日土曜日

21- 正論を明示する上昌弘氏に対する言論封殺の真実(植草一秀氏)

 以前に頻繁にTVに登場し、安倍内閣のPCR検査抑制を厳しく批判し、民間の機関を活用すれば直ぐにも1日数万件が実施できると主張してきた医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏(東大医学部卒)が、いつからかTVに出なくなりました(その一方で海外メディアからの取材が増えているということです)
 TVに登場しなくなった事情について上氏は「新型コロナ解説で安倍批判は控えてほしいと某局ディレクターに言われた」と明らかにしたということです。
 まさに推測されていた通りのことで、官邸のTVを政府寄りのコメンテ―ターで独占させたいという意図に基づいたもの思われます。安倍首相は常にスタンドプレーに徹し、ことあるごとに綺麗ごとを述べ立てますが、言論を統制し安倍応援団を活用することは彼が執心して止まないことで、その実態は斯くの如しです。
 植草一秀氏が明らかにしました。
 また植草氏は、安倍内閣が新型コロナウイルスを123日に「指定感染症第22」に指定したことは、感染確認者を国の指定医療機関に隔離することを義務付けるもので、軽症または無症状者も指定医療機関に入院させて隔離すれば病床が不足するのは自明だとして、それも検査抑制に作用している指定を変更すべき)と指摘しています
 大阪方式などを参考にして、軽症者を別途隔離施設に収容するように国は早急に段取りすべきです。

 孫崎享氏の「日本外交と政治の正体」を併せて紹介します。
 記載されている検査数等はここ数日急激に増えているので数字は合わないかも知れませんが、早期発見、早期隔離を実施しているドイツ、スイス、ノルウェーなどの致死率が1%未満であるという指摘は重要です。
 それに対して日本の致死率は、20日10時半NHK発表ベースで死者は33人、国内感染者数は962人なので34%と極めて高い比率です。無作為と隠蔽の結果がこういう異常な数値につながっているわけです。
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正論明示上昌弘氏に対する言論封殺の真実
植草一秀の「知られざる真実」 2020年3月20日
本ブログ、メルマガでは安倍内閣のPCR検査妨害を当初より厳しく批判してきた。
同様に、当初より安倍内閣のPCR検査抑制を的確に批判してきたのが医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏だ。
本ブログ、メルマガでも上氏の的確な論評を取り上げてきた。
2月26日付ブログ記事「安倍内閣が検査を忌避する「特殊な事情」」https://bit.ly/3djI0M6
また、上昌弘氏のテレビ出演を安倍内閣が妨害しようとしている可能性を指摘してきた。
3月10日付ブログ記事「現状を「何とか持ちこたえている状況」とする御用機関」https://bit.ly/3b9BJ3x 
このことに関して上昌弘氏自身が重大な事実を明らかにした。
月刊日本2020年4月号に掲載された上昌弘氏のインタビュー記事だ。
『月刊日本』2020年4月号 https://amzn.to/3de242d コロナ問題「「安倍批判は控えてほしい」と言論封殺された」
当該記事をハーバー・ビジネス・オンラインが紹介している。
「新型コロナ解説で「安倍批判は控えてほしい」と某局ディレクターに言われた」https://bit.ly/3bgRdmt 
『月刊日本』には私も連載記事を掲載しているので、ぜひ同誌のご購読をお願い申し上げたい。
植草一秀の「月刊・経済批評」第100回『安倍錯乱コロナ不況』https://amzn.to/3de242d 

上昌弘氏のインタビュー記事冒頭部分を転載させていただく。
―― 上さんは医師・研究者としてテレビに出演し、安倍政権の新型コロナウイルス対策に警鐘を鳴らしてきました。しかし最近、圧力を感じることがあったそうですね。
上昌広氏(以下、上):先日、某局のディレクターから「上層部から『安倍政権の批判は控えてほしい』と言われている」と釘を刺されるということがありました。新型コロナの問題で、メディアの自主規制が働いていると感じました。
現在は海外メディアからの取材依頼が増えています。理由を聞くと、「日本には独自の意見を自由に発言する医師や専門家がほとんどいない。政府から独立している専門家を起用したいと思い、『誰か該当する人はいないか』と尋ねると、あなたの名前が上がることが多かった」と話してくれました。
「政府から独立している」というのは、政府とは関わりがないということです。確かに政府と関わりのある専門家は立場上、政府の見解と異なる意見を言いにくい。しかし私にはそういうしがらみがないので、研究者として正しいと思ったことを自由に発言することができます。そういう事情で私に声がかかったり、かからなかったりするのだと思います。

安倍内閣のコロナ対策は根本的に誤っている。その核心が検査を実施しないことだ。
検査を実施しないことによって、軽症、無症状の感染者をまったく把握できない。
言い方を変えれば、軽症、無症状の感染者が放置されている
このことが、日本における爆発的感染拡大をもたらす原因になる。
検査を行わないもうひとつの問題は、重症化しやすい高齢者、基礎疾患を持つ人の感染確認が遅れることにより、重篤な事態を引き起こしやすいことだ。
感染確認者が多数になれば医療崩壊するとの指摘がある。しかし、医療崩壊がもたらされる主因が安倍内閣の措置にあることを見落としてはならない。

それは、安倍内閣が新型コロナウイルスを1月23日に「指定感染症第2種」に指定したこと。この指定により、感染確認者を隔離病棟など特殊な設備をもっている国の指定医療機関に隔離しなければならないことになった。
しかし、コロナウイルス感染者の8割は軽症または無症状である。この感染者を指定医療機関に入院させて隔離すれば病床が不足するのは自明だ。指定を変更して、軽症者、無症状者は自宅での療養に切り替えるべきだ。その上で検査を拡大して感染者を特定する。

安倍内閣が検査を拡大しないことについて、上氏はインタビューで
上:私にも分かりませんが、強いていえば感染研は医療機関ではなく研究機関なので、情報と予算を独占して実態把握や患者の治療よりもウイルス研究を優先したいという思惑があったのではないかと思います。
と述べている。

世界の主要国のなかで、検査を妨害しているのは日本だけ。
安倍内閣はダイヤモンド・プリンセス号で、船員から感染が広がっている事実を早期に確認しながら、乗員、乗客を船内に監禁して爆発的な感染拡大を招いた。
大都市圏で感染が爆発的に拡大するのは時間の問題であると考えられる。
直ちに安倍内閣の頑迷な指揮を打破して検査拡大を実行させなければならない。
その責務を負っているのは日本の国会である。
(以下は有料ブログのため非公開)

日本外交と政治の正体 孫崎享
世界の潮流と逆行する日本の新型コロナウイルス感染防止策
孫崎 享 日刊ゲンダイ 2020/03/20
 新型コロナウイルスが世界各地で猛威を振るっている。当初、危険性は低いとして平静を装っていた米国のトランプ大統領も感染拡大に対処するため国家非常事態宣言を出した。各国が感染対策として最重要視しているのは「早期発見」と「早期隔離(自宅隔離を含む)」である。
 ところが日本は異なる。政府の方針は「37・5度以上の発熱が4日間以上続く時に相談し、必要に応じて検査する」というものである。検査は1日当たり約600件で、累積検査数は1万3000件程度である。

 この政府方針は感染拡大の防止に対して大きな懸念がある。感染の疑いがある潜伏期間中の人でも、検査前であれば家族はもちろん、さまざまな人と接触する可能性があるからで、「どうぞ、感染を拡大してください」と言っているようなものだ。

 私は新型コロナウイルスに関する資料を見ていて興味あるデータを見つけた。それは総感染者数と死者の関係である。
 ドイツでは感染者数は5426人と急増している(16日時点)が、死者数は11人である。他方、イランは感染者数1万3938人に対し、死者は724人である。
 つまり、総感染者数に対する死者の比率が全く違うのである。
 1人の死者に対して100人以上の感染者が出ている国はドイツのほか、スイス、ノルウェーなどがあるが、これらの国は早期発見、早期隔離を実施している
 この対応は韓国も取っている。韓国では「ドライブスルー検査方式」を生み出した。検査に要する時間は10~20分であり、韓国国内では500カ所以上の検査場があるという。この方式は今、英国、米国、ドイツなどでも採用され始めたが、なぜ、日本では「ドライブスルー検査方式」が採用されないのか。韓国発だからなのか、あるいは感染者数をでき得る限り低く見せたいためなのか。いずれにしても日本の新型コロナウイルス感染防止策は、世界の潮流と逆行しているのは間違いない。

 孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。