広島県内初の新型コロナウイルス感染者と確認された広島市の男性は、2月上旬に症状が出てから計四つの医療機関にかかり、8回も受診を重ね、ウイルス検査を初めて受けたのは最初の受診から20日近くもたってからでした。理解に苦しむ話ですが必ずしも珍しいケースではないようです。
中國新聞が8日の社説で取り上げました。
山梨県のケースでは、20代の会社員男性が先月27日に38・5℃の発熱があったため、翌日と今月2日にそれぞれ別の医療機関を受診しましたが、PCR検査は行われませんでした。男性が29日から仕事を休み、連絡が取れなかったため6日に家族と警察が男性の自宅を訪ねたところ、部屋の中で倒れていました。男性は山梨大学医学部付属病院に搬送され、県のウイルス検査では陰性でしたが、病院の2度の検査ではいずれも陽性が確認されました。男性は髄膜炎を発症していて、「髄膜炎の原因が新型コロナウイルスである可能性が極めて高い」ということです。
広島県の患者と同様に迅速にPCR検査が行われなかったのがこの事態を招きました。
検査しないで放置されれば、無用な感染の拡大につながる可能性は大きい筈です。
秋田市のケースでは、新型コロナウイルスの感染が確認された60代の男性は、陽性判定後の2回の検査で「陰性」と確認された後に、再び陽性と診断されました。
1月に感染が判明した大阪市のガイドの女性も、いったん退院した後に再び陽性と判定されたが、その間の陰性確認は1回のみでした。
現在は「2回の陰性確認」が国の退院基準となっているということです。
中國新聞、東京新聞、NHK山梨の3つの記事を紹介します。
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医療機関なぜ転々と 広島初の新型コロナ感染、検査に20日近く
中國新聞 2020/3/8
広島県内初の新型コロナウイルス感染症患者と確認された広島市安佐南区の男性は、2月上旬に症状が出てから計四つの医療機関にかかり、8回も受診を重ねていた。ウイルス検査を初めて受けたのは最初の受診から20日近くもたってからだった。なぜ検査は行われなかったのか―。
▽症状軽く渡航歴なし
「(感染者を把握する)一連の対応の流れと違う形で見つかった」。松井一実市長は7日午前の記者会見でこう切り出した。「普通に考えれば、最初に受診した医療機関から(保健所に)連絡があってもいいとは思うが…」。苦言とも取れる発言は、感染が分かるまでの経過が異例だったことを物語る。
ウイルス検査はこれまで全額公費の「行政検査」として各自治体の地方衛生研究所で行われてきた。医療機関から依頼された保健所が必要と判断すれば実施される。行政は感染拡大を防ぐため、感染が疑われる患者がいきなり病院に行かずに、まずは各保健所などに連絡するよう求めてきた。
■連携や経験不足
男性は2月15日、37・0度の発熱で医療機関A(安佐南区)を初めて受診。その際、医師は既に「肺炎疑い」と見立てていた。薬を処方されたが男性は回復せず、22、28日に訪れた医療機関B(中区)で経過観察に。3月3日には医療機関C(安佐南区)がインフルエンザの検査をし、陰性だった。
新型コロナウイルスの検査はなぜ行われなかったのか。医療関係者には、まず初期段階の症状の軽さや、渡航歴がなかったことが影響したとの見方が大勢だ。さらに各医療機関の連携不足や、新型コロナウイルス感染症に対する医師の経験不足も重なった。
関係者によると、男性のCT画像の見立ても見解が分かれるという。ある医師は「結果論だが疑うべき事例だった。しかし、専門家でも軽症者を早期に疑うのは難しい」。
結局、男性が最後に受診した医療機関D(南区)の医師が独自の判断で検査に踏み切り、陽性と確認できた。それでも「念のための検査」との位置付けだったという。
■受診先公表せず
市は「適切な感染防護をしていた」「濃厚接触者はいない」として四つの医療機関名を公表していない。松井市長は「風評被害やプライバシーを考慮した」と説明する。ただ、男性と接触した医療機関Cの医療従事者2人はウイルス検査をしている。
国内では院内感染が広がり、外来が閉鎖された病院も出た。男性が医療機関を転々とすることになった結果、感染が拡大してしまう可能性は否定できない。市幹部は危機感を募らせる。「今回把握できたのは運が良かったとしか言えない。確認できていない感染者は想像以上に多いのかもしれない」
“髄膜炎の原因が新型コロナの可能性”20代男性が重症 山梨
NHK NEWS WEB 2020年3月08日
山梨県は、県内に住む20代の会社員男性が、新型コロナウイルスに感染したことが、新たに確認されたと発表しました。男性は県内の医療機関に入院していて重症だということです。
山梨県の長崎知事は7日夜、会見を開き、南アルプス市と昭和町を主な生活圏にする20代の会社員男性が、新型コロナウイルスに感染したことを明らかにしました。
県によりますと、男性は先月27日に38度5分の発熱があったため、翌日と今月2日にそれぞれ別の医療機関を受診しましたが、その際は新型コロナウイルスの検査は行われなかったということです。
男性は、先月29日から仕事を休んでいて、連絡が取れないことを不審に思った会社の同僚からの連絡で、6日に家族と警察が男性の自宅を訪ねたところ、部屋の中で男性が倒れているのを見つけたということです。
男性はその後、中央市の山梨大学医学部付属病院に搬送され、県のウイルス検査では陰性でしたが、病院の2度の検査ではいずれも陽性が確認されたということです。
男性は意識障害があり重症で、集中治療室で治療を受けているということです。
今のところ感染経路はわかっていませんが、海外への渡航歴はなく、持病は確認されていないということです。
長崎知事は「男性が会話が困難なため、行動履歴を聞くことができておらず、南アルプス市と昭和町を主な生活圏としていると発表した。このエリアに住む人で体調に不安がある場合は保健所に相談してほしい」と呼びかけています。
髄膜炎の原因が新型ウイルスか
新型コロナウイルスの感染が確認された20代の男性の症状について、入院先の山梨大学医学部付属病院は男性が髄膜炎を発症していることを明らかにしたうえで、「髄膜炎の原因が新型コロナウイルスである可能性が極めて高い」と説明しています。
山梨大学医学部付属病院は7日夜、会見を行い、島田眞路学長は、男性の症状について発熱や肺炎だけでなく髄膜炎を発症し、意識障害があることを明らかにしました。
このため、病院で髄液を検査したところ新型コロナウイルスの陽性反応が出たとして、島田学長は「髄膜炎の原因が新型コロナウイルスである可能性が極めて高いと考えている。新型コロナウイルスで髄膜炎を発症することは極めてまれで大変重要な症例だ」と説明しました。
コロナ2回陰性後陽性、全国初か 秋田の60代男性
東京新聞 2020年3月7日
秋田県は7日、新型コロナウイルスの感染を確認した秋田市の60代男性について、陽性判定後の2回の検査で「陰性」と確認された後に、再び陽性と診断されたことを明らかにした。県によると、全国初のケースとみられる。
1月に感染が判明した大阪市のガイドの女性も、いったん退院した後に再び陽性と判定されたが、その間の陰性確認は1回のみだった。現在は「2回の陰性確認」が国の退院基準となっている。
諸冨伸夫県健康福祉部長は「基準の妥当性は、今後国が検討するだろう」と話した。 (共同)