横浜市の副市長を務める平原敏英氏は、横浜市役所の生え抜きの職員で課長時代に菅氏に見出され、以後“菅人事”により2016年4月に副市長に昇りつめたとされていますが、カジノIR構想への参入を狙う業者から、2016年当時、度々高級料亭で接待を受けていたことがノンフィクション作家の森功氏への取材で分かりました。
森氏は、業者側が後に参入計画を巡ってトラブルになり民事調停を行った際の資料を入手したところ、接待の詳細な記録や費用を負担した際の領収書、その場で副市長から渡されたペーパーなどが含まれていて、それらをもとに取材した結果、容積率などに関する公表前の機密情報が漏洩されていた疑いが浮上しました。接待額は業者から判明しているだけで計4回、総額61万円に上ります。
その一部が25日16時配信の「文春オンライン」に載りました(全文は有料)。
26日(木)発売の「週刊文春」では横浜市長選敗北を機に噴き出す「政権の闇」を合計8ページにわたって詳報しているということです。
文春オンラインの記事を紹介します。
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菅首相“側近” 横浜市副市長がカジノIR業者から高級料亭で61万円接待
文春オンライン 2021/08/25
「週刊文春」編集部
横浜市の副市長を務める平原敏英氏(62)が、カジノIR構想への参入を狙う業者から、2016年当時、度々高級料亭で接待を受けていたことが森功氏(ノンフィクション作家)の取材で分かった。森氏は業者側が後に参入計画を巡ってトラブルになり民事調停を行った際の資料を入手。そこには接待の詳細な記録や、費用を負担した際の領収書、その場で副市長から渡されたペーパーなどが含まれていた。それらをもとに取材した結果、容積率などに関する公表前の機密情報が漏洩されていた疑いが浮上した。
業者から判明しているだけで計4回、総額61万円の接待を受けていた平原氏は、当時、林文子市長の下で、カジノIR構想を取り仕切っていた。4人いる副市長の筆頭格であり、当時官房長官だった菅義偉首相とも携帯電話で直に連絡を取り合うホットラインを持つ人物だ。横浜市のプロパー(⇒生え抜き)職員で一貫して都市整備畑を歩み、課長時代に菅氏に見出され、“菅人事”により2016年4月に副市長に昇りつめたとされる。
業者側資料には2016年の春から秋にかけて少なくとも4回、高級料亭で平原氏を接待していたことが明記されている。
2016年3月2日、 計5人、 170969円
2016年6月24日、 計6名、 244252円
2016年9月6日、 計4名、 90293円
2016年10月24日、計4名、 104895円
特に6月の接待については、機密情報の漏洩が強く疑われる。業者側資料によると、ホテル計画に対する容積率の緩和措置によって、容積率が400%から1.5倍の600%まで緩和可能となることや、高さ制限60mが100mに緩和予定であることが伝えられたという。
平原氏を直撃すると、当初は「ぜんぜん覚えてない。会ったかもしれないけど」などと語っていたが、料亭の具体名をあげ、何度も接待を受けていたことをぶつけると表情を一変させた。
飲食代は「それなりの金を払っています」
「あ、そう、4回会っているの? ぜんぜん記憶ないな」
――そこで容積率の規制緩和の話までしている。
「俺が? そんなこと言ってないよー。だって都市計画ってそう簡単に変えられるものじゃないよ。横浜市の制度を紹介することはあっても、そこで容積率を緩和しますから、なんて軽々しく約束できるわけないじゃん」
――飲食代は払ったのか。
「当然私もそれなりの金を払っています」
平原氏と業者側の橋渡しをしたキーマンが2人いる。一人は在日韓国人実業家の河本善鎬氏。河本氏は横浜市内でパチンコ店を経営して財を成し、菅氏のタニマチとしてこれまで幾度もその名が取り沙汰されてきた。菅氏が代表を務める自民党神奈川県第二選挙区支部の事務所費問題が取り沙汰された2007年には、菅氏が所有するそのビルを買い上げてオーナーとなったことでも有名だ。過去には違法献金疑惑などを報じられたこともある。
もう一人は、元公明党横浜市議で菅氏が議員秘書時代から親交がある。
菅氏と関係の深いこの2人の橋渡しによって、業者側は何度も副市長の平原氏を接待し、機密情報の入手を企図していた。
業者側幹部は当初、「話せないんですよ」と言いながらも、しぶしぶ「(料亭で)容積率の説明を確かに受けました」などと事実関係を認めた。河本氏は取材に答えなかった。なお、平原氏は会費として「2万円くらい」を元公明党市議に渡したと取材に語ったが、業者側は受け取っていない。ちなみに、この元市議は昨夏、急逝している。
元検事の弁護士、落合洋司氏が解説する。
「カジノIR計画に職務権限のある副市長が関連業者から接待という賄賂を受けていれば、単純収賄に該当しうる。さらに機密情報を漏えいしたのが公務員としての不正行為と判断されれば、より罪が重い加重収賄になる可能性があります。加重収賄の時効は最長で10年なので、このケースは時効にもかからない。捜査の対象になりえます」
8月25日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」および、8月26日(木)発売の「週刊文春」では、接待や機密情報漏えいの詳細、菅首相と河本氏の深い関係、菅首相の最側近で首相補佐官の和泉洋人氏もこの業者側幹部と会っていたことなど、横浜市長選敗北を機に噴き出す「政権の闇」を合計8ページにわたって詳報している。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年9月2日号)