2020年3月23日月曜日

コロナ「オーバーシュート」懸念も…専門家会議の無策無力(日刊ゲンダイ)

 19日に開かれた新型コロナ対策専門家会議では、「今後、感染源が分からない患者が継続的に増加すれば、どこか感染爆発(オーバーシュート)が起きかねない」とする見解をまとめました。欧米における急激な感染拡大が日本で起きても不思議はないということです。
 それなのに具体的対策としては「市民の行動変容」という聞きなれない言葉で、集会の自粛など現政権が採っている施策を追認するだけで、PCR検査の拡充には触れず、軽症者の自宅待機を変更するという提言もありませんでした。
 因みにPCR検査についての言及は僅かに11行(報告書は全18頁)で、その内容は
医師が感染を疑う患者にはPCR検査が実施されることになってい
検査の必要性がある濃厚接触者にも実施され
・このように適切な対象者を検査することで診断・治療を行っているほか、濃厚接触者の検査により感染の連鎖をとめ、感染拡大を防止してい
というものです。ここでも現状を追認しているだけで、医師からの要求を相談センターで100分の1(以下)に絞っている実態を変えようという意思表示はありません。
 新型コロナ感染症では、軽症であっても感染力は旺盛なのだから、家庭内に留めておけば家族への感染は防止できないしそこが新たな感染源になります。そうした根本問題を放置したまま、感染爆発がないように「祈る」ということでは「オーバーシュート」は防止できません。
 日刊ゲンダイが、「コロナオーバーシュート懸念も…専門家会議の無策無力」とする記事を出しました。
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コロナ「オーバーシュート」懸念も…専門家会議の無策無力
日刊ゲンダイ 2020/03/21
 クラスターの次は「オーバーシュート」――。新型コロナウイルス対策で、また新たな言葉が飛び出した。
 19日に開かれた政府の新型コロナ対策の専門家会議が「今後、感染源が分からない患者が継続的に増加し全国に拡大すれば、どこかの地域を発端として爆発的な感染拡大(オーバーシュート)を伴う大規模流行につながりかねない」という提言をまとめた。
 国内の感染状況は「持ちこたえている」としながらも、感染源が分からないケースや、クラスター(感染集団)へのリンク(感染源)が追えないケースが都市部で増えているという。もしオーバーシュートが起きると、数週間にわたって都市を閉鎖したりする「ロックダウン」と呼ばれる強硬な措置を取らざるを得なくなるという。
 専門家会議の提言を受け、安倍首相は20日の新型コロナ対策本部の会合で、全国規模のイベントについては、引き続き慎重な対応を続けるよう要請。一方で、全国の一斉休校は新学期から段階的に解除する方針だ。学校再開のガイドラインを取りまとめるよう文科省に指示した。
「結局、オーバーシュートという新たな概念を持ち出して『気がついたときには制御できなくなってしまう』などと不安をあおっただけで、何の具体策も示されていない。イベントは自粛、学校は再開という対応もチグハグで、国民は混乱します。『瀬戸際』と位置づけた1、2週間が過ぎ、さらに10日経っても具体的な対策を打ち出せず、オーバーシュートを恐れているだけでは、何のための専門家会議なのでしょうか」(山野美容芸術短大客員教授の中原英臣氏=感染症学) 

東京でオーバーシュートが起きたら…
 オーバーシュートは大都市圏で最初に起こる可能性が高い。大阪府は3連休初日のきのうから、大阪府と兵庫県の往来自粛を要請。きょうから順次再開予定だった府主催のイベントなどについて、自粛期間を4月3日まで延期することを決めた。
 もっとも、専門家会議は「大阪と兵庫の往来を止めて、どのくらいの効果があるのかといった評価もしていないし、議論もしていない」という。
 吉村大阪府知事の説明によれば、往来自粛は厚労省からの提案だ。「最悪の場合、3月20日からの27日までの間で大阪と兵庫で新たに586人が感染。さらに28日から4月3日までの間に3374人が感染し、累計で266人が重症になる」という試算が同省から示されたのである。

 人口が集中する東京でオーバーシュートが起きれば、3374人を上回る規模になるのは確実だが、往来自粛などの要請はない。
「厚労省は当然、東京都の試算も出しているでしょう。都は五輪への影響を考えて公表していないのだと思います。厚労省が専門家会議を信用していないから、独自の試算を出して警告したということでしょうが、これでは指揮系統が2つあるようなもの。情報の一元化が行われないと、感染症対策に失敗してしまいます」(中原英臣氏)
 東京でオーバーシュートが起こるのは時間の問題かもしれない。