2020年3月18日水曜日

政府が、検察幹部人事への恣意的介入を合法化する改正案を提出

 政府が法解釈を変更して黒川検事長の定年を特例として延長したのは、安倍内閣の番犬として知られる黒川氏を次の検事総長に起用する狙いからで、三権分立を侵すものです。
 13日、政府は国家公務員法等の一部を改正する法律案とともに、検察庁法一部改正する法律案を国会に提出しました
 それによればすべての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げるものの、63歳になれば検事総長を補佐する最高検次長検事や高検検事長などの役職に原則として就任できなくなるとするのですが、「内閣が定める事由があると認めるときに特例措置として63歳以降もこれらのポストを続けられるようにするいうものです。
 それは安倍内閣が黒川氏について行った恣意的な措置を合法化するものです。「法をまげる(枉げる)」という表現がありますが、これは「まがった法を作る」ものです。

 しんぶん赤旗の記事と東京弁護士会会長)が出した反対声明を紹介します。

 (註)共産党 山添拓議員の質疑応答の動画は https://youtu.be/f9AS8NlPdds20分)でご覧になれます。
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検察人事 内閣が握る 役職延長 露骨に介入の仕組み
参院予算委 検察庁法改定案 山添氏、撤回迫る
しんぶん赤旗 2020年3月17日
 日本共産党の山添拓議員は16日の参院予算委員会で、政府が閣議決定した国家公務員の定年を引き上げる関連法案の中の検察庁法改定案に、検察人事に内閣が露骨に介入する仕組みが盛り込まれていることを告発し、法案の撤回を迫りました。関連記事

 東京高検検事長の定年延長をめぐる法解釈変更に批判が高まる中、政府が閣議決定した検察官の定年を63歳から65歳に上げる検察庁法改定案では、63歳になった検事長など一定のポストにある検察官は、引き続きこれらのポストに就かせることはできないとしています。
 ところが、山添氏の追及で、同法案に「内閣が定める事由があると認めるとき」は63歳以降も検事長などの役職の延長が認められ、さらに「内閣の定めるところにより」再延長も可能となる規定が盛り込まれていることが明確になりました。
 山添氏は、内閣の判断で特定の検事長らをその職務にとどめることができると指摘し、「検事長等の人事は官邸が握ると公言するようなもの。首相の一存で検事長の任期を延長していけるということか」として、「内閣の定める」とは何かと追及しました。
 安倍晋三首相は「判断は適正になされていく」などと、まともに答弁しませんでした。
 山添氏は、「桜を見る会」問題などで安倍首相が刑事告発されていることにふれ、「自らを捜査し、起訴するかもしれない検察について、次長検事や検事長など検察上層部の人事に内閣が露骨に介入しようとするもの。こういう仕組みをつくっていくこと自体が、疑惑隠しだと疑念をもたれる」とただしました。
 安倍首相は「そうは思わない。国会で審議をしていただきたい」と強弁。山添氏は「改定案は検察まで私物化するものだ」と厳しく指摘し、法案の撤回を求めました。


検察庁法に反する閣議決定及び国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対し、検察制度の独立性維持を求める会長声明
2020年03月17日
東京弁護士会 会長 篠塚 力
1 政府は本年1月31日、2月7日に63歳で定年を迎えることになっていた東京高検検事長の勤務を、国家公務員法の勤務延長規定を根拠に半年間延長するとの閣議決定をした(以下「本件閣議決定」という。)。
 しかし、検察官は一般の国家公務員とは異なり検察庁法によって定年が規定されている。特別法が一般法に優先するのは理の当然であることから、国家公務員法の規定する定年退職の規定(国家公務員法第81条の2)はもとより、勤務延長の規定(同法第81条の3)も検察官には適用されないと解される。これは内閣、人事院の一貫した法律解釈であって、時の政権が閣議決定によってこの解釈を変更することは検察庁法の規定に明白に違背する

2 検察官が一般の国家公務員とは異なる法律によって規律されるのは、検察官は行政官ではあるものの、刑事事件の捜査・起訴等の権限が付与され司法の一翼を担って準司法的職務を担うことから、政治からの独立性と中立性の確保が特に強く要請されるためである。
 すなわち、検察官は「公益の代表者」(検察庁法第4条)であって、刑事事件の捜査・起訴等の検察権を行使する権限が付与されており、ときに他の行政機関に対してもその権限を行使する必要がある。そのために、検察官は独任制の機関とされ、身分保障が与えられている。にもかかわらず、内閣が恣意的な法律解釈によって検察の人事に干渉することを許しては、検察官の政権からの独立を侵し、その職責を果たせなくなるおそれがある。
 したがって本件閣議決定は、検察官及び検察組織の政権からの独立を侵し、憲法の基本原理である権力分立と権力の相互監視の理念に違背する。

3 このような違憲・違法というべき法律解釈の変更について、法務大臣が国会内外で厳しく批判されている中で、政府は3月13日、さらに国家公務員法等の一部を改正する法律案(内容として検察庁法の一部改正を含む。)を閣議決定し、これを国会に提出した。
 改正案は、すべての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上、63歳になった者は、検事総長を補佐する最高検次長検事や、高検検事長、各地検トップの検事正などの役職に原則として就任できなくなるが(役職定年制)、「内閣」が「職務遂行上の特別の事情を勘案し(中略)内閣が定める事由があると認めるとき」(検察庁法改正案第22条第5項)に当たると判断するなどすれば、特例措置として63歳以降もこれらのポストを続けられるようにするとの内容である。
 このような法律改正がなされれば、時の内閣の意向次第で、検察庁法の規定に基づいて上記の東京高検検事長の勤務延長のような人事が可能になってしまう。
 しかしこれは、政界を含む権力犯罪に切り込む強い権限を持ち司法にも大きな影響を与える検察官の独立性・公平性の担保という検察庁法の趣旨を根底から揺るがすことになり、極めて不当である。

4 以上の理由により、当会は政府に対し、本件閣議決定に抗議し、撤回を求めるとともに、国家公務員法等の一部を改正する法律案のうち検察官の定年ないし勤務延長に係る「特例措置」に係る部分を撤回し、憲法の権力分立原理を遵守して検察官の独立性が維持されるよう、強く求めるものである。