2020年3月30日月曜日

森友事件で自死 「再調査を」に賛同15万人

 自死された元財務省近畿財務局の赤木俊夫さんの妻昌子さん(仮名)が27日に立ち上げたインターネット署名「なぜ自死に追い込まれたのか、第三者委員会を立ち上げ公正中立な調査を実施して下さい」は、わずか1日半で約15万筆に達したということです。
 ネット署名の組織体である「Change.org」によれば、これだけ短期間にこれだけの数の署名が集まったのは初めてということです。
 ネット署名は下記にアクセスすれば出来ます。
 記事右欄の該当の個所に氏名等の必要事項を記入の上、赤帯の「賛同する」をクリックすることで電子署名が行われます。

 森友事件の報道に深く関与してきた相澤冬樹大阪日日新聞編集局長(元NHK記者)による最新報道を紹介します。

追記)
 「Change.orgは半年前から独自に、「佐川氏の国会での再度の証人喚問への賛同」署名と集めるキャンパーンを行っていますが、半年たっても1万人に達していなかったのが、赤木俊夫さんの手記が公開され、昌子さんの提訴が報じられると賛同者が急増し、10日ほどで9万人を超えたということです
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
赤木効果”で最多最速!森友事件で自死「再調査を」に賛同15万人の衝撃
相澤冬樹 YAHOOニュース 2020/3/29
   大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者)
 森友事件をめぐる公文書改ざんを無理強いされ命を絶った財務省近畿財務局の上席国有財産管理官、赤木俊夫さん(享年54歳)。その手記が初めて公開され、大きな反響を呼んでいるさなか、妻の昌子さん(仮名)が27日午後、インターネット上の賛同者募集サイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)で呼びかけを始めた。
「私の夫、赤木俊夫がなぜ自死に追い込まれたのか。有識者によって構成される第三者委員会を立ち上げ、公正中立な調査を実施して下さい!」
 その呼びかけに賛同者が殺到。開始から2日足らずで15万人を突破した。これにはあまたの賛同者募集を扱っているChange.orgの運営担当者も驚いた。確認を求めたところ、日本で行われたChange.orgのキャンペーン・署名で、これまでで最も多く最も速いことがわかった。
 Change.orgのカントリー・ディレクター(責任者)は取材に対し、異例とも言えるほどの思いのこもったコメントを寄せた。
「赤木氏のご遺族によって開始された本キャンペーンは、開始から1日半ほどで15万名以上の賛同数に達しました。これは、日本国内で開始されたキャンペーンとしては最速で最多の賛同数となります。『森友学園の国有地売却をめぐるやりとり』には様々な要素が絡み合っています。働いている中で、信念に背く業務を無理やりさせられ、気持ちが痛んだり追い詰められたという経験は、多くの人に思い当たるのではないでしょうか。残されたご遺族として、なぜそこまで追い詰められる必要があったのか。お連れ合いの『知りたい』という悲痛な思いが、これだけの賛同を引きつけたと言えるのではないかと思います」
 さらにChange.orgの求めに応じて昌子さんが28日に出したコメントを以下に紹介する。

「安倍首相、麻生大臣にこの声が届くと思います」
 この署名に賛同してくださった方、またスマホやパソコンをお持ちでない方からも沢山の応援の声をいただいています。お礼と感謝を申し上げます。
 夫がもがき苦しんで自死を選ぶことになった真相を知りたいです。
 きっと安倍首相、麻生大臣にこの声が届くと思います。
 今日(28日)は54歳で亡くなった夫の誕生日です。
 最高のプレゼントを皆さんからいただきました。
 本当にありがとうございます。

手記公開と提訴を3月にしたかったわけ
 そう、きのう3月28日は赤木俊夫さんの誕生日。本来ならこの日、57歳になったはずだった。私と同い年、同じ学年だ。
 その日、私は赤木さんの自宅を訪れ、祭壇の写真の前にチョコレートを捧げた。そこにはすでに小さなケーキが供えられていた。
「誕生日はいつもトッちゃん(俊夫さんのこと)の好きな料理を作って二人でお祝いしたんですよ。私の誕生日もすぐ近く(3月22日)だから、二人一緒のお誕生会。自宅で、ケーキも買ってきて。もうできないけど…」
 昌子さんが俊夫さんの手記を公開し、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手に裁判を起こしたのは3月18日。この時期を選んだのは、実は深い理由があった。3月7日が俊夫さんの三回忌、22日が自分の誕生日、そして28日が俊夫さんの誕生日。昌子さんにとって、俊夫さんと二人にとって、大切な日が続く3月に、どうしても手記公開と提訴をしたかったのだ。

共感と賛同のメッセージが赤木昌子さんを支える
 誕生日の思い出でしんみりとした昌子さんだったが、思ったほど沈んではいなかった。皆さんから寄せられる賛同の声が彼女を力づけている。
「私の生まれ故郷は人口2万人なんです。15万人って想像をはるかに超えています」
 この日はTBSの報道特集で赤木俊夫さんのことが取り上げられた。番組が終わった後、昌子さんからLINEが届いた。
「私の勇気に敬意を表すると金平さん(番組キャスターの金平茂紀氏)が言ってくださいました。
がんばるぞ!」

 皆さんの支援の声が、「夫の死の真相を知りたい」という赤木昌子さんを突き動かしている。
 署名の募集は引き続き、以下のサイトで行っている。
      http://chng.it/yBNFhJG97G 

まさに“赤木効果”
 賛同者殺到の余波は別のところにも及んでいる。Change.orgでは去年から、昌子さんとはまったく別の動きとして、佐川氏の国会での再度の証人喚問への賛同者募集が行われていたが、半年たっても1万人に達していなかった。
 ところが赤木俊夫さんの手記が公開され、昌子さんの提訴が報じられると賛同者が急増。10日ほどで9万人を超えた。“赤木効果”としか言いようがない。と昌子さんにお伝えしたところ「皆さんのおかげです」という答えが返ってきた。

完売御礼の週刊文春がフリマで999円
 赤木俊夫さんの手記を最初に全文掲載し、妻の昌子さんの思いも伝えた週刊文春の3月18日発売号(3月26日号)は2年半ぶりに完売御礼となった。すると、ネット上のフリーマーケットに当該号が出品されるようになった。高いものでは999円で取り引きされたのが確認できた。定価は440円である。一般の書籍ならともかく、消費されていく雑誌がフリマで高額取引されるのはかなり珍しい。何とか入手して読みたいという人が多いことの表れだろう。
 実は完売御礼は完全に売り切れたことを意味しない。一部の書店に在庫が残っていても、売れ行きから見て近々完売しそうだという時に出される。とある情報によると、紀伊國屋書店の梅田店(大阪)には28日の時点でまだ80冊ほどの在庫があるという。
 さらに、週刊文春の3月26日発売号では、森友事件の本丸と言える国有地の8億円値引き売却について、当時の売却担当者が「算出に問題がある」「撤去費用が8億になるという確証がない」と述べていたという新事実を紹介している。

相変わらず「調査せず」の安倍首相に”赤木効果”は及ばないか?
 一方の安倍首相。新型コロナウイルスをめぐる28日の会見で、財務省の公文書改ざんについて、赤木昌子さんが望んでいる第三者委員会による再調査をしないのか質問された。すると「大変痛ましい出来事でお悔やみ申し上げる」と述べたが、麻生財務大臣のもとで財務省が調査し、捜査機関も捜査したことを挙げ、質問された再調査については答えなかった。
 故人の手記が公開されても、遺族が望んでも、「新事実はない」と繰り返し、再調査はしないという考えを改めようとしない安倍首相と麻生財務大臣。再調査の実施に15万人の賛同が集まっても、考えを変えないのだろうか?
 世間を揺るがす“赤木効果”も、このお二人には及ばないのだろうか?
 赤木昌子さんは賛同者15万人を知って、代理人弁護士や関係者に感謝のメールを送った。その言葉でこの記事を締めくくりたい。

 署名賛同者の数字にびっくりしています。2年間何もしてあげられなかったけど、やっと遺書、手記を公にするという願いを叶えてあげられて、こんなにたくさんの人が応援してくださり、身体中に血が通って生きてるなあって気持ちがしています。全て皆さまのお陰です

#赤木さんを忘れない
【執筆・相澤冬樹】
相澤冬樹 大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者)
1962年宮崎県生まれ。1987年NHK記者に。山口、神戸、東京、徳島、大阪で勤務。神戸で阪神・淡路大震災を取材。大阪でJR福知山線脱線事故を取材。大阪司法記者クラブ担当の2017年に森友事件に遭遇して取材を進めるが、2018年記者を外されてNHKを退職。この時の経緯を「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋刊)という本にまとめた。現在、大阪日日新聞に務めながらYahoo!ニュースをはじめ日刊ゲンダイや週刊文春など様々な媒体で記事を書いている