共産党国会議員団文科部会が、「デルタ株による事態急変 学校の夏休み明けにあたっての緊急提案」を出しました。
デルタ株はこれまでの新型コロナと様相を大きく異にしています。これまで感染しにくいとされてきた子どもへの感染が顕著に増え、その中心は高校生ですが、小中学生の学習塾や保育園、学童保育でのクラスターも増えています。また子どもからおとなに伝播することも起きているので、学校や保育園などが感染源になることの怖れは十分にあります。
しかし、昨年春に唐突に実施されたような一律の休校や休園は、余りにも母子家庭等への負担が大き過ぎたのに対して補償は皆無に近かったとして、非常にきめの細かい対策が必要だとしています。
提案の骨子は次の通りです。
(1)登校見合わせの選択・分散登校・オンライン授業などを柔軟に組み合わせて対応する
(2)教室でのエアロゾル感染防止へ、短時間での全換気と不織布マスクを重視する
(3)学校でのクラスター対策と広範な検査
(4)学習指導要領を弾力化し、「災害時」にふさわしい柔軟な教育を保障する
(5)コロナについての学びとコミュニケーションを重視する
以下に全文を紹介します。
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デルタ株による事態急変 学校の夏休み明けにあたっての緊急提案
2021年8月25日
日本共産党国会議員団文部科学部会
しんぶん赤旗 2021年8月26日
日本共産党国会議員団文部科学部会が25日の記者会見で発表した「デルタ株による事態急変 学校の夏休み明けにあたっての緊急提案」の全文は次のとおりです。
これまでの新型コロナウイルスとレベルの違うデルタ株は、子どもの感染をめぐる状況も大きく変えました。
第一に、これまで感染しにくいとされてきた子どもへの感染が顕著に増えていることです。10代以下の新規陽性者が7月半ばから4週間で6倍になったことは軽視できません。その中心は高校生ですが、小中学生の学習塾や保育園、学童保育でのクラスターも増えています。
第二に、感染は“おとなから子どもに伝播(でんぱ)する”とされてきましたが、“子どもからおとなに伝播する”という新たなパターンが少数ですが報告されていることです。
第三に、政府の後手の対策と五輪の強行により、現在、「全国各地が災害レベルの状況」(厚労省の専門家会合)となっていることです。しかも保護者世代はワクチン接種が間に合っていないという問題を抱えています。全員が自宅療養となった家族で40代の母親が亡くなった痛ましい出来事は、全国の子育て世代にとって人ごとではありません。
こうした状況で全国の学校が夏休み明けを迎えようとしています。「このまま学校を開けて大丈夫か」「子どもが感染し親が感染することも心配」などの不安が広がっていることは当然です。緊急事態宣言の地域を主に想定し、デルタ株のもとでの学校の感染対策について緊急の提案を行います。
(1)登校見合わせの選択・分散登校・オンライン授業などを柔軟に組み合わせて対応する
――緊急事態宣言の出ている地域などの学校は、デルタ株の感染力の強さを考慮し、学校の状況に応じ、登校見合わせの選択・分散登校・オンライン授業などを柔軟に組み合わせて対応すべきです。文部科学省は高校にかぎって分散登校等を通知しましたが、小中学校などでも感染状況に応じて分散登校がありえることを明確にすべきです。同時に分散登校は、保護者の減収や失職、医療従事者が出勤できなくなるなどのデメリットがあります。そうしたしわ寄せが起きないよう、必要な子どもが朝から学校で学べるような対応を徹底することを求めます。
――少なくない保護者・子どもが、感染対策のため登校を見合わせる選択を検討しています。ところが国の通知は、「同居家族に高齢者や基礎疾患がある者がいる」場合には欠席扱いしないなど登校見合わせの対象を狭くしています。広く認めるように転換し、登校を見合わせる子どもたちの学びや成長への支援を明確に位置付けることを求めます。
――長期の一斉休校は、保護者の失職などの生活苦、子どもたちの学び成長する権利への制約など少なくない弊害をもたらします。いま行うべきことではありません。なお感染状祝に応じ、夏休みを短くしていた学校が以前のように8月いっぱいを夏休みとすることはありうることです。
(2)教室でのエアロゾル感染防止へ、短時間での全換気と不織布マスクを重視する
――教室で子どもたちが一定時間集まって会話し、給食をとる学校では、エアロゾル感染(空気感染)に特に注意する必要があります。デルタ株は従来株の半分の時間で感染すると言われています(富岳のシミュレーション)。短時間で空気を入れ替える常時換気(4カ所開けなど)と、教室で教職員も生徒もウレタンでなく不織布のマスクをつけることが重視されます(つけることが困難な子どもは除く)。国の予算で必要な子どもには不織布マスクを支給すべきです。また、換気の程度を示す二酸化炭素濃度の基準のあり方の検討を求めます。
――学童保育が3密とならないよう、学校などより広い場所を保障するなど柔軟な対応を求めます。
(3)学校でのクラスター対策と広範な検査
●濃厚接触者をせばめない、広めのPCR検査
――夏休み前は、陽性者がでても「給食は15分以内に食べている」として一人も検査をしないケースもありました。濃厚接触者を狭くみず、実態に応じ、学級・学年・全体など広めのPCR検査を行政検査として行うよう求めます。
●広範な子ども・教職員に頻回に行う簡易検査
――コロナ感染は半数が無症状感染者からであり、無症状感染者の発見と保護が感染対策に欠かせません。このことを政府が無視してきたことが、事態の悪化を招いた一因です。
――ドイツでは児童生徒に週2回、迅速抗原検査をしています。感染状況の深刻な地域で教職員・子どもに週2回、国の予算で、自宅で行える迅速検査を行うことを求めます。
――国が高校等に配布した抗原簡易キットは症状のある人への緊急のものですが、学校現場では採取に必要な場所も防具もないなどの問題が噴出しています。無理なく活用できる対応策を具体的に示すことを求めます。
(4)学習指導要領を弾力化し、「災害時」にふさわしい柔軟な教育を保障する
――今後の感染状況は予断を許さず、一定の臨時休校などもありえます。全国一律休校の後のように例年通りの授業時間の確保を基本とすれば、詰め込みとなり子どもたちがストレスをためるだけです。学習指導要領を弾力化し、限られた時間の中で、重要な核となる学習内容をじっくり学び(学習内容の精選)、子どもの成長に必要な行事も行えるようにすることを、「災害時」の基本とすべきです。入学試験がこうした弾力化の妨げとならないよう、出題範囲を実際の学習に合わせることも必要です。
(5)コロナについての学びとコミュニケーションを重視する
――子どもたちは長い間我慢をしいられ、さまざまな不満を募らせています。新型コロナウイルスと感染のしくみを学び、受け身でなく自分の頭で考え納得して行動変容し、「部活動もこれなら可能では」といった自分たちの学校生活の前向きな話し合いを行うことこそ、この時期に欠かせない学びです。そうした学びの保障を求めます。
――教職員が世界と日本の研究成果などを学び、感染対策ふくめ討議できるゆとりを保障することを求めます。このことは、子どもや保護者がウイルスを正しく恐れることを助けることにもなります。