東京五輪の延長が決まると日本のコロナ禍にまつわる情勢は一変しました。
それまでは政府はPCR検査を抑制することで公式の感染数を抑え、コロナ禍はないかのごとく振る舞う一方で、いまは「ギリギリ持ちこたえている」状況だという表現も流しました。それが五輪が延長された途端に、特に小池都知事が顕著ですが、コロナ禍の深刻さに言及するようになりました。
実態が公表数と乖離していれば正確な対策はとれないし何よりも国民が納得しません。そんなことは専門家会議のメンバーであればわかる筈なのに、なぜか安倍政権に同調しPCR検査を抑制して来ました。現在も「帰国者・接触者相談センター」というPCR検査の関門は顕在です。
安倍政権(および専門家会議)の特異性はPCR検査拡充だけでなく、隔離施設の拡充についても全く考えていないことです。早めに感染者を見つけ隔離施設に収容しないことには感染は拡大する一方ですが、ここでも指一本動かしたくないということです。。
多分 集会や催しの自粛を促し続け、その先には「都市封鎖」を行えば済むと考えているのでしょうが、それだけでは感染拡大は防げません。ということは政府は、感染の拡大は放置し弱者が次々に亡くなっていってもそれはやむを得ないと考えているのです。
一体日本はこの先どうなるのでしょうか。
日刊ゲンダイが「緊迫の一週間で何が起こるのか 『首都封鎖』冷静な見通し」とする記事を出しました。
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緊迫の一週間で何が起こるのか「首都封鎖」冷静な見通し
日刊ゲンダイ 2020/03/27
コロナ禍を弄んでいるとしか思えない自己都合の政治家たちに、この国難が克服できるのか。
東京都は26日、47人の新型コロナウイルス感染者が新たに判明したと発表。都ではおとといも41人の感染が確認されていて、4日連続で最多を更新した。東京五輪の延期が決まった途端、都内の感染者が急増したのだ。
「今までの数字は何だったのかと思いますよ。諸外国に比べて、日本では感染拡大が抑えられているという話だったのに、小池都知事がいきなり会見して首都のロックダウン(封鎖)にまで言及し、今週末の外出自粛を求めたことで、国民心理は一気に緊迫した。スーパーで食料品が買い占められるなどのパニックも起きてしまいました。東京都も政府も冷静に有効な対策を打ち出すことなく、不安をあおっているだけではないのか。患者の数は最初から正確な数字を出して欲しいし、外出自粛というなら、春分の3連休前に言うべきでした。“自粛疲れ”などといって、連休中にお花見に興じたり、繁華街に出かけた人は多かった。いま発表されているのは10日から2週間前に感染した人の数ですから、連休中の感染者数が顕在化する来週半ば以降が非常に心配です」(山野美容芸術短大客員教授の中原英臣氏=感染症学)
3連休前に小池知事がダンマリを決め込んでいたのは、五輪がどうなるか分からない状態だったからで、「アンダーコントロール」を装う日本政府と足並みをそろえていたのだろう。学校の一斉休校も解除されることになり、国民の間に安心感が広がっていたところへ、寝耳に水のような「ロックダウン」の脅しである。
都内で16万人の感染を想定か
小池は現状を「感染爆発の重大局面」と警告するが、感染拡大はずっと前から予想できたことだ。自粛ムードの緩みに加え、海外からの帰国者の感染判明も相次いでいる。これでオーバーシュートが起きれば、五輪開催に執着して、都合の悪いことは見えぬフリをし、場当たり対応を続けてきた政治の責任に他ならない。
すでに世界の感染者数は累計50万人を超えた。これまで日本の感染者の少なさは不自然で、CNNなど海外メディアには「日本は五輪開催のために感染者数を隠蔽しようとしている疑念がある」と報じられていた。
ロックダウンにいたった海外の感染爆発を見ても、日本時間けさの時点でイタリアの感染者は約8万1000人、スペインは5万6000人超。スイスも見る見るうちに感染者が1万人を超えた。人口1000万人未満の国で1万人を超えたのは初めてだ。
欧米を中心に、感染者の増加が止まらない。米国では8万人超が感染しているが、その半数近くを占めるのが、人口約2000万人のニューヨーク州だ。ニューヨーク市を中心に3万人以上の症例が確認されている。クオモ州知事によると、陽性反応が出た患者のうち12%が入院し、そのうち3%が集中治療を受けているという。
小池知事は都民に外出自粛を訴えた、おとといの緊急会見で、「感染爆発のピーク時には1日に2万人の入院患者が見込まれる」との試算を明らかにした。
東京都の人口は約1400万人。ニューヨーク州と同等の確率で試算すると、感染者の12%が入院して、その数が2万人ということは、都内の感染者は約16万人相当に達していることになる。
それどころか、ニューヨーク市のデブラシオ市長は25日、「感染大流行が終わるまでには800万人以上の市民のうち半数以上が感染する」との見通しを示した。最悪の場合、都内で700万人が感染する可能性もあるということではないのか。
「やってる感」と危機便乗で国民の不安は置き去り
2月24日に政府が「この1~2週間が瀬戸際」と宣言してから1カ月経って出てきたのが、「感染爆発の重大局面」という小池の発言だ。初動の水際対策で失敗し、瀬戸際でも食い止められず、ついに重大局面になってしまった。
「ほとんどオオカミ少年と化しています。科学的な知見に基づかず、政治的な思惑でコロナ対策を利用しようという姿勢が見えるのが罪深い。こうなったら、1万人くらいをサンプリングして検査を行い、疫学調査をした方がいいのではないか。政府の場当たり対応に任せていたら、どうにもならない。政治がダメなら、手洗いの徹底などで国民が自分の身を守るしかありません」(中原英臣氏=前出)
都が公表した厚生労働省クラスター対策班の21日時点の分析では、3月25日までに51人が感染、1週間後には3倍の159人が感染し、その翌週は320人が感染して4月8日までに計530人が感染するという試算だった。
ところが実際は21日から25日までに83人が感染。4月8日までの感染者数は、試算の530人で済みそうにない。
WHOによれば、感染者が初めて確認されてから10万人に増えるまで67日間、20万人に増えるまで11日間かかったが、その後、わずか4日で30万人に達したという。これが感染病の怖いところで、1人が数人に感染させるとネズミ算的に感染者数が増えていく。
「緊急事態宣言」はいつでも可能に
この先1週間、何が起こるか分からない。東京都の感染者急増を受け、政府は28日の設置予定を前倒しして、改正新型インフル特措法に基づく対策本部を26日設置、初会合が開かれた。これで「緊急事態宣言」を発令できる環境は整った。その場合、都道府県知事らが住民に要請することができる外出自粛期間は「21日程度」という。首都封鎖もあり得る。問題は、それが本当に有効なのかということだ。
「これほどの深刻な事態なのに、東京都も政府も“やってる感”の演出に腐心するばかりで、国民はマスクも手に入らない状況が続いている。コロナ対策で顔が見えなかった小池知事が五輪延期で急に表に出てきて、テレビに出まくっているのは夏の都知事選のための選挙運動にしか見えないし、政府もコロナを政権維持に利用しているだけなのです。国民の命や安全より五輪を優先してきたのがその証拠です。急にリーダーシップをアピールしているのも、危機に便乗して権限を強化しようと、コロナを政治利用しているに過ぎない。その一方で、私権制限に伴う休業などの補償については後回し。経済的に困窮して一刻を争う国民が多いのに、諸外国に比べて緊急経済対策の策定も遅すぎます」(政治評論家・本澤二郎氏)
生活に困窮している人にはまず現金、そして減税措置が常識だ。ところが自民党から出てくる経済対策といったら、旅行代金の助成や「和牛商品券」「お魚商品券」などトンチンカンなものばかり。“生活費が足りないなら和牛をお食べ”とは、どこのマリー・アントワネットだ。家賃が払えないなら旅行に出かけろとでもいうのか。結局、この期に及んで業界向けの利益誘導なのである。そんなに商品券が好きなら、今後は議員の歳費を商品券で支給すればいいのだ。
「海外には何十兆円もバラまいて、米国から武器を爆買いするためには惜しみなく血税を使うのに、本当に国民が困っている時には出し渋る。仲間内で利権を分け合う安倍政権には、庶民の生活など眼中にないのでしょう。緊急事態宣言で人やモノの流れが止まれば、経済は大打撃を受けます。体力のない中小零細企業から潰れていく。首都封鎖で、中国・武漢のような医療崩壊が起きる可能性だってある。コロナではなく、政治のせいで人が死ぬことになりかねません」(本澤二郎氏=前出)
政治的な思惑でコロナも利用する政府や都の言い分はうのみにできない。政治に期待できない以上、われわれ個人が冷静さを保ち、感染を避けて他人にうつさないよう留意するしかないのだろう。いまの政府がやっていることは結局、すべて自己責任に押し付けているのと同じだ。