英国のワクチン2回の接種率は88%(75%という報道も)で、コロナは一時鎮静しましたが、今年に入って感染が再爆発し、12日の新規感染者数は32,706人日、累計618万人という惨状です。
シンガポールは人口の70%がワクチンを2回接種済みですが、先月22日、過去28日間の新規感染者1,096人のうち、44%が2回、30%が1回済みで、計74%が1回以上接種していたことが分かりました。
イスラエルは人口の62.3%がワクチン2回接種済みですが、12日の新規感染者数は6,525人/日で2月8日以降最多となり、重症患者や死亡者が続出しています。
米疾病対策センター(CDC)は7月30日、東部マサチューセッツ州で7月に起きた新型コロナウイルスの集団感染を分析したところ、7割超がワクチンを接種し終えた人だったと明らかにしました。⇒(東京新聞7/31)「感染者の7割超がワクチン接種済み」米マサチューセッツ州 デルタ株猛威 マスク着用の根拠に
その際にCDCは「但し重症化はしていない」と強調しましたが、「英国公衆衛生庁は6月25日、『デルタ』で死亡した117名のうち50名は『ワクチン』を2度投与されていたと発表しました(1度だけ接種した人も含めると死亡者の60%がワクチンの接種済み)」
⇒(櫻井ジャーナル8/4)日本でCOVID-19ワクチンの接種を嫌がる人が増えている)
言うまでもなく英国の発表の方に信憑性があります。
従来70%が接種すれば集団免疫が得られるとされていたことについても、「接種した人も感染しているので集団免疫を達成する可能性はない」というのが専門家の見方で、WHOも正式に否定しています。
従って菅首相などがいまだに唱えている「ワクチンが普及すればコロナは収まる」というのは絵空事に過ぎません。
菅首相は今週コロナを2類から5類に変更するという策を観測気球的に打ち上げました。これは政府はコロナ対策から身を引いて患者を好きなようにさせるという新自由主義特有の自由放任政策で、その背後には国の負担の大きい国民皆保険システムを破壊したいという衝動があると「世に倦む日々」氏は見ています。
10日のモーニングショーに出演した菊間千乃が、ワクチン接種済みの者にはどんどん外出させろ、自由に旅行して楽しませろと大胆にコメントしたようですが、2回接種済みでも感染予防にはならないのが明らかになっているのに、余りにも乱暴な主張です。百歩ゆずって仮に接種者が重症化しないと仮定しても、それはコロナ菌を広く社会にばら撒く行為で許されないものです。しかしそういう風にして社会(経済)活動を活発化させたいのが菅首相や竹中平蔵が望んでいるもので、世に倦む日々氏は、菅と竹中の意図を菊間千乃が代弁していると見做しました。
それはまた経済団体の意にも沿うものです。東京の大企業の正社員は既に接種済みで会社が第5波を脅威だと感じてないからで、それが 東京のオフィス街が通常どおりの風景であり、電車内と繁華街が日常の混雑に変化がないことの理由だと見ています。
12日に尾身分科会会長が単独で会見し、東京の人出を「5割削減」するようにとの低すぎる目標の提言がありましたが、それもワクチン接種者の存在を意識した結果と見ています。
いわばこれまで無為無策でいた政府が、飛んでもないことに向かおうとしているという警告です。
ブログ「世に倦む日々」を紹介します。
それにしても、 これまで76兆円の国の予算を使って1年半もコロナ対策してきた帰結が、「自分の命は自分で守れ」なのか。これが日本の対策の末路なのか。76兆円の1年半。病床も増えず、ワクチンも届かず、治療薬も作れず、検査態勢もろくに整備されず、論文も書かれず、水際もザルなまま・・・ と結んでいます。
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76兆円の予算投じてコロナ対策した結果 - 「自分の命は自分で守れ」の末路
世に倦む日々 2021-08-13
12日、尾身茂が政府分科会会長として単独で会見に登場、東京の人出を5割削減する提言を発表した。同時刻、西村泰稔も会見し、お盆の帰省時に密を避けるよう注意を促した。二人は別々に会見していて意思統一がされてない。今週はコロナ対策の分科会が開かれておらず、政府と専門家の間で協議がなされていない。大曲貴夫が「制御不能の事態」と言い、病院がオーバーフローして、入院できない患者が自宅に溢れている医療崩壊の危機なのに、政府からまともな発信がない。何も動きがない。今週は菅義偉が隠れていて、テレビに官邸会見の絵を撮らせる幕がない。だけでなく、田村憲久や西村泰稔が官邸の玄関広間を急ぎ足で歩く絵がなく、おかしいなと思って首相動静を調べたら、今週は一度もコロナの関係閣僚会議が開かれていなかった。例の、中等症患者を自宅療養にする方針転換が猛反対を受けて挫折し、世論調査での内閣支持率が最低値を更新し、コロナ第5波の感染者は予測を超えて急拡大が続き菅義偉も手詰まりになって逼塞しているように見える。政府は医療崩壊の前になすすべがない。
が、菅義偉が何も考えていないわけではなくて、今週は、コロナを2類から5類に変更するという策を打ち出し、マスコミに撒いて制度執行へと固める政治に出てきた。週初の9日に、厚労省で検討が始まっているという情報を流し、木村盛世だの、三浦瑠璃だの、堀江貴文だのが賛同して世論を盛り上げる動きに出た。マスコミでの世論工作の主軸になっているのは長尾和弘で、10日のプライムニュースに出演して議論を掻き回していた。要するにレッセフェール(⇒自由放任主義)の棄民策で、政府はコロナ対策の責任から手を引けという主張であり、去年からずっと言われてきた話だ。バックにいて指南しているのは竹中平蔵で、先週の「中等症=自宅療養」策とセットの政策であり、ネオリベ(⇒新自由主義)原理主義の方向性である。ショックドクトリン(⇒変革は危機状況によってのみ可能・惨事便乗)の手法で、第5波の医療崩壊の機に乗じて、不意を衝く形で棄民政策の攻勢を仕掛けてきた。ネオリベの政治手法には必ずこの惨事便乗のパターンがある。体質的にこの手法を繰り出す。無論、そこには、社会主義思想による構築物である国民皆保険システムを破壊したいという衝動がある。
菅義偉が沈んで引っ込み、尾身茂と東京都がコロナ対策の主役に浮上した感がある。しかし、尾身茂の唱える「5割削減」は目標としてあまりに低すぎ、デルタ株感染を抑止する策として弱すぎるのではないか。という感想は誰でも常識感覚で持つところだろう。昨年春、西浦博が8割削減を強く主張し、尾身茂や押谷仁がそれはオーバーだから7割削減にしようと目標を修正したことがあった。結果的に7割削減策は効を奏し、マスコミが自粛警察の司令塔になって渋谷駅前の様子をずっと撮影、人出を監視して移動と接触を封じ込めた。ロックダウンの強制法制なしに、呼びかけの自粛運動でロックダウンの効果を得た。その経験に照らせば、最悪の感染爆発が起きている東京で「5割削減」はあまりに目標が低すぎ、大衆心理に訴えて社会行動の変容を促す要求として弱すぎる。メッセージとしてインパクトが不十分だ。何でこんな虚弱な目標発信でお茶を濁すのだろう、7割削減を掲げないのだろうと訝ったが、どうやらそれには理由がある。7割にせず5割にとどめているのは、ワクチン接種済み者の存在があるからだ。
8月10日のモーニングショーに出演した菊間千乃が、ワクチン接種済みの者にはどんどん外出させろ、自由に旅行して楽しませろとコメントした。この発想と論理はネオリベのもので、菊間千乃は竹中平蔵の系列の新自由主義のイデオローグだ。菅義偉が首相になった後、テレビにレギュラー出演するネオリベ論者の人口密度がさらに上がり、ネオリベとは逆の立場の論者が交替で降板させられた。ネオリベ系のコロナ政策の基本は、英ジョンソン政権と同じで、どんどんワクチンを打って規制緩和するというもので、上級から先に接種済み者を増やして経済活動に出して行くという考え方である。国が面倒みるのはワクチンだけで、他の保護はしないというワクチン主義の対策だ。この思想の影響が非常に強く、肯定納得している者が多くいて、東京では接種済みの者が多く出歩く基礎要因になっている。前回の記事でも書いたが、2回接種済みでもそれは感染予防にはならず、発症・重症化を防ぐだけで、ウィルスを吸い込んで感染するし、無症状でウィルスを吐き散らして人に感染させる。この点が、今の日本の感染爆発とデルタ株をめぐる隠された真実だろう。
東京の繁華街を出歩いているのは、無知で無分別な未接種の若者ではないのだ。そうではなく、職域接種でモデルナを打ち終えた上級階層なのであり、長く外出と消費を抑えられて欲望が溜まっていた東京の富裕層高齢者なのである。菅義偉の思惑としては、日本経済の落ち込みを防ぐためにも、接種済み上級の経済活動を活発化させ、彼らを消費に駆り立てて市場活性化を図りたいのだろう。菅義偉と竹中平蔵の論理を菊間千乃が代弁している。したがって、菅義偉からすれば、渋谷スクランブル交差点の人流を空っぽにするなど、そんな政策図は頭の隅にもないのだ。現在の東京の人流を止める考えはない。菅義偉の子分となった小池百合子も同じで、だからこそ、口先では「テレワーク7割」とか言いながら、経団連会長にも東商会頭にもその協力要請には行かないのである。本気ではないのだ。それでは何が本気で本心かというと、大曲貴夫に言わせたところの、「自分の身は自分で守れ」であり、要するに自己責任の切り捨てであり、棄民政策の公式宣言である。都行政は都民の命は守れず、都民の健康保険証は紙屑になったから、あとは自分の力で自由に生き延びろと冷酷に通告した。
この局面で、本来なら、経団連や東商が感染抑止への協力を率先して言い、従業員に夏期休暇を取らせろとか、テレワーク7割必達とか言うのだが、経済団体からは何も聞こえてこない。理由は、東京の大企業の正社員が既に接種済みで、会社が第5波を脅威だと感じてないからである。職域接種が済んだ大企業は、休業にもテレワークにも応じない。取引先の大企業が仕事しているから、下請や関連の中小企業は休めず、従業員が未接種でも通勤させざるを得ない。本来なら、日本百貨店協会が、大都市の店舗の営業は暫く中断しますと言うのが当然だが、大規模クラスターを起こしてもその図が出現しなかった。そんな具合で、東京のオフィス街は通常どおりの風景であり、電車内と繁華街は日常の混雑に変化がないのである。尾身茂も「5割削減」と穏和に言っているだけだし、政府も何の指導もしないし、社員は職域で接種済みだから、ウチはいいやと経営者は判断する。こうした論理の堆積が、東京の現在の人流を媒介して感染者数を結果させている。今回のデルタ株の感染爆発の裏には、ワクチンの問題が複雑に絡んでいて、中途半端な接種率と過剰に楽観的な予防意識が、感染爆発を促進する構造的要因になっていると指摘して過言ではない。
それにしても、 これまで76兆円の国の予算を使って1年半もコロナ対策してきた帰結が、「自分の命は自分で守れ」なのか。3回にわたる補正予算76兆5000億円。その全額がコロナだけに投入されたわけではないけれど、これが日本の対策の末路なのか。目の前に30兆円の使い残しの予算がありながら、「制御不能だから自己責任」の結論になり、むざむざカミュの『ペスト』の地獄と絶望を地で行かなくてはならないとは、何という惨めで愚かな国なのだろう。76兆円の1年半。病床も増えず、ワクチンも届かず、治療薬も作れず、検査態勢もろくに整備されず、論文も書かれず、水際もザルなまま。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。