2020年3月13日金曜日

13- 台湾政府の真摯さを見よ 政府への信頼を失った日本(高野 孟氏)

 台湾政府は12月30日、武漢市から「原因不明の肺炎を発見」の報に接すると12月31日に専門家会議を開き「注意喚起」を発しさらに1月16には、独自の判断「法定伝染病」指定しました。そしてコロナ対策費として2200億円、日本の人口に換算すると1兆2000億円分を投じました。
 その結果、台湾での感染者は3月6日時点で僅かに44人に抑えられています
 こうした取り組みが国内で評価され、蔡英文総統の支持率は68・5%(2月下旬)上昇し、防疫対策については75・3%が「80点以上」と評価しています(朝日新聞)
 日本各地で感染が広がり、対応に追われる政府への不満が高まる日本とは対照的です。

 ジャーナリストの高野孟氏が、12日付の日刊ゲンダイ「永田町の裏を読む」に 台湾での見事な対応を載せました。
 年末から始動した台湾政権の奮闘は、美食と宴会三昧で過ごしていた安倍首相とは対照的で感動的です。
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永田町の裏を読む
感染症に立ち向かう時に重要な政府への信頼を失った日本 
高野  日刊ゲンダイ 2020/03/12
 米外交問題評議会のシニアフェローで世界的な健康対策の専門家のヤンゾン・ファン教授が、感染症の大流行に立ち向かっていく場合にいちばん大事なのは「政府への信頼」だと言っている。「公衆衛生は信頼を基盤にしている。政治への信頼は社会資本であり、これが効果的な公衆衛生上の対策をとる上で極めて重要になる」と(フォーリン・アフェアーズ・リポート3月号)。

 この観点からして、近隣で最も見事な対応を見せたのは台湾の蔡英文政権である。初動でもたついた中国で、12月30日にようやく武漢市当局が「原因不明の肺炎を発見」と公式発表するや、台湾は何とその翌日の31日に衛生福利部(厚労省に当たる)が専門家会議を開いて、最初の「注意喚起」を発した。
 さらに1月16日、まだ中国もWHOも、従って日本も「ヒトからヒトへの感染はない」と言っていた段階で、台湾はそれをあり得るとする独自の判断から「法定伝染病」指定を発し、警戒レベルをシフトアップした。これは北京より4日早く、日本より12日早い。
 このスピード感とともに印象的なのは、政府トップが先頭に立って戦う姿である。2月3日に武漢から台湾人247人を乗せたチャーター便が着くと、ターミナルではなく格納庫に誘導して完璧な準備で接受し、14日間1人1室の検疫・観察態勢下に置いた。その格納庫で24時間徹夜で陣頭指揮に当たったのは衛生福利部長(厚労相に当たる)の陳時中で、彼は2月4日、全員をしかるべき場所に送り出した後に記者会見し、政府のとった措置を事細かに説明して、その中で早くも感染者1人が見つかったことを報告。「残念なことだが、逆にこれで彼の命を救えると思えば……」と言ったところで肩を震わせ、言葉が出なくなってしまった。国民の方を向き、命懸けで使命を果たそうとする政治家の姿として美しかった。

 こうして危機を通じて国民の「政府への信頼」はむしろ深まっていく。翻って日本はどうか。
 そもそも安倍政権はこの7年間、嘘つき、言い逃れ、はぐらかし、証拠隠しといったことを繰り返し、最近に至ってはカジノ汚職やお花見や検察人事などが折り重なり、通常国会が始まって間もなく1カ月が経つのに、我々は首相がつまりながら嘘の弁解をしている様子しか見たことがない。すでに「政府への信頼」という社会資本を失っている安倍が「緊急事態宣言」などを叫んでも、誰も本気にしてくれないことに、本人だけが気付いていない悲劇である。

  高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。