2020年3月7日土曜日

PCR検査に保険適用 保健所を通さず検査可能に・・・とはいえ

 極めて貧弱な検査体制の中でも、新型コロナウィルスの新たな感染者が各地から続々と公表されています。
 6日現在、新型コロナウイルス禍では、日本の感染者の公表数はまだそれほど高くないのに、24カ国・地域が日本からの入国・入域制限を行い、58カ国・地域が日本からの入国後に観察措置などの行動制限を実施しています。検査数の圧倒的な低さに海外から疑念が集まっているからではないでしょうか。
 実際PCR検査の実績は驚くばかりの低さで、5日現在の総数が僅かに9710件(含クルーズ船)と韓国の1日分(1万5千件/日・延べ14万件)にも及びません。

 山井和則衆院議員ら4議員が47都道府県に照会した結果は「帰国者・接触者相談センターへの相談件数102184に対し帰国者・接触者外来」を受診した件数2771件(但し回答のあった35都道府県中)であったことから、相談者のうち「帰国者・接触者外来にたどりついた比率を27%しかないと推論しまし(京都新聞6日)

帰国者・接触者外来」にたどりつければPCR検査が受けられるというわけではありません。そこの医師が再びふるい分けをして、検査が必要と認めると初めて保健所に連絡するのですが、その保健所でも「検査対象に該当しない」として弾かれるケースが多発したのでした。その理由は明らかで検査を国立感染症研配下の機関に限っているからです。

 加藤厚労相は6日、PCR検査に6日から公的保険が適用され、保健所を通さずに検査を受けられるようになるとして検査体制が拡充されることに期待を示しました(NHK)。
 厚労相が「期待を示す」とは一体何ごとかと思ってしまいますが、そのことで検査が大幅に拡大するわけではありません。事実、ニュースに登場した東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「すぐに検査体制を2倍・3倍に増やせないのでまずは医師の判断をもとに、必要な患者の検査を実施し・・・」と述べていますそもそも検査規模を10倍、20倍以上にする必要があるのであって、2倍や3倍では話になりません。
 要するに変わった点は「保険が適用」になったことと「帰国者・接触者外来」の医師が必要と認めれば「保健所を通さずに検査をできる」ようになるだけで、通過率2・7%の「相談センター」は厳然として存在しているし、多分「帰国者・接触者外来」でも厳しくふるい分けられることでしょう。
「375℃以上が4日間続き 云々」や「渡航歴があり 云々」と謳う非人道的と思われる「基本政策」も全て生きたままです。

 うまいことを言ってその場はしのぐものの、実態は何も変わらないというのがこれまでの安倍内閣の仕打ちでした。そもそも政府はいまだに隔離施設の増設には興味すら示していません。検査を拡大する意思自体が疑われます。

 植草一秀氏のブログ:「PCR検査拡大というやるやる詐欺を紹介します。
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PCR検査拡大という「やるやる詐欺」
植草一秀の「知られざる真実」 2020年3月 6日
安倍内閣の迷走に拍車がかかってきた。
安倍内閣は中国、韓国からの入国規制を発表した。背景に中国の習近平国家主席の来日延期決定がある。安倍内閣の行動には論理整合性がない。ちぐはぐ、支離滅裂である。

当初、安倍内閣は何もしなかった。中国のコロナウイルス感染拡大が伝えられても何もしなかった。ところが、ダイヤモンドプリンセスの乗客に感染者が存在したことが公表されると「水際対策」を打ち出した。
このクルーズ船の入港を拒否すればよかったとの主張があるが失当である。
クルーズ船の帰港を拒絶する正当な事由が存在しない。そもそもこの船は横浜港から出港しているのだ。そのダイヤモンドプリンセスは2月1日に沖縄・那覇港に寄港している。
この段階で日本入国のための検疫と入国手続きが完了している。ダイヤモンドプリンセスの航路にもよるが、那覇港寄港後は内国船扱いだったのではないか。
香港で下船した乗客の感染が明らかにされ、政府は実施済みの検疫を取り消して再度の検疫を行ったのである。

乗員・乗客3711人を船内に長期間監禁する措置が取られ、この結果、船内での爆発的感染拡大が発生し、現時点までに6人の死者が生じた。
当初のPCR検査を3711人の乗員・乗客のなかの273人にしか実施しなかったことが惨事を拡大させた。

安倍内閣は「水際対策」を示しながら、中国からの入国を湖北省、浙江省以外制限しなかった。春節の休暇で多数の中国人が訪日したが、その際にコロナウイルスが国内に持ち込まれた疑いは極めて高い。その他、韓国、イタリア、イランからの入国も制限しなかった。
まさに「ざる」の水際対策が続いてきたのだ。

中国の習近平国家主席の来日が4月に予定されていた。ところが、習近平主席の来日が延期になった。この発表後に中国、韓国からの入国規制が決定された。
今さら入国規制しても効果は限定的だ。
「専門家会議」が「これから1、2週間が感染拡大か収束かの瀬戸際」と発表したのが2月24日。3月9日でその1、2週間が終わる。
この「瀬戸際」の2週間の最後になって入国規制を強化するという決定なのだ。
安倍内閣は「瀬戸際」を叫びながら、3月1日の東京マラソン開催を容認した。このイベントで7万人の濃厚接触が創出された。
「瀬戸際」だからと全国の小中高の一斉休校、各種イベントの自粛を要請する一方での東京マラソン開催容認は論理的整合性を欠く。これを支離滅裂という。

安倍首相は2月29日の記者会見で「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします。」と述べた。これは「やるやる詐欺」だ。

3月6日からPCR検査が保険適用になったが、PCR検査を発注できるのは、どこにあるのかが分からない844の「帰国者・接触者外来」だけ。
2月1日から3月1日までの1ヵ月間に、この「帰国者・接触者外来」での診断を認められた患者は、1機関当たり、たったの2.6人だ。1ヵ月間で2.6人しか診断を認められていない。
そして、「帰国者・接触者外来」は「入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査」(2月25日「基本方針」)https://bit.ly/39aZSWU を基準にPCR検査を行っている。
歯科を除く医療施設は2019年末時点で11万934。このなかの844の医療機関でしかPCR検査を発注させない。しかも、診断を許可されるのは「帰国者・接触者相談センター」に相談して同センターが「帰国者・接触者外来」での受診を認めた者だけだ。

安倍内閣がPCR検査抑制に全力を挙げて取り組んでいることがよく分かる。
目的は公表される感染者数の抑制。感染を阻止するのでなく、感染の確認を阻止している。これに勝る矛盾はない。
(以下は有料ブログのため非公開)