2020年3月5日木曜日

支離滅裂を絵に描く安倍内閣の瀬戸際対応(植草一秀氏)

 米国のトランプは、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急予算措置が、議会での協議の結果先月表明していた額の3倍以上にあたる総額85億ドル(日本円で9100億円規模)に上る可能性があると述べました(NHK 4日)。「腐っても鯛」というべきでしょうか。
 日本の153億円が如何に はした金に過ぎないかということです。恥ずかしくないのでしょうか。
 こうなると「やってる振り」だけはしたい、だから「緊急事態宣言」だけは出したいという安倍首相は「滑稽」でしかありません。
 政府は何故PCR検査の大々的な実施に踏み切らないのでしょうか。なぜそれを国立感染症研の領域に留めておこうとするのでしょうか。

 政府は「帰国者・接触者相談センター」と「帰国者・接触者外来」の二つの関門を設けて、PCR検査数を徹底的に絞っています。植草一秀氏の計算によれば、「帰国者・接触者外来」で受診した数は、1ヵ月間に「帰国者・接触者外来」1機関受診した患者の数は平均26人に過ぎないということです。
 開いた口が塞がらないとはこのことです。安倍政権は一体「正気」なのでしょうか。
 野党はそうした実態を徹底的に追及すべきです。

 植草一秀氏のブログを紹介します。
 しんぶん赤旗の記事:「PCR検査拡充を 野党が法案を共同提出」を併せて紹介します。
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支離滅裂を絵に描く安倍内閣の瀬戸際対応
植草一秀の「知られざる真実」2020年3月 3日
安倍首相は専門家会議が示した「これから1、2週間が、感染が急速な拡大に進むのか、収束できるのかの瀬戸際である」の言葉を使い、小中高の一斉休校を要請し、各種イベントの自粛を要請した。
そのなかで安倍内閣が実施したのが3月1日の東京マラソンだ。
メディアが提供する東京マラソンの写真を見る限り、「これから1、2週間が感染のスピードが急速に拡大するか、収束できるかの瀬戸際である」との認識を安倍内閣が保持しているとはまったく思えない。

東京マラソンの沿道に7万人もの市民が集結したと伝えられている。写真を見る限り、人と人が極めて近い距離で接触するような状況である。この状況が一定時間維持されていたと考えられる。屋内ではないが、大規模な濃厚接触を首都東京で創出したと言える。
学校を休校にしたが、保育所、学童クラブは対象外である。何よりも満員電車での通勤が放置されている。
また、感染が広がっている国、地域からの日本への人の移動を制限していない。
ダイヤモンド・プリンセスの乗客を公共交通機関の利用で帰宅させた。この乗客の感染が明らかになり、乗客が下船後にスポーツクラブを利用したことも明らかになっている。
乗客はスポーツクラブの利用を制限されていなかった。

安倍首相は国会答弁で「かかりつけ医などが必要と考える場合、すべての患者が検査を受けられる十分な検査能力を確保する」と答弁したが、加藤勝信厚労相は異なる答弁を維持している。閣内不一致である。
加藤厚労相は「帰国者・接触者外来」の医師がPCR検査を行うかどうかを判断するというプロセスを維持する方針を示している。
「帰国者・接触者外来」は3月2日時点で全国に844機関しかない。一つの都道府県に18しかないという数である。
この「帰国者・接触者外来」で受診した数は、2月の1ヵ月間で2185件にとどまっている(厚労省に報告があったもの)。1ヵ月間に「帰国者・接触者外来」1機関が受診した患者の数は平均2.6人に過ぎない
しかも、その「帰国者・接触者外来」の具体名が公表されていない。
安倍内閣は「帰国者・接触者外来」を支配して、PCR検査の拡大を阻止している。
目的は感染確認者数を抑制するためだ。
この不当な措置を正当化するためのロジックは、「感染者と非感染者が待合室で同室にならないため」のものというもの。しかし、感染者と非感染者の臨床的区別はつかない。
したがって、現状で、感染者と非感染者は待合室で同室になっている。
このとき、街のクリニックの医師が、PCR検査が必要だと判断すれば、このクリニックから検査機関に直接検査を発注すればよい。
これが、安倍首相のいうところの、「かかりつけ医などが必要と考える場合、すべての患者が検査を受けられる十分な検査能力を確保する」というものだ。

しかし、国会での加藤厚労相の答弁は、PCR検査の発注権限を「帰国者・接触者外来」の医師に限定するというもの。
目的は明白だ。PCR検査を広範に実施することを阻止することにある。
国会質疑で重要なことは、一般の医療機関の医師の判断によって、民間検査機関にPCR検査を発注できるよう、直ちに運用を変えることについて明確な答弁を得ることだ。
安倍首相答弁と加藤厚労相答弁の矛盾を突けば、これは可能になる。
実効性のある国会質疑とは、このようなことを言う。

安倍首相の記者会見について、私はかねてより「やらせ会見」だと指摘してきた。
壇上にはプロンプターが用意され、透明な板に映し出される文字を読むことで会見が行われている。
記者からの質問は事前に提出されており、質問者として誰を指名するのかもあらかじめ決められている。質疑応答の質問に対する答弁も事前に官僚が用意しており、安倍首相はその原稿を読むだけである。
事前に質問が提出され、官僚が答弁を用意していない質問は受け付けない。このことが、3月2日の国会質疑で安倍首相の言葉によって明らかにされた。
通常はこれを記者会見と言わない。単なる朗読会または学芸会だ。
漢字に読み仮名が書かれていないと、
「云々(うんぬん)」を「でんでん」と読み上げ、「背後(はいご)」を「せご」と読み上げ、願って「已(やみ)ません」を「いません」と読み上げることになる。
Leaderの資質を欠くだけでなくReaderにもなれないのが現実だ。
(以下は有料ブログのため非公開)


PCR検査拡充を 野党が法案を共同提出
しんぶん赤旗 2020年3月4日
 日本共産党と、立憲民主党、国民民主党などの共同会派は3日、新型コロナウイルス感染症を判定するPCR検査体制を拡充するための法案を衆院に共同提出しました。医師が必要と認めた検査を迅速に実施できるようにするとともに、検査の実施体制や実施状況を公表することで、国民の不安を解消し、ウイルスの拡散を防止することを盛り込んでいます。

 野党が提出した「新型コロナウイルス感染症検査の円滑かつ迅速な実施の促進に関する法律案」は、(1)政府の検査体制の検証 (2)PCR検査の最大限の拡充 (3)必要な予算措置の確保―の措置を講ずるものです。具体的には、行政検査の結果の定期的な公表や、臨床現場の医師の意見を尊重した迅速な実施、国・都道府県による行政検査体制の整備、国・都道府県による民間機関などの検査を可能とするための支援、PCR検査の最大限の拡充のための必要な財政上の措置の実現を求めています。
 提出後の記者会見で日本共産党の宮本徹衆院議員は、「法案の中心点は、保健所を経なくても医師が必要だと判断したらPCR検査を受けられるようにするところだ」と強調。「感染拡大防止、検査を求める国民の声に応えるものだ」と述べました。
 共同会派の山井和則衆院議員は「政府の取り組みを後押しし、スピードアップさせる法案だ。一刻も早く成立させたい」と表明しました。