菅首相も小池都知事も、新型コロナの感染爆発に対して国民に「注意喚起」的なことを口にしますが、その実態は無為無策であり、これはというような実態のあるものは何一つありません(「中等症1以下は自宅療養を原則とする」というようなあまりにも非常識な発想はもっているようですが)。
東京都に至っては入院率が10%にも満たない現状(自宅療養者3万5千人ほど)でありながら、専門家から患者を1カ所に集めてケアできる「野戦病院」(的なもの)の設置の必要性を指摘されても、「東京都には豊富な医療資源があるのに、わざわざ、医療的に環境の悪い体育館に臨時病床をつくる必要性はない。検討する予定もありません」(都感染症対策部)という理解不能の回答をする始末です。一体どの口がそう言っているのか、狂っているというしかありません。
ところで東京都内の有志6区市長が(与野党に)「政治休戦」を呼び掛けたということです。一応は窮状に耐えかねたかのように見えますが、その本当の狙いは一体何なのでしょうか。コロナの感染爆発は、与野党間で「政治休戦」することによって解決したり前進するような問題なのか。何とも分かりにくい話です。
ところが立憲党の枝野代表が「私もそういう状況じゃないかと思っています」と言い出したということです。元々、枝野氏は口先だけは滑らかですが、一体何を考えているのか分からない人なので、訳の分からないことを言いだしても不思議はないのですが・・・どう考えてもそれでコロナの感染が治まるとも、死者数が減るとも思われません。
もしもそんなことになれば安心できるのは国民ではなく加菅政権自体であり、枝野氏や安住氏らはそれを足場にして政権に参加したいのかも知れません。
「ショック ドクトリン(危機便乗型)」という言葉がありますが、まさに国民をないがしろにした独善的なものであって、いずれにせよコロナの感染爆発を解決できる方策とはとても思われません。
日刊ゲンダイの記事を紹介ます。
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<それは権力の甘い罠>「救国大連立」とか「政治休戦」とか 絶対ダメだ
日刊ゲンダイ2021年8月20日
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
人の命に軽重はないが、新型コロナウイルスの感染爆発が引き起こしたこの悲劇には、ただただ言葉を失う。新型コロナに感染して自宅療養中だった妊娠29週の女性が千葉県柏市の自宅で早産し、新生児が死亡した問題だ。
市によると、女性は9日に熱やせきの症状が出て11日に陽性が判明。「発生届」には軽症と記されたが妊婦の記載はなく、保健所が妊娠中と認識したのは14日だった。息苦しさなどから中等症相当と認定され、15日から県や市が入院先の調整を始めたが、難航。女性は17日朝に電話で保健所に腹部の張りや出血を訴え、午後5時15分ごろに出産したという。20分後に救急隊が駆け付けたが、すでに新生児は呼吸がなく、母子が病院に到着したのはさらに20分以上経っていて、新生児の死亡が確認された。
加藤官房長官は19日の会見で、「残念な事案」「妊娠された方の受け入れはコロナ対応のひとつの課題と認識されていた」などと釈明。「政府としての必要な支援はしっかりやっていきたい」とし、都道府県に対して妊産婦の搬送や入院対応の強化を要請していく考えを表明したが、遅すぎる。菅政権のメチャクチャな新型コロナ対策によって、奪われるはずのなかった命が、救われるはずだった命がどんどん失われている。未来あるものも、老い先長くないものも、誰も彼もだ。
攻勢強め寄り添う矛盾
国民の暮らしと命を守れない、守ろうともしない政権にこれ以上国を任せられない。大半がそう考えているから、内閣支持率はつるべ落とし。マスコミ各社の世論調査では軒並み20%台に落ち込み、「危険水域」に突入。菅政権はぶっ倒れる寸前だ。にもかかわらず、野党第1党の立憲民主党の動きがどうも怪しい。感染爆発に直面している東京都内の有志6区市長が「政治休戦」を呼び掛けたのを受ける形で、枝野代表が「私もそういう状況じゃないかと思っています」と言い出したのだ。
首長らは与野党で次期衆院選の日程を決めた上で、選挙戦に入るまで力を合わせてコロナ対策にあたるよう求めている。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。
「枝野代表は菅首相との党首会談に極めて前向きで、憲法53条に基づく臨時国会の早期召集を野党4党が改めて訴えた17日の集会では『緊急で必要な立法措置があれば前例に縛られず、対応する』とも言っていた。政権に対する攻勢を強めると言いながら、寄り添うような発言の背景には、衆院選をめぐる自民党との調整があるのではないか。菅首相が自民党の顔である方が野党にとっては有利である一方、9月末実施でほぼ固まった自民党総裁選前に解散・総選挙を打ち、無投票再選を狙う菅首相の思惑とも合致する。さらに問題なのは、その後です。自民党の獲得議席数が過半数を割り込むのは必至で、自公与党でも過半数維持は厳しい情勢。そこで、新型コロナに対応する『救国内閣』の名目で、連立入りの打診が立憲にあったのではないかともみられています。その先にあるのは菅政権の延命です」
ボス交渉でコトを進めたがる傲慢
コロナ対応のために通すべき法案があるなら、国会で審議し、与野党が協力すればいい。緊急事態宣言の13都府県への拡大と再々延長を発表した17日の会見で菅は、「より迅速に病床を確保するために法整備の必要性は私自身、痛切に感じている。病床確保のほかに、ワクチンや治療薬といったことを迅速に導入することのできる仕組みというのは今ない。そうしたことも十分に頭に入れながら、法的整備というものについて速やかに検討していきたいと思っている」と言っていたのだから、臨時国会をすぐさま召集すればいいだけだ。一緒にならなければできない対応などあるものか。「救国大連立」とか「政治休戦」とか絶対にダメだ。それは権力の甘い罠でしかない。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「衆院選の日程をめぐって『憲政の常道』が取り沙汰されていますが、憲法の精神にのっとれば任期満了が『憲政の常道』です。衆院解散は内閣不信任案が可決されるなどの例外的な措置で、首相の専権事項でも何でもない。ましてや恣意的な解散はもってのほか。感染爆発という危機にあって国会を開かず、解散・総選挙を打つのは異常です。与野党がそれぞれの政治的思惑で解散について話し合っているとしたら、異常も異常ですよ。立憲は新型コロナ特措法改正をめぐっては刑事罰から行政罰へ修正が図られたからと賛成し、憲法改正手続きに関する改正国民投票法をめぐってもCM規制についての付則が盛り込まれたと賛成した。所帯が大きくなるにつれ、自民とのボス交渉でコトを進めようとする危険な方向へ動いています」
デタラメの限りを尽くしてきた窮地の菅政権に手を貸せば、国民は永遠に野党を信用しなくなるだろう。
全国の感染者数は累計123万人を突破。菅政権が発足した昨年9月16日以降、110万人以上も増加した。1480人だった累計死者数は19日までに1万5542人に増加した。お仲間を潤し、世間の歓心を買いたいだけの「Go Toキャンペーン」や東京五輪の強行、小出し後出しの泥縄が感染爆発を引き起こしたのは言うまでもない。専門家らのシミュレーションを超える惨状にもかかわらず、パラリンピック開催に突き進み、医療崩壊は自宅療養という名の入院制限でゴマカし。棄民政策によって、自宅で命を絶たれる悲劇はこの先も後を絶たないだろう。
「野党共闘」は店ざらし
宣言解除基準を見直す動きもウサンくさい。現在 ▶人口10万人当たりの新規感染者数 ▶人口10万人当たりの療養者数 ▶病床使用率――などに基づいて判断してきたが、ワクチン接種によって感染者の重症化率が下がってきたとして、病床使用率などの医療体制の確保状況に切り替えることを検討しているという。これまで最重視してきた人口10万人当たりの新規感染者数を指標に用い続ければ、宣言解除の出口が全く見通せないからだ。厚労省によると、17日までの直近1週間は全国で約101人。40都道府県でステージ4の目安となる25人以上を上回っている。中でも沖縄は約311人、東京約227人と深刻さを増している。
政治的思惑で国民を見殺しにする政権の誘い水に、これまた政治的思惑で立憲は乗るのか。衆院選に向けた共産党との野党共闘は店ざらしだ。立憲と共産は4月の党首会談で共通政策や接戦区での候補者一本化に関する協議開始で合意したが、いまだ進展なし。支持団体の連合の共産アレルギーに引っかきまわされ、約70の小選挙区で競合したまま。連合の新会長人事にも振り回されそうな雲行きだ。菅政権は失点を重ねる一方なのに、どっちつかずで受け皿になり得ないから政党支持率はちっとも伸びない。ニッチもサッチも行かなくなって「政治休戦」に飛びついたんじゃないのか。
「名古屋入管死亡事件をめぐる文書の全面開示やモリカケ桜問題の真相究明など、コロナ対策以外にも国会で審議すべき問題は山積しています。立憲は協力姿勢を見せる前に、条件を突きつけるのが先ではないのか。駆け引きもせずに自民と手を組めば、その魂胆は有権者に見透かされるでしょう」(角谷浩一氏=前出)
今期限りで引退する立憲の赤松広隆衆院副議長が朝日新聞(19日付朝刊)で、枝野の政治姿勢について「人権や環境を重視し、社会保障制度の充実を図るといったリベラルの理念や立場を明確に語り続けないと、本物の政権にはならない」とクギを刺し、「連合も政党と労組の役割の違いを踏まえ、発言した方がいい。組合員の政党支持で自民党が第1党という組合が結構ある。それが実態だ」とも言っていた。立憲は目を覚ましたらどうか。さもなければ十把ひとからげに逆戻りだ。