自民党女性局が「幸せのカタチ:私たちの憲法」という小冊子を発行しました。
「改憲」に向けて党を挙げて取り組んでいることが分かります。当然自民党が目指している改憲の4項目について、言葉を和らげて触れています。
しかし憲法学者の小林節名誉教授は「全てが嘘くさい」としています。
そして、自衛隊の明記や大災害時の緊急事態条項の創設は不要で、教育の充実などは法律を制定すれば済む話であるとしています。
如何に巧言を尽くそうとも、憲法の本質に触れずそこから逸脱したものであれば話になりません。
「ここがおかしい 小林節が斬る!」を紹介します。
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ここがおかしい 小林節が斬る!
意味不明な自民党女性局「改憲」啓蒙冊子
日刊ゲンダイ 2020 年3月 08 日
自民党女性局が「幸せのカタチ:私たちの憲法」という小冊子を発行した。党是の「改憲」原案の国会発議に向けた環境を整える活動の一環である。
まず、「憲法は国の政治の仕組みを定め、ひとりひとりの幸せのカタチを守る基本的なルール」で「幸せのカタチは時代によって変わっていく」として、「過去70年で人々の生活は変わったのに日本は1回も改憲していない」と問題提起(?)をしている。
その上で、他国の憲法に話題を移し、イタリアでは「歴史的遺産の保護」が、リトアニアでは「親を尊敬する義務」が、さらに、アイルランドでは「同性婚を認めること」が憲法に明記されているなどが紹介されている。
そして、自民党の思いとして、現憲法の「国民主権」と「基本的人権の尊重」と「平和主義」は変えない、としている。その上で、自民党は、①自衛隊の立場を明確にして自衛隊を働きやすくする ②大災害の時に国が素早く対応できるようにする ③各都道府県から最低1人の国会議員を出す④子供が望む教育を受けられるようにする……ために改憲したい、としている。
しかし、全てが嘘くさい。
まず、大前提としての「憲法は国民の幸せを守るために『権力者が守るべき最高法』である」という重要な点が語られていない。
また、それぞれに歴史的背景の違う他国憲法の特にユニークな規定を今、日本で紹介しても何ほどの意味もないのではなかろうか。
また、「国民主権」を守ると言いながら政治を私物化している「権力者主権」状態の政党が、選挙演説に対するヤジを警官を使って排除しながら「人権尊重」を約束し、海外派兵(戦争)の手続きを立法しておきながら「平和主義」を語っても、それは明らかに説得力に欠ける。
さらに、自衛隊の立場は既に自衛隊法などに明記されている。大災害には災害対策基本法などで既に十分に対応できる。各都道府県の代表1人以上を国会に送ると言って「一人一票」の原則を否定するのは本末転倒である。教育の充実は法律と予算を整備すれば済む話である。だから、全て、改憲の必要はない。
小林節 慶応大名誉教授
1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院のロ客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著)