西村経済再生担当相は23日、テレビ東京の番組で、コロナ感染症拡大に伴う緊急経済対策の柱として、国民への現金給付は「早くても5月末になる」と述べました。
これから2ヶ月以上も先になるということでは緊急対策でも何でもありません。古来「役所仕事」といえば「遅い・間拍子に合わない」の代名詞でしたが、こんな時にもそうであれば話になりません。政治家なのですから知恵を出すべきです。
西村氏は、「当面の生活資金が苦しい家庭には、既に決定している個人向けの小口資金貸し付け特例を活用してほしい」と述べましたが、そんな申込みが出来る家庭や個人がどれほどいると考えているのでしょうか、
また麻生財務相は24日の閣議後の記者会見で、「全国民に配るのではなく、対象を線引きする必要がある」との認識を示すとともに、「一律の現金給付でやった場合、貯金に回らない保証はあるのか」として「商品券」の有効性に言及しました。しかし商品券ならその分自動的に消費が増えるという見方は単純に過ぎて間違っています(現に欧米では手厚い現金給付を打ち出しています)。
植草一秀氏は「商品券を受け取っても、現金で買う部分を商品券に変えて消費するなら、使わなくなった現金が貯蓄に回るから同じなのだ。商品券にすれば余計な経費がかかる。この余計な経費こそ、癒着企業や天下り機関、政治屋が狙うポイントだ。間に入る政治屋は政治献金で利益を得ようとする」とその真相を指摘しています。その通りなのでしょう。
まことに転んでもただでは起きない政治家や官僚の醜さです。
植草一秀氏が、23日と24日に「安倍内閣あいまい優柔不断支離滅裂コロナ対応」と「コロナ経済対策三要件は迅速・簡素・直接だ」とするブログを出しました。
以下に紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
安倍内閣あいまい優柔不断支離滅裂コロナ対応
植草一秀の「知られざる真実」 2020年3月23日
「これから1、2週間が、感染が急速に進むか収束できるかの瀬戸際」と宣言されたのが2月24日のこと。この2週間は3月9日に終わった。その時点から、さらに2週間の時間が流れた。全国一斉の学校休校が要請されて実施されたが、その効果の判定もなく、一斉休校は取り下げられた。
3月19日に専門家会議が開かれたが、専門家会議が提示した方針は不明確なものになった。「瀬戸際」とはなんだったのか。「瀬戸際」を通過して、どちらに移行したのか。
専門家会議は、国内は持ちこたえているとしながら、欧州のように患者が爆発的に急増する「オーバーシュート」が起きかねないとの懸念も示した。
大規模イベントについては主催者に慎重な対応を求めつつ、どうしても必要と判断する場合は、密閉空間の回避など十分な予防対策などを講じた上で実施すべきだとした。
何も言っていないに等しい。
学校は、感染が確認されていない地域では再開も可能とする一方、感染拡大地域では、「一定期間の休校も選択肢」とした。「瀬戸際の1、2週間」がどのような結果になったについての説明もない。
3月22日にはキックボクシング団体「K-1」の大規模なイベントが当初の予定どおりさいたま市で開かれた。また、3月1日には東京マラソンが、3月8日には滋賀県、愛知県でマラソン競技が実施された。東京マラソンでは7万人の市民が濃厚接触する状況が生み出された。
オリンピック組織委員会は「復興の火」展示などを強行しているが、これらのイベント開催によって多数の市民の濃厚接触状態が生み出されている。
感染を防止しようとしているのか、感染を促進しようとしているのか判別がつかない。
安倍首相は2月29日の記者会見で、「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします」と述べたが、PCR検査は拡充されていない。
安倍内閣は「もちこたえている」と主張するが、広範な検査を実施していないのだから、「もちこたえている」のか、「もちこたえていない」のかの判定もできない。
「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる」と表現しながら、検査の窓口を固く閉ざしたままだ。
日本に存在する医療機関は11万を超えている。しかし、安倍内閣は全国に850しかない「帰国者・接触者外来」にしかPCR検査実施の権限を与えていない。「帰国者・接触者外来」で診断を受けることができるのは、「帰国者・接触者相談センター」が許可した者に限られている。
国内でのPCR検査実施累計人数は3月5日時点で約6000人。3月21日時点で約18000人である。3月5日から3月21日までの期間の1日当たり検査人数は700人程度でしかない。
安倍首相の発言をよく見ると、「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる」「ようにいたします」とは言っていない。「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる」「十分な検査能力を確保いたします」としか言っていない。これは「詐欺師の作法」だ。
「かかりつけ医の判断でPCR検査が行われない」と批判が生じたときに、「検査能力を確保する」とは言ったが「検査を実行する」とは言っていないと反論するのだ。
日本では重症患者と接触者にしか検査を行わない運営が貫かれている。
したがって、確認感染者数と死者との比較から算出される致死率が極めて高くなっている。
日本政府が公表している感染者数は感染者の一部に過ぎないわけで、安倍内閣は国民に対しても、海外に対しても、この点を明確に説明する責任を負っている。
最大の問題は、無症状と軽症の感染者が確認されないために、この人々が感染の爆破的拡大をもたらす可能性が高いこと。
感染抑止を最優先に位置付けるなら、各種イベントの開催を全面的に抑止するべきである。
通勤時の満員電車などの状況を排除する施策を示すべきだ。感染防止を掲げながら、各種マラソン競技、聖火リレー、復興の火展示行事などを強行することに根本的な矛盾がある。
矛盾だらけの支離滅裂対応を続けるなら、結局は重要な目標を何一つ達成できないことになる。安倍内閣のあいまい、支離滅裂、優柔不断な対応が、「二兎を追う者は一兎をも得ず」の結果をもたらす原因になる。
(以下は有料ブログのため非公開)
コロナ経済対策三要件は迅速・簡素・直接だ
植草一秀の「知られざる真実」 2020年3月24日
日本経済は深刻な不況に移行している。景気後退の主因は二つある。消費税大増税とコロナウイルスである。
安倍内閣の場当たり政策によって甚大な被害を受けている主権者が多数に上っている。
だが、今回の不況は日本単独のものでない。世界的な広がりを示している。
国民の生命、財産、生活を守るのが政府の責務である。
国連のグテレス事務総長は3月19日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大について「国連75年の歴史にない地球規模の衛生危機に直面している」「おそらく歴史的な規模となる世界的な景気後退はほぼ確実だ」と警告した。
各国の株価も暴落している。各国の代表的な株価指数下落率は以下の通り。
日本32・2%、米国36・0%、ドイツ40・2%、英国38・0%、ブラジル48・4%、ロシア42・0%。
2008年から2009年にかけてのサブプライム金融危機に匹敵する株価暴落が生じている。感染は拡大の途上にあり、今後、どこまで影響が広がるのかを見通せない状況にある。
米国が短期金利をゼロに引き下げ、2兆ドル規模の経済対策を提示したことで株価はいったん反発する気配を示しているが、今後の展開については予断を許さない。
日本でも生活支援のための経済政策が検討されている。しかし、安倍内閣が提示する施策は基本的に筋が悪い。この期に及んで、政治屋や官僚機構の利権確保が優先されている。
重要なことは国民の目線に立って政策を立案し、早期に決定、実施すること。
経済政策立案に際して重要な三原則を提示する。
それは、「迅速」、「簡素」、「直接」である。
緊急経済対策であるから、「迅速」さが何よりも求められる。迅速に政策を実行するには「簡素」にすることが必要だ。そして、財政支出を国庫から「直接」主権者に手に届くようにする。間に官僚組織、天下り組織を介在させない。
政治屋や官僚機構は、利権を確保するために、財政支出経路を「複雑」にして、財政支出の受け皿に出先機関、役所、天下り機関を置く方式を追求する。これは財政支出を「利権」にするための「ロンダリング」手法だ。
求められる施策は「消費税減税」「現金一律給付」だ。
麻生太郎氏が「現金給付より商品券がいい」と発言した。
理由は、現金は貯蓄に回るが商品券は貯蓄に回らないというのが理由だそうだが、さすがは未曾有をみぞうゆうと読むだけのことはある。踏襲をふしゅう、頻繁をはんざつと読む麻生氏ならではの発言だ。
商品券を受け取っても、現金で買う部分を商品券に変えて消費するなら、使わなくなった現金が貯蓄に回るから同じなのだ。商品券にすれば余計な経費がかかる。この余計な経費こそ、癒着企業や天下り機関、政治屋が狙うポイントだ。間に入る政治屋は政治献金で利益を得ようとする。
利権を排除すれば、経済対策の金額がそのまま主権者に手渡しされることになる。
今回の不況のそもそもの主因は消費税増税だ。消費税を廃止にする、あるいは、消費税を5%に戻すことが、最大の景気支持策になる。
迅速、簡素、直接の三条件を満たす「消費税減税」、「現金一律給付」を直ちに決定して実施するべきだ。
(以下は有料ブログのため非公開)