2021年8月5日木曜日

入院制限問題で田村厚労相逆ギレ「中等症は入院させる」に「本当か」と聞かれ

 デルタ株(L452R)は既に3月にインドで確認されたにもかかわらず、菅内閣が多少ともマシな水際対策を講じたのは5月に入ってからでした(植草一秀氏が繰り返し指摘)。

 これによっていま感染爆発に至ったデルタ株コロナが易々と日本に流入したのでした。今になって田村厚労相がデルタ株の猛威を強調し、緊急対応として入院制限をするしかなかったと言うのはまさに言い逃れです。無為無策でこの事態を招き、入院先が見つからなくなると今度は膨大な死者につながることもいとわずに自宅治療(事実上の放置)を言い出すという、その場凌ぎの繰り返しではもはや政府の体をなしていません。
 しかも政府分科会の尾身会長によれば、政府から事前に「相談はなかった」ということです。4日の厚労委で、田村厚労相は入院制限は政府で決めた。病床のオペレーションの話なので問題はない」開き直りました。これも驚くべきことで、一体いつから医療と病床が別個の問題になって、政府の裁量に委ねられたというのでしょうか。あまりにもバカバカしくて話になりません。
 その一方で尤もらしく重症化のリスクが高い方、 こういった方々には病床をしっかりと確保しなければならない」などと述べましたが、そもそも中等症の人が1日後、2日後に重症化するのかどうかは、医師でも截然と判断できないと言われています。ということは中等症患者を自宅に放置するというのはあり得ない訳で、政府は適当なことを言い散らすのではなく、そうした人たちを医療者の管理下でキチンと収容できる施設を早急に手配しなくてはなりません。
 するべきことをしないでいまの事態を招いても責任を自覚せず、この段階ですべきこともしようとしないとは もはや理解の埒外です。何故そんなことが許されているのでしょうか。
 LITERAが、4日の厚労委員会での田村厚労相の逆切れ反論のデタラメさを取り上げました。厚労相のデタラメ発言はそのまま菅首相のデタラメ思考を代弁したものです。
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入院制限問題で田村厚労相が唖然の逆ギレ反論! 追及されて「肺炎の中等症は入院させる」と断言も「本当か」と念押しされると…
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 非難轟々となっている、菅義偉首相が打ち出した「中等症以下は自宅療養」の方針。政府は昨日3日に全国の自治体にこの方針について通知を出したが、そこには明確な判断基準がまったく書かれておらず、責任を丸投げした状態。しかも、本日おこなわれた衆院厚労委員会の閉会中審査では、政府分科会の尾身茂会長が「この件については相談や議論をしたことはない」と答弁。政府の独断で決めたことが明らかになった。
 しかも、本日の閉会中審査ではっきりとしたのは、呆れるほどの政府の無為無策ぶりだ。
 今回の「中等症以下は自宅療養」の方針について問われた田村憲久厚労相は、なんと、いまごろになって「デルタ株は大変な脅威」などと危機感をあらわにし、こんな主張を繰り広げたのだ。
「今般、ご承知のとおりデルタ株の感染力というのは非常に、世界的に見てもいままでと状況が変わったぐらいの感染力を持っているというようなことが言われており、実際問題、世界中で感染スピードが非常に早くなっている」
「今回の感染のスピード、1週間で2倍になっているわけなんですね。でありますから、そう思ったときに、病床をどうやって本当に必要な病態で必要な方々にお渡しをするか、ということを考えた場合に、やはり重症化のリスクが高い方、いま重症している方、こういった方々には病床をしっかりと確保しなければならない」
「緊急事態に入りつつあるなかにおいて、先手先手を打って、対応をさせていただいております。もし、そのような感染がこれで収まっていくことがもし仮にあれば、そのときはそれでありがたい話でありますから、我々は最悪の状態をつねに想定しておきませんと、『本来助かる命が助からない』といつも皆様方がおっしゃられておられるかたちになりますので、そういう意味で、こういうかたちをいたしました」
「先手先手を打つ」って、いまさら何を言っているのか。「デルタ株の脅威」は最近になってわかったような話ではなく、4月にはインドで感染者が急増し、遺体の火葬も追いつかないというショッキングなニュースが世界中を駆け巡っていた上、4月26日には海外渡航歴のないデルタ株の感染者が都内で確認されていた。もちろん、当時からデルタ株の感染力は従来株の2倍以上と言われており、すぐに国内でも置き換わると指摘されていたのだ。
 しかも、この間、東京五輪開催によってさらなる感染拡大を指摘する声は上がりつづけてきたが、菅政権は東京五輪開催のために6月に緊急事態宣言を解除。また、同じく6月に政府分科会の尾身会長が五輪開催にともなう感染拡大リスクについて考えを示す方針を明らかした際には、田村厚労相は「自主的な研究の成果の発表ということだと思う。そういう形で受け止めさせていただく」などと発言。世界的パンデミック下での五輪開催という異常な判断に対する苦言には耳を貸そうともしなかった。
 にもかかわらず、いまごろになって「感染スピードが1週間で2倍になっている」「最悪の状態をつねに想定」などと言い出し、中等症患者の自宅放置を正当化するとは……。だいたい、「先手先手を打つ」というのならば、当初からはっきりとしていたデルタ株の感染力の高さを考慮して6月に宣言解除をせず速やかに東京五輪の中止を決定し、デルタ株の置き換わりに備えて万全の医療提供体制の構築に着手すべきだったし、そうした指摘は多数あった。それを無視した結果、現在の医療崩壊を招いたのではないか。
 しかも、「フェーズが変わったと言うが、フェーズがこのような状況になったと認識されたのはいつか?」という質問に対し、田村厚労相は「やはり(新規感染者数の)急激な伸びが示されて、それまで先週ベースで1.3倍というのが、あっという間に2倍になったと。こういう状況であります。これでフェーズは変わったと申し上げました」と答弁。ようするに、ここ1〜2週間で危機感を持った、と言うのである。これは「無能」どころの話ではないだろう。

多数の死者出しているアメリカを平気で引き合いに出して、「自宅療養が基本」と主張する田村厚労相
 だが、田村厚労相の酷い答弁はこれだけではない。田村厚労相の無責任な発言に対し、立憲民主党の長妻昭衆院議員は「中等症は宿泊施設でやるべき」「宿泊療養を大幅に拡充するべき」と訴えたのだが、すると、田村厚労相はまたもこんなことを言い出したのだ。
「ホテル、療養所、これ確保する。それをしたとしてもそれに追いつかない。さらに言えば、それを確保すると言ってもですね、ホテルも明日からというわけにはいきませんから。それは1週間か2週間かかるでしょ。その間に感染は広がるんですよ!? これ。倍で増えてるっていうこの脅威を考えたときに、我々としては在宅でも対応できるということを考えなきゃなりませんし、海外で感染が拡大しているところは基本は在宅であります。ヨーロッパ、アメリカ見ていただければ、そのとおりであります。そのときに、在宅で悪化したときにちゃんと対応できる体制を組むこと、そして本来入院しなければならない方々が入院できるようにしっかりと病床を確保できるようにするための今回の対応であるということをどうかご理解いただきたいと思いますし、もしそうならなければ、方針をまた元に戻してですね、しっかりと入っていただければいい。(反発の声)いや、だからようはスピード感の問題を申し上げておりますので、平時ではないということをどうかご理解いただきたいと思います」
 これには長妻議員も「デルタ株、きょう日本で発見されたんですか? 日本で。きょうじゃないですよ!?」と突っ込んでいたが、この田村厚労相の開き直りはあまりにもひどすぎる。だいたい、「ホテルを用意しているあいだに感染は広がるんですよ!?」って、もっと前から用意しておけという話でしかない
 さらに、田村厚労相は「欧米では在宅が基本」などと言うが、アメリカでは平年の平均死亡者数と比べて増加した人数である超過死亡の数が昨年1月下旬から10月上旬の累計で約30万人にものぼっている。つまり、かなりの「自宅死」が起こっていたと考えられるのだ。そもそもアメリカには日本のような国民皆保険制度がなく経済的に苦しい層は簡単に医療にアクセスできない問題を抱えているが、田村厚労相は国民皆保険制度を持つこの国でアメリカのような「自宅死」を起こそうと言っているも同然だ。
 なのに、言うに事欠いて出た言葉が「本来入院しなければならない方々が入院できるようにしっかりと病床を確保できるようにするため」「(うまくいかなければ)方針をまた元に戻して、しっかりと入っていただければいい」とは……。今後、自宅で放置しようという患者も「本来入院しなければならない」患者だし、失敗してから方針を「元に戻して」も、患者の命は戻ってこないのだ。
 多くの国民の命がかかった問題だというのに、まるで事の重大さを理解していないようなこの態度。その無責任さは問題の焦点となっている「中等症1」の患者が自宅療養になることの危険性についての議論でも同様だった。

一旦「肺炎症状がある中等症の方はそのまま入院」と口にしながら、「本当ですか」と念押しされたとたん……
 たとえば、立憲の山井和則衆院議員は「(中等症1の)いちばん苦しい肺炎の症状でも入院もできない、これは人災ではないのか」と指摘し、方針撤回を訴えたが、これに対して田村厚労相は「誤解がある」「肺炎症状がある中等症の方はそのまま入院していただきます。それはそういう話なんです」と明言。この田村厚労相の答弁に、山井議員は「本当ですか? 肺炎症状のある中等症1の方はいままでどおり入院できるんですか? 確認します」と言質をとろうとしたのだが、すると、田村厚労相は逆ギレしたかのように語気を強めて、こう述べたのだ。
「肺炎症状があって苦しいと言われている方、息ができない方、重症化されるって方は、これは当然入院。いま委員がおっしゃられましたから、そのまま、(中等症)1であったとしてもそうです! 1ならば必ず退院というわけではありません! それは昨日も申し上げました! 医師会のほうに! ちょっと厚生労働省のほうからどうお聞きをいただいているのかわかりませんが、中等症1でも、当然重症化する方々、リスクの高い方々は当然これは入院であります! 当たり前です!」
 山井議員は「本当に肺炎症状があったら入院できるのか?」と確認したのに、田村厚労相の答弁は「肺炎症状があって苦しい、息ができない、重症化されるって方」「重症化する方々、リスクの高い方々」というもの。これでは肺炎があっても「重症化する」と判断されなければ入院されないのではないかと疑問を持たざるを得ない。
 だいたい、田村厚労相は軽々しく「重症化する方々」などと答弁したが、重症化するかどうかは簡単に判断できないと医師や専門家からは指摘が続出している。実際、きょうの国会でも、在宅医の経験がある医師の立憲・中島克仁衆院議員が「最初は画像診断で肺炎所見がなくても、数日間40度の発熱があって、中等度なのか軽症のままなのか(在宅医は)判断できませんよ?」と指摘。また、4日付のNHKニュースでも、自宅療養していた40代男性のケースを紹介。この男性は自宅療養中に高熱が出て病院に搬送されたものの、酸素飽和度が低くなかったために自宅へ戻されたが、その後呼吸が苦しくなって再び病院に搬送。そのときはすでに酸素投与が必要な「中等症2」の状態になっていたという。
 この例ひとつをとっても、「中等症1」の患者を自宅に放置することは非常に危険な行為であり、いますぐ政府は方針を撤回し、他国がやってきたように大規模な療養所の設置やホテルの確保を急ぐべきだ。ところが、そうした意見を田村厚労相は「デルタ株は大変な脅威」などという周回遅れの主張でシャットアウトしたのである。
 いや、それどころか、この医療崩壊状態を食い止めるには新規感染者数を減らす必要があるのは言うまでもないが、政府は入院すべき患者を自宅に放置しようという方針を打ち出しながら、新規感染者数を減らすための方針については、せいぜい「夏の帰省や旅行を控えて」と言うだけ。これはあまりにもアンバランスではないか。
 本サイトでは繰り返し指摘してきたが、菅政権がいま打ち出すべきは、人流抑制に絶大なアナウンス効果が期待できる五輪の即刻中止だ。それによって、なんなら選手村を療養所に転用することもできる。だが、それもせず、国民の命を危険に晒す政策を先に決めるなど言語道断。田村厚労相は「(いまは)平時ではない」と答弁していたが、平時ではない緊急事態に五輪を開催しているなどというのはありえない。菅首相は「自宅放置」方針の撤回と五輪の中止をいますぐ打ち出すべきである。(編集部)