国内で新型コロナの感染者が確認されてから既に1カ月半余りになる29日夕、安倍首相は会見と称して35分間演説し、その後、予め質問事項を提出させていた(と思われる)5社からの質問に対していつものようにメモに目を落としながら回答して会見を打ち切りました。
一斉休校に伴い仕事を休まざるを得ない「ひとり親世帯など」にとっては死活問題ですが、首相は「今後10日程度のうちに休業対策を速やかに取りまとめます」と打ち上げただけで、その内容には全く触れませんでした。
それでは政府に代わって、つなぎに何らかの手当をしようと考えている自治体(山梨県や千葉市など)も手の打ちようがありません。そもそも首相の論法に従えば、対策を「取りまとめる」のと、対策を「発表し実施する」のとは別のことなので尚更です。
対策費の過少を指摘された政府が、ここで言い出したのは20年度の予備費2700億円を活用するということでした。人口が日本の4分の1の韓国でさえ1兆4300億円を見ているというのにあまりにも貧弱です。
さらに問題発言がありました。「PCR検査を断られるといったことが断じてないように、広域融通によって検査が各地域で確実に実施できるよう、国において仲介をおこないます」というものです。現在、厚労省管轄の国立感染症研究所の専門家3名が北海道庁に派遣されていますが、彼らは道の職員に「検査し過ぎてはいけない」と思い込ませるような言動を盛んにしていることを考えれば、「仲介」ではなく検査を抑制するために国が「介入」する惧れの方が大きいといえます。
この緊急事態においても全く役に立たない政権は一刻も早く退場すべきです。
LITERAの記事を紹介します。
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安倍首相のコロナ会見はたった35分、やる気ゼロ! 助成金の具体説明なし、対応策は10日後に引き延ばし、自治体も「遅い」と悲鳴
LITERA 2020.02.29
この期に及んでも、この男のやる気、危機感、緊張感はゼロらしい。感染が拡大しつづける新型コロナ対策について、安倍首相がようやく正式な記者会見を開催したが、なんと、その会見時間はわずか35分間。しかも質疑応答はたったの15分で、「まだ質問あります!」と声をあげる記者がいるのに「予定した時間をだいぶ過ぎている」という理由で会見を打ち切ってしまったからだ。
国内で感染者が確認されてからじつに約2カ月半、国内外でそのリーダーシップが疑問視されるなか、遅れに遅れてやっと国民に直接、説明する時間だったというのに、質問にすべて答えようとしない──。しかも、質疑応答で指名されたメディアは、幹事社(朝日新聞、テレビ朝日)とNHK、読売新聞、AP通信の5社だったが、その質問に答える際、安倍首相は視線を下に落とし、手元の紙を読み上げていた。つまり、あらかじめ質問を当てるメディアを選別して質問内容を聞き出し、問答集をつくっていたのだろう。とんだ茶番劇ではないか。
だが、もっと酷かったのは、会見で語られたその中身だ。まず、安倍首相はこう語った。
「『これから1〜2週間が、急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となる』。こうした専門家のみなさんの意見を踏まえれば、いまからの2週間程度、国内の感染拡大を防止するため、あらゆる手を尽くすべきである。そのように判断いたしました」
おい、ちょっと待て。専門家会議が「これから1〜2週間が瀬戸際」と見解を示したのは24日月曜のことで、もはやそこから5日も経ってしまった。もう約1週間も浪費しておいて「いまからの2週間程度あらゆる手を尽くす」って、それ、瀬戸際を過ぎてしまっているではないか。いくらなんでも遅すぎるだろう。
しかし、さらに絶句したのは、休校措置にともなう保護者支援の問題だ。
昨日28日、安倍首相は衆院予算員会で「経済界にも有給休暇を取りやすいように対応するようお願いする」と述べ、「休業補償を国が負担するのではなく、労働者に有休を消化させる気か」とまたも批判を浴びた。だいたい、すべての保護者が有休を取得できるとはかぎらず、とりわけ貧困率が5割を超えるひとり親世帯は死活問題になるとその危険性が叫ばれている。そうしたなか、さすがにきょうの会見では、国として具体的かつ早急な補償策を打ち出すだろう。そう見られていた。
だが、安倍首相が述べたのは、たったこれだけだった。
「保護者のみなさんの休職にともなう所得の減少にも、新しい助成金制度を創設することで、正規・非正規を問わずしっかりと手当てしてまいります」
肝心の「新しい助成金制度」とやらの具体的な内容・説明はまったくなし。保護者がいまもっとも不安に感じている問題だというのに、いつからはじめるのか、どれくらいの補償が受けられるのか、国はどの程度の予算を注ぐのかなどには、一切、言及しなかったのである。
もう後手後手にも程があるだろう。山梨県の長崎幸太郎知事は、昨日、新型コロナに感染したり濃厚接触者として仕事を休んだ県民に対して「1日4000円を助成する」と発表した。自治体がすでに具体的な休業補償を打ち出しているというのに、国がこの体たらくとは……。実際、安倍首相の会見に業を煮やした千葉市の熊谷俊人市長は、会見中にこんなツイートを投稿した。
〈安倍総理、演説もいいのですが、収入保障などについて詳細を早く言って頂きたい。
千葉市は今回の政府方針によって失業や収入が減って生活困窮者に陥る方に、国の収入保障が実際に届くまでの繋ぎ融資を考えていますが、国の保障基準の考え方が示されないと最終案まで詰められません。〉
緊急対応策を口にしたが、具体的な中身は10日後、予算は2700億円で韓国の5分の1
少なくともきょう会見をおこなうと公表してから一晩あったのに、休業補償の詰め作業もしなかった安倍首相のせいで、地方自治体にも混乱が生じているのである。昨晩、安倍首相は百田尚樹と有本香という感染症対策の専門家でもなんでもないネトウヨ論客を公邸に招いて会食していたが、ようするに国民の不安を解消するための補償策の検討よりも、自分の批判に傾いていたお友だちを繋ぎ止めるための会食を選んだのである。
しかし、さらに開いた口が塞がらなかったのは、会見でのこの発言だ。
「2700億円を超える今年度予備費を活用し、第2弾となる緊急対応策を今後10日程度のうちに速やかに取りまとめます」
「2週間が瀬戸際」と言いながら、緊急の対応策の取りまとめに10日かかるって、それのどこが「速やか」なのか。
そのうえ、2020年度の予備費2700億円を活用するというが、第1弾の対策費は153億円に過ぎず、足しても3000億円にも満たない。他方、韓国はすでに約3600億円規模の対策を打ち出していたが、さらに昨日、新型コロナ感染拡大を受け総額16兆ウォン(約1兆4300億円)規模の経済対策を発表しているのだ。
さらに不安なのは、与党の賛成多数によって2020年度予算案が昨日、衆院を通過し、2019年度内の成立が確定したが、この予算案に与党は新型コロナの対策費を1円も計上していない。つまり、3000億円で足りずに追加対策を講じる場合は2020年度の予備費を活用することになるが、その予備費は5000億円。合計しても8000億円で、韓国の対策費の半分程度でしかないのである。
危機感をもって感染拡大防止と国民の生活不安解消のために多額の予算を投入している他国に比べ、いまだに出し渋る安倍首相──。しかも、立憲民主党や国民民主党などの共同会派と日本共産党はこの予算案に反対し、予算案に組み込まれているマイナンバーポイント還元事業の2478億円やカジノ管理委員会の運営費38億円を削除し新型コロナ対策費に振り分ける予算組み替え案を昨日、衆院予算委員会に提出したが、自民党や公明党、日本維新の会などの反対によって否決されてしまったのである。
安倍首相は「未知のウイルスとの戦いは容易なものではない」「国民の健康と安全を守ることを何よりも最優先に、必要な措置は躊躇なく実施する」などと勇ましく語ったが、もっとも重要な予算の問題に対する姿勢を見てみても、とてもじゃないが見通しが甘すぎるとしか言いようがないのだ。
安倍は「PCR検査を国が仲介」と表明、実際は妨害するつもりでは? 北海道でもすでに
このように、中身がスカスカすぎるうえ、記者の質問もシャットアウトするという、何のための記者会見なのかさっぱり意味がわからないものだったわけだが、そんななか、ひとつ引っかかる話があった。それは、「受けるべき人が受けられていない」として批判が噴出しているPCR検査についてだ。
安倍首相は会見で、来週中にPCR検査を保険適用にすることや、3月中にウイルス検出作業を15分程度に短縮できる新たな検査機器の利用開始を目指していることを公表し、「近くにいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者のみなさんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保する」と述べたのだが、気になったのは、こんな発言をおこなったことだ。
「地域の検査能力に限界があるために、断られるといったことが断じてないように、広域融通によって必要な検査が各地域で確実に実施できるよう、国において仲介をおこないます」
地域でのPCR検査の実施を国が仲介する……? 発言はこれだけだったので詳細はわからないのだが、これまでの経緯を考えると、これは「仲介」ではなく、「介入」することで検査を妨害しようとしているのではないのか。
じつは、すでに「介入」例が出てきている。というのも、現在、政府の方針により厚労省の研究機関である国立感染症研究所の専門家3名が北海道庁に派遣されているのだが、この専門家が基本方針の〈入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査〉という部分ばかりを強調。そのことによって、道庁職員や保健所職員が「検査し過ぎてはいけないのか」と思い始めていると、27日の衆院予算委員会で立憲民主党・川内博史衆院議員が指摘したのだ。
もしこれが事実であれば、地域におけるPCR検査実施の「国の仲介」によって、同じようなことが全国でおこなわれるようになるのではないか。事ここに及んでも、感染拡大の防止どころか、感染実態の矮小化に走ろうとしているのではないかという、そんな懸念を抱かずにはいられないのである。(編集部)