2021年8月23日月曜日

横浜市長選で 小此木氏が大敗 官邸に衝撃

 22日に投開票された横浜市長選は、立憲・共産らが推した山中竹春氏が当選し、菅首相など官邸が応援した小此木八郎氏は大差をつけられて落選しました。

 横浜市長選開票結果 (立候補者数 8 有権者数 3,103,678 投票率 49.05%
   山中 竹春  506,392 (33.6%)
   小此木八郎  325,947 (21.6%)
   林  文子  196,926 (13.1%)
   田中 康夫  194,713 (12.9%)  以下省略

 当初は圧勝すると思われていた小此木氏でしたが、午後8時に投票が締め切られると即座に「山中氏に当確が出る」という衝撃の幕切れとなりました。
 これで「もう菅政権はだめなんじゃないかというムードが一気に強まりました。特に若手の議員からは「総選挙は菅氏で戦えないという声が一層高まると思われます。
 それなのに依然として菅首相はなぜ小此木氏で勝てなかったのか、「自分が動いたのになぜだ納得できずにるということです。そう聞かれても答えようがありません。そこには「自分が動いたから」という選択肢がないからです。コロナの感染拡大が止まらないことも大きく影響したのですが、それが自分のせいだという意識もないことでしょう。
 周囲で首相の過労が囁かれたとき、官邸関係者は「それでも首相を辞めたいなどとは一切漏らさず、総裁選も勝ち抜けると思っているのが、菅首相のメンタルの偉大さ。そこだけは感嘆します」と述べたということです。「メンタルの偉大さ」辺りには皮肉も感じられますが、何ごとも自分に都合よく考える人なので、総裁選も勝ち抜けると思っているのは事実でしょう。実際、派閥の幹部クラスからは総裁交代の声はまだ上がっていません。
 もともと緊急事態宣言の終了予定日を9月12日にしたのは、そうすれば17日までの5日間に解散総選挙に打って出られる可能性があるからです。
 しかし12日にはとてもコロナは収束しません。ではどうするのか。
 官邸関係者は「総裁選前に解散を打つことは難しい。しかし法律で定められた任期満了選挙なら可能。公選法31条の規定では『衆議院議員の任期満了に因る総選挙は、議員の任期が終る日の前30日以内に行う』とあるので、いまの衆院議員の任期は1021日までだから、922日以降なら任期満了選挙は設定可能。任期満了選挙なら、国会を開く必要もないし、総選挙で過半数を維持すれば、総裁選は無投票再選でしょう」と語ります。恐るべき執念です。
 AERAdot. とロイターの記事を紹介します。
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横浜市長選で衝撃の大敗
菅首相が総裁選前に電撃解散も「勝ち抜くと驚嘆のメンタル」
                      今西憲之 AERA dot. 2021/08/22
「やばい。午後8時に野党候補に当確が出るなんて衝撃だ…。出口調査ですでに野党に10ポイント以上、負けていた。菅首相は最後まで望みがあると言い続けていただけに今頃、真っ青だろうな」
 こう力なく語るのは、自民党幹部だ。22日投開票された横浜市長選は、立憲民主党などが推薦する元大学教授、山中竹春氏が自民党の推す前国家公安委員長、小此木八郎氏を破り、勝利を確実にした。
 菅義偉首相の側近で、閣僚を辞して横浜市長選にのぞみ、圧勝と思われていた小此木氏。午後8時に投票が締め切られるとすぐ、山中氏に当確が出る衝撃の幕切れとなった。
横浜市長選の大敗でもう菅政権はだめなんじゃないか、というムードが一気に強まりました。菅首相や政権幹部のイライラはピークに達し、周囲もピリピリして官邸の空気は澱んでいます。いまだに菅首相はなぜ、小此木氏で勝てなかったのか、自分が動いたのになぜだ、と敗因を理解できずにいます。首をかしげていました」(官邸関係者)
 菅首相は小此木氏の父親で建設大臣などを歴任した彦三郎氏の秘書を経て、横浜市議、衆院議員となり、神奈川2区(横浜市内)が地盤だ。小此木家は八郎氏の祖父の時代から横浜を地盤に衆院議員を世襲してきた名門なだけに大敗の打撃は計り知れない。前出の自民党幹部も動揺を隠せず、こう言う。
「小此木氏が出馬表明した時は、誰もが圧勝と思っていた。それがこのザマです。菅首相の地元でもある横浜市長選を落としてしまった。コロナの感染拡大が止まらず、対策が後手にまわる菅政権にNOが突きつけられた選挙だったと思いますね」

 選挙戦の最終日。横浜市内を演説していた小此木氏の周囲には聴衆がまばらで閑散としていた。自民党の横浜市議はこう振り返る。
「空気に向かって演説しているようでした。動員はかけたが、支援者が反応しなかった。閣僚まで務めた小此木氏にとって、屈辱的な光景でした。菅首相のコロナ対応に対する市民の不信感がそのまま、現れたなと思いました」
 横浜市長選の争点は、いつの間にかカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致から新型コロナウイルス対策になっていったという。
「小此木氏がコロナ対策を訴える度に『感染者を減らせ』とヤジが飛んだ。有権者からの冷たい視線を感じました」(同前)

 横浜市長選の大敗で「菅おろし」も始まりつつある。9月17日に告示され、同29日に予定される自民党総裁選挙。安倍晋三前首相が率いる清和会(細田派)所属の国会議員はこう語る。
「横浜市長選で市民、国民が菅首相に対し、ダメ出しをしたということ。月曜日から政局が激化し、清和会など大派閥の総裁候補選びが本格化する。解散総選挙も間近ですから、選挙に勝てる人が総裁候補となるでしょう。うちでは政調会長の下村博文さんが名乗りを上げているけど、安倍前首相の3度目の登板もありうる。派閥を超えて人気が高いのは、麻生派の河野太郎ワクチン担当相ですね」
 安倍前首相に近い高市早苗衆院議員も立候補の意向を示している。だが、菅首相も黙ってはいないはずだという。
 新型コロナウイルスの感染拡大で9月12日まで延長された東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪などの緊急事態宣言は当初、8月31日までだった。
延長幅が12日間というのは、なんとも中途半端な感があるが、そこに「駆け引き」があるという。
「自民党総裁選のスタートが9月17日。同12日まで緊急事態宣言ですから、5日間の空白が生まれる。菅首相がここで電撃的に解散総選挙に打って出るという話が周辺から出ています。もともと解散の余地を残すために緊急事態宣言を12日まで延長した訳です…。自公連立与党で過半数を取れば、国民から信任された、と総裁選に出て続投するというシナリオを考えているようだ」(前出の自民党幹部)
 だが、新型コロナウイルス対策の相次ぐ失敗で新規感染者、重症者の増加が止まらず、不人気の菅首相が解散総選挙に踏み切れば、自民党が大敗する危険性もある。
 また、東京地検特捜部が捜査を進めているテクノシステム社の詐欺事件に関連した公明党の遠山清彦元財務副大臣の「口利き疑惑」という爆弾もある。公明党の国会議員はこう語る。
「東京地検特捜部の捜査のメスが入り、遠山氏の”爆弾”がいつ炸裂するのか気が気でないです。捜査の影響で解散総選挙になれば、うちは厳しい選挙となる。自民党の選挙まで手が回りませんよ」
「菅おろし」が加速する中、菅首相は21日午前、東京・代々木のJR東京総合病院を受診した。演説原稿の読み飛ばしや読み間違いなどの失敗も続き、体調面を心配する声も出ている。
「人間ドックのフォローで受診自体は、大したものでは全くないのですが、ずっと休んでないので疲労が蓄積しているのは周囲から見ても明らかです。それでも気力の衰えなどで、辞めたいなどとは一切、漏らさず、総裁選も勝ち抜けると思っているのが、菅首相のメンタルの偉大さ。そこだけは感嘆しますね」(前出の官邸関係者)
 菅首相の次の一手が注目される。(今西憲之 AERAdot. 編集部)


アングル:菅首相に一段の逆風、自民党内に強まる衆院選への不安
                            ロイター 2021/8/22
[東京 22日 ロイター] 横浜市長選で菅義偉首相の推す候補が大敗し、菅氏が狙っていた衆院選先行、総裁選後回しのシナリオは一段と厳しさを増した。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、内閣支持率の反転が期待できない中、自民党内で総選挙前の総裁交代を求める声が高まるのは必至とみられる。

<当選3回以下の若手>
NHKなどによると、任期満了に伴う22日の横浜市長選は立憲民主党などが推薦する横浜市立大元教授の山中竹春氏が当選を確実にし、菅氏が支援した元国家公安委員長の小此木八郎氏は敗れた。自民党は24日午前に役員会を開き、菅首相はこの場で市長選を総括する公算が大きい。今後の政権運営に絡んだ発言をする可能性もあり、与党内では注目されている
今年に入り支持率の低下傾向が止まらない菅内閣は、ワクチン接種の進展と東京五輪での日本選手活躍によるムード好転で政権浮揚を図る狙いだった。しかし、五輪開幕と軌を一にしてコロナの感染が急速に拡大、8月の世論調査で内閣支持率は30%を割り、軒並み過去最低を更新した。 
この秋に衆議院選挙を控え、菅首相が顔では戦えないと懸念する自民党内では、地盤の弱い若手を中心に総裁選の先行実施論が広がった。一方、菅氏は菅首相はパラリンピック閉幕直後の9月にも衆院の解散に踏み切り、総裁選は衆院後に先送りし無投票再選を狙う算段だった。
横浜市長選挙で菅氏が強力に支援した元衆院議員・小此木が大敗したことで、首相への逆風は一段と強まりそうだ。政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「総選挙は菅氏で戦えないという声が高まるということが間違いない」と話す。
自民党の中堅幹部は選挙結果が判明する前の22日午後、小此木氏敗北の確率が高いとの情報を踏まえ、「(自身の)地元での自民党に対する見方は大変厳しく、菅首相の体制のままではなかなか厳しい」と総裁選の早期実施を求めた。
特に、安倍晋三前首相のもとでしか選挙を経験したことがない当選3回以下の議員の間で不安が高まっている。「自分の力というより安倍前首相の顔で勝っており、自分の選挙がものすごく不安」と、伊藤氏は言う。総裁選が先行して実施された場合、派閥で菅氏に投票することが決まったとしても、「素直に従うか分からない」と指摘する。 
選挙アナリストの衆院選予測では、自民の大幅議席減で自公が過半数ギリギリの水準に落ち込む可能性がゼロとは言えない情勢になりつつある。選挙プランナーの松田馨氏は週刊朝日8月20─27日号で、自民が63議席減の213と単独過半数(233)割れを予想。公明の議席予測(26)と併せても239と試算している
総裁選には、すでに高市早苗前総務相と下村博文政調会長が出馬する意向を明らかにしている。岸田文雄前政調会長も19日の派閥会合で「総裁選の日程が確定したら、私自身がどう関わるかをしっかり考えて行きたい」と語った。

<二階氏や安倍氏の動き>
菅氏の続投を支持してきた自民党の二階俊博幹事長、安倍前首相、麻生太郎財務相らの姿勢に今のところ目立った変化はない。自民党内でも幹部の間では「嵐の中で船長を変えるのはとんでもない」、「首相を変えても選挙基盤が弱い議員の当落は変わらない」と静観する声が聞かれる。
自民党総裁任期は9月30日、衆議院の任期は10月21日。8月24日の役員会の後、26日には党の選挙管理委員会が開かれ総裁選日程が正式決定される。
昨年9月の総裁選で菅氏に敗れた石破茂元幹事長は20日、自身のブログで「感染急拡大の最中に、(総裁選に)名乗りをあげると表明することには違和感を覚える」と出馬に消極的な姿勢を示した。小泉進次郎環境相も20日の記者会見で「もう一度、闘う首相の良さを多くの方に感じていただけるような機会にしてほしい」と述べ、首相再選支持を明言した。
              (竹本能文 取材協力:リンダ・シーグ 編集:久保信博)