31日朝のNHKニュースは、政府が人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)の増産を呼びかけていて、新たに設備投資をする際には補助金を出す方向で検討していると伝えました。何故いまだに「検討している」なのでしょうか。
その際、医療機器大手・テルモが今月中旬から「ECMO」の増産を始めたことが報じられました。それは中国で新型コロナウイルスの感染が拡大した今年はじめから同社が部品を多めに調達するなど「自発的に」増産の準備を進めていたために可能になったもので、別に政府が働きかけたものではありませんでした。
米国では早くからトランプがゼネラル・モーターズ(GM)に人工呼吸器の製造を打診していたことが伝えられ、この27日に「国防生産法」に基づく生産命令を出しました。イギリスのボリス・ジョンソン首相は、15日にダイソンに人工呼吸器の製造を電話で打診し、同社は10日間で大量生産が可能な新たな人工呼吸器を開発に成功したということです。
日本で国内初の感染者が確認されたのは1月16日で、欧米諸国よりもずっと早かったのですが、当時は習近平主席の訪日が最大の国家行事という位置づけのもとで、秘匿こそはしなかったもののコロナ禍は全く問題外という扱いで、逆に春節における中国からの大量のインバウンドに期待していて、水際対策は放置していたのでした。
1月31日の参院予算委で野党議員から人工呼吸器とECMOがどれくらい使用できる状況なのかを質問しましたが、そのとき加藤厚労相は「実態がどのぐらい稼働しているのか、ちょっとその辺を含めて情報収集はしたい」との回答でした。2月18日の衆院予算委で聞かれたときには「国内の全数は8988台で約4割ぐらいが稼働している」という答弁で、それが3月14日の首相会見では「人工呼吸器は現時点で3000個を確保」と、一挙に減少していたのでした。
要するにコロナ禍が日本に流入してから2ヶ月半になるのに、政府はECMOはおろか人工呼吸器の増産に全く取り組もうとしなかったのでした。
緊急会見と称し巧言令色とでも呼ぶべき空虚な文章を読み上げるだけの首相会見は3回に及びましたが、その実は 無為無策のままで推移していたのでした。
LITERAの記事を紹介します。
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「人工呼吸器不足」は安倍政権の責任だ! 1月から野党が指摘していたのに放置、3月29日になっても「増産を調整している段階」
LITERA 2020.03.30
20日に過去最多となる202人の感染が確認された上、経過が心配されていた志村けん氏が死去したと報道され、一気に危機感が高まっている新型コロナ問題。そんななか、世界で懸念されているのが、人工呼吸器不足だ。
感染者の数が世界一位となったアメリカでは、米食品医薬品局(FDA)が22日に人工呼吸器製造認可にかんする規制を緩和し、トランプ大統領も27日に「国防生産法」に基づいてゼネラル・モーターズ(GM)に人工呼吸器の生産を命令。イギリスもボリス・ジョンソン首相が15日に家庭用掃除機で有名なダイソンに人工呼吸器の製造を電話で打診、ダイソンは10日間で大量生産が可能な新たな人工呼吸器を開発に成功したという。
このように国が主導して人工呼吸器の増産を進めている一方、日本の閣僚からは信じられないような言葉が飛び出したのだ。
西村康稔・経済再生相は昨日29日にフジテレビの『日曜報道 THE PRIME』に出演、人工呼吸器について「増産できるのかどうか、いま調整をしている」と発言。さらにその後、国立国際医療研究センターを視察した際も、「経済産業省で人工呼吸器を3000台確保しているが、万が一の事態に備えて増産ができないかと調整している」と記者団に語ったのだ。
ようするに、日本はいまだに人工呼吸器の増産を「調整している」段階だというのである。
あらためて指摘するまでもなく、日本で国内初の感染者が確認されたのは1月16日で、アメリカやイギリスなどの欧米諸国よりも早く感染拡大の懸念が示されてきた。さらに中国・武漢の状況から重症者は人工呼吸器の装着が必要になることは早い段階からわかっていた。なのに、国内初の感染者が出てから2カ月半も経っているというのに、人工呼吸器の増産体制がまだ取れていないとは……。
だが、これはある意味、当然の結果といえる。というのも、安倍政権に人工呼吸器不足への危機感がまるで感じられなかったからだ。
実際、1月31日の参院予算委員会では、日本維新の会の柳ヶ瀬裕文参院議員が人工呼吸器と人工心肺(ECMO)がどれくらい使用できる状況なのかを質問したが、そのとき加藤勝信厚労相は「日本全体でどのぐらいあるのか、あと実態どのぐらい稼働しているのか、ちょっとその辺を含めて情報収集はしたい」と実数すら把握していないことを露呈。さらに、2月18日の衆院予算委員会では、立憲民主党の川内博史衆院議員から「新型コロナで対応できる人工呼吸器は全国で何台くらい使用可能なのか」と問われた際は、「8988台。そのうち約4割ぐらいが使っている状態」と答弁した。
つまり、この2月18日の時点ですでに、増産しなければ全国で5000台しか人工呼吸器が使えない状態にあると加藤厚労相自身が認めていたのである。
ところが、3月14日におこなわれた安倍首相の会見では、安倍首相自ら「人工呼吸器は現時点で3000個を確保」と発言。まるで十全の態勢が取れているかのような口ぶりだったが、加藤厚労相が答えた5000台よりもいつのまにか2000台減っていたのだ。しかもこのとき、安倍首相は「予算措置を講じ、さらなる整備に取り組んでまいります」と述べたが、この発言から2週間を経ても、「増産できるか調整中」の状態で、いつまでに何台確保する予定なのか、その具体的な日程・数字さえあきらかにされていないのである。
1月末から指摘されていた問題を、目に見えて感染が拡大している状況に陥るまでほったらかしにしつづける……。1月時点から安倍政権の対応は後手後手だと言われていたが、反省するでもなく、その体質はいまも何も変わっていないのだ。
こうした問題は、人工呼吸器にかぎった話ではない。その最たる例が、マスク不足だ。
マスク不足でも嘘、2月の段階で菅官房長官は「来週以降に品薄解消」と言っていた
27日の定例記者会見で菅義偉官房長官はマスクについて、現在の月6億枚から4月には1億枚程度を上積みできる見通しであることを公表したが、医療機関や介護施設などに優先的に提供していることを踏まえ、店頭での品薄解消には「一定程度の時間を要する」とした。
だが、思い出してほしい。菅官房長官は2月12日の定例記者会見では、「1月28日に増産を強く要請し、24時間生産などの態勢強化で現在1億枚以上を供給できる見通しができた」と発言。「来週以降」にはマスクの品薄が解消されると述べていたのだ。
さらに経済産業省も同日、公式Twitterアカウントで、こう発信していた。
〈マスクを慌てて買い置きしなくても大丈夫です。厚労省や企業の皆様と連携し、毎週1億枚以上、お届けできるようになりました。〉
〈マスクは買い占めなくても大丈夫〉
〈毎週1億枚以上のマスクを消費者のみなさまにお届けします〉
ご存じのとおり、その後、店頭のマスク不足はまったく解消されず、手に入りづらい状況がつづいている。なのに安倍政権は「来週には品薄を解消できる」「毎週1億枚以上のマスクを消費者のみなさまにお届け」などとデタラメな情報を喧伝していたのである。
しかも、デタラメな情報を垂れ流しておきながら、安倍政権はマスク不足を訴える報道に圧力までかけた。医療機関のマスク不足を指摘した『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に対し、厚労省の公式Twitterアカウントは3月5日、〈厚生労働省では、感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行ったほか、都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています〉と反論。しかし、『モーニングショー』は翌6日の放送で、医療用マスクが届いていない、今後支給するという通知もない指定医療機関があることを取材によってあきらかにしたのだ。これに厚労省担当者も「『マスクの優先供給を行った』については言いすぎた表現。『行っている』『開始した』が正しい」と訂正せざるを得なくなった。
国民には「マスクを消費者のみなさまにお届け」などとアピールし、医療機関への優先配布を訴える報道にはウソの情報で反論する……。これだけでも安倍政権の対応がいかにいい加減で、しかもいい加減なくせにそれをツッコまれると報道を封じ込めようとするという強権性がよくわかるが、こんな醜態ばかりを晒しておきながら、いまもマスク問題で安倍政権は信じられないような対応を取りつづけている。
メディアと国民は人工呼吸器もマスクも用意できない安倍政権の責任を問うべきだ
それは28日におこなわれた会見で安倍首相がぶち上げた、全国の小中学校の生徒と教職員も含めて1100万枚の布製のマスクを4月中に配布する、という話だ。政府は学校再開の方針を打ち出し、「マスクの使用」を学校現場に押し付けたことから批判が出ていたが、それを受けてか、安倍首相は布製マスクの配布を打ち出し、こう胸を張ったのだ。
「ご存じのように、この布製のマスクは洗剤で洗えばもう一度使っていくことができます。ですから、使い捨てではなくて、この1回のマスクを何回も使えることができるということでありますので、急激に拡大している需要に対応する鍵となると考えています」
布製マスクについては、織り目が荒いために飛沫を防ぐ効果が小さい、繰り返す洗う際の管理によって不衛生になる可能性があると指摘する専門家もいる(朝日新聞デジタル30日付)。「需要に対応する鍵」にはなるかもしれないが、感染拡大のなかで学校を再開させることの言い訳にはまったくならないのだ。なのに「1人1枚、布製マスクを配ります!」と得意気に語るとは……。
だが、問題なのは、安倍政権がいかに新型コロナ対応で後手後手に回り、人工呼吸器不足をはじめ国民の命を左右する問題にまで発展しつつあるのに、政権への批判があまり起こっていないことだ。
実際、人工呼吸器不足についても、テレビのワイドショーなどでは「人工呼吸器が足りないのは世界も同じ」などとし、人工呼吸器不足に対応してこなかった政府の不作為を問いただすこともなく、さらには「人工呼吸器やECMOが足りたとしても、それを使用できる医療従事者がそもそも少ない」などと問題のすり替えをはじめている始末だ。
トランプ大統領も国民から「後手後手の対応だ」と批判を受けて次々に経済・生活補償策を打ち出し、ジョンソン首相は当初掲げた「集団免疫による収束」という方針に批判が殺到したことで方針転換し、PCR検査の拡充や抗体検査キットによる在宅検査などを進めるようになった。つまり、国民からの批判が起こらなければ姿勢を正すこともできないのだ。にもかかわらず、日本は他国とくらべてあらゆる対応が後手後手で杜撰極まりないというのに、テレビをつけてもそうした声はほとんど聞こえてこず、自助努力ばかりが叫ばれている。東日本大震災時はあれだけ政権批判が巻き起こっていたのに、である。
これこそが安倍政権のあいだにおこなわれたメディアへの圧力強化の成果なのだろうが、しかし、新型コロナ対応は国民の命に直結する重大問題だ。そんな場面で政権の方針を修正させるために重要な批判が抑え込まれている現実……。いま、もっとも恐るべき事態を迎えていると言うほかないだろう。(編集部)