2021年8月22日日曜日

東京の新規感染者 1万人超説も それでも 野戦病院は必要ないと

 別掲の記事でも明らかなように、東京都ではいまや新型コロナに罹っても、入院は愚か医師の診察も受けることが出来ない状態です。これを医療崩壊と呼びます。

 東京都内では21日、新たに5074人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、初めて4日連続で5000人を超えました。入院患者がはじめて3900人を超え、過去最多となったほか、自宅で療養している人も4日連続で最多を更新し、自宅待機者と併せて4万人近くに達しています
 しかしこれらの数字にどの程度の信憑性があるのかに就ては大いに疑問です。それはコロナ新規陽性者数対PCR検査数の比(陽性率)が異常に高いことから推定されていたことで、ついに専門家から正式に指摘されました。
 20日の東京都モニタリング会議で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長が「検査が必要な人に迅速に対応できていない恐れがあり、把握されていない多数の感染者が存在する可能性がある」と述べました
 異常な陽性率から見て、現在の新規感染者数は1万人を超えていると考えるのはむしろ普通の見方と思われます。こんな風に意図的に数字をいじっていては実態が把握できないし、実態を誤魔化して必要な対策を施そうとしなければ、このさき犠牲者は加速度的に増えることになります。
 何よりも不思議なのはこの惨状の中で、識者が指摘する臨時病床施設に取り組む意思を都が全く示さないことです。正常な思考とはとても思えません。その一方で酸素ステーションには取り組むとしていますが、その数は僅かに130床とか300床とかで、これではとても4万人の在宅療養者には対応できません。そもそも呼吸困難に陥っている1人暮らしの人間がどうやってそこにアクセスできるというのでしょうか。
 見るべき施策を何も打たないなかで、パラリンピックへの学童動員にだけは拘るというのも大いに異常です。
 LITERAが取り上げました。
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東京の感染者、実は1万人超説も…小池都知事はパラ、子ども動員を強行! 野戦病院も「必要なし」と拒否し候補地をパラのイベント会場に
                        野尻民夫 LITERA 2021.08.21
 東京に多数の“隠れ感染者”がいることが、内部から指摘された。
 昨日20日、東京では新たに5405人の感染者が確認されたと発表されたが、その一方、東京都モニタリング会議で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長が「検査が必要な人に迅速に対応できていない恐れがあり、把握されていない多数の感染者が存在する可能性がある」と述べたのだ。
 検査が足りないために数字として表れないだけで、東京の新規感染者はもっといるのではないかというのは以前から指摘されていたが、それにお墨付きが与えられてしまったかたちだ。実際、現在の新規感染者数は1万人を超えているとの見方もある
 ところが、それでもこの国では、国民の命の安全を守ることもそっちのけで24日からパラリンピックを開催しようというのだ。
 パラをめぐっては、組織委員会が競技会場で重度の怪我人や病人が出たときに救急搬送の受け入れ協力を墨田区の都立墨東病院に要請していたが、病院側は「救命救急センターは本来、突発、不測の重症患者に備えるものであり、予定された行事のバックアップをするものではない」とし、コロナ対応を優先させるために要請を断っていたことが判明。あまりも当然の判断であり、さらに言えば、このような厳しい医療体制状況のなかでパラを開催することは選手たちをも危険に晒すことになるだろう。
 だが、それでも菅政権も組織委も東京都も、パラを中止する気がないらしい。いや、それどころか、小池百合子都知事はパラの開催、そしてパラ観戦への子ども動員に対し、尋常ではない執念を日々強めている
 たとえば、昨日の会見で「最大の危機を迎えています。いま以上に重要な時期はないのでは」などと言いながら、18日時点で約13万2000人もの都内の子どもたちをパラに動員させようとする「学校連携観戦プログラム」については「極めて教育的価値が高い」として実施する方針を崩さなかった。

修学旅行の延期を要請し、パラリンピックの子ども動員を強行!「理解しろ」と開き直る小池知事
 小池都知事といえば、19日にも「都立学校においても都県境を越える修学旅行等については中止または延期」と打ち出し、ネット上では「バッハ会長は再来日するのに修学旅行はダメって…ちゃんと説明してほしい」「一生に一回しかないとの理由で東京五輪パラを開催するなら、一生に一回しかない修学旅行も実施しないと矛盾します」などという批判が殺到。坂上忍も『バイキングMORE』(フジテレビ)で「何やってんの、この人」「このアナウンスの仕方だと矛盾を感じる人は出てきちゃう」と苦言を呈した。
 さらに、パラへの子ども動員についても「いますぐ中止すべき」という声があがっており、東京都教育委員会の臨時会でも出席した委員4人全員が反対。政府分科会の尾身茂会長も国会の閉会中審査で「状況はかなり悪いので、そういうなかで観客を入れることはどういうことか考えていただければ当然の結論になると思う」と答弁した。しかし、この指摘に対して小池都知事は「尾身会長からはオリンピックの際も同様のご指摘もいただいていたかと思いますが、安全・安心な大会としてやり切った」などと突っぱねた。
「安全・安心の大会をやり切った」って、五輪関係者の感染者は547人、パラ関係者もすでに101人の感染が確認されている上、五輪開催によってここまで感染が拡大した結果、東京は医療を受けられないまま死亡する患者が続出している状況に追い込まれたのだ。にもかかわらず、小池都知事はいまだに「安全・安心の大会をやり切った」と言い張り、今度はパラを実施して子どもを動員しようと言うのである
 だが、小池都知事が恐ろしいのは、パラ開催や子ども動員に不安の声があがりつづけているというのに、その声に耳を傾けるどころか、むしろより強気になっていっていることだ。
 実際、昨日の会見では、記者が子どもをパラに動員することに言及した上で、「制御不能」状況のなかでのパラ開催は都民の理解を得られるのかと問うたのだが、すると、小池都知事はこう述べたのだ。
「はい。ぜひ理解していただきたいと思います」
 自ら「最大の危機」と呼ぶこの状況下で、平然と「パラ開催、子ども動員を理解しろ」と都民に迫る──。こうして約13万人もの子どもたちがこうした小池都知事の方針によって危険に晒されようとしているのだ。その言動は「サイコパス」と言わざるを得ないだろう。

東京都は1週間で救急要請の6割、959人が搬送されず! 小池都知事の「泥縄対応策」では全然足りない
 しかも、学校再開についても夏休みを延長する自治体も出てきているというのに、小池都知事は「まず、家庭そのもので健康観察をしっかりおこなってください」と言い、学校に対しては「児童・生徒の感染状況に応じてオンラインを活用した分散登校、時差通学、短縮授業などの取り組みをお願いしたい」などとして夏休みの延長を求めることはしなかった。
 いまは子どもから親に感染が広がっていることが指摘され、厚労省によれば8月17日までの1週間のあいだにコロナに感染した子どもの数は10歳未満が7441人、10代が1万4734人、あわせて2万2175人にものぼっている。小池都知事はテレワークの実施や外出の自粛を呼びかけているが、親がそれを実行しても、子どもが学校や行事で感染し、家庭に広げる可能性が高いのだ。にもかかわらず、この異常な感染状況下で学校を再開させようとするのは、パラへの子ども動員ができなくなることを阻止するためではないか。
 このような非常事態を招きながら、都民の命を守るという責務を完全に放棄して、パラ開催と子ども動員によって積極的に火に油を注ごうとする──。しかも、小池都知事は肝心の医療提供体制の抜本的見直しさえおこなおうとしない。
 たとえば、19日に東京新聞は、8月2日〜8日のあいだに都内ではコロナで「自宅療養」中に症状が悪化し救急搬送を要請した患者の数が1668人にのぼり、そのうち6割弱の959人が搬送されなかったと報道したが、この事態を受けて、小池都知事は「救急隊の判断で患者を運び入れられる施設をつくって対応する」と発言した。
 だが、今月14日から運用を開始した「受け入れ先が見つからない救急隊からの要請に応えるための病床」の確保数は、都立・公社の11の病院の36床のみ。菅義偉首相と揃って切り札であるかのように強調する「酸素ステーション」も23日から運用がはじまる予定だが、その数は130床今後400床まで増やすというが、1週間で959人もの患者が搬送されなかった事実を考えれば、焼け石に水だ。当然、救急隊員が搬送できない状態は引きつづき起こることになりそうだが、小池都知事はそれも「救急隊の判断」などと責任を押し付ける気なのだろうか。

野戦病院の設置求める声に東京都は「医療資源があるのに必要ない。検討する予定もない」
 さらに、都は今月中に中等症の患者を対象にした病床を80床整備するとしているが、当然ながらこれも80床ではまったく追いつかない状況にある。そんななか、多くの人がその必要性を訴えているのが“野戦病院”のような臨時の大規模医療施設だ。
 その意見はネット上だけではなく、日本医師会の中川俊男会長も18日に「民間が所有するのも含めて大規模イベント会場、体育館、ドーム型の運動施設などを、改正特措法に基づく臨時の医療施設として集中的に医療を提供する場所を確保することを提案します」と発言。このとき中川会長は利用施設の一例として、東京・有明にある東京ビッグサイトを挙げた。
 福井県は体育館に100床を設けて臨時施設として活用する方針だが、〈施設内の全体が見渡せるため、宿泊療養施設よりも少ない医療従事者で対応が可能〉(読売新聞14日付)だという。自宅死を即急に食い止める必要に迫られている東京都こそ、この大規模医療施設の設置を真っ先に進めるべきだが、しかし、都は検討さえしていないというのだ。
 実際、毎日新聞の取材に対し、東京都福祉保健局は「今ある医療資源を最大限使うことがまず先決で、(臨時に病床を増やすことに)取り組む必要はないと考えている。海外の事例を収集したことはあるが、具体的に検討したことはない」と回答(14日付)。日刊ゲンダイの取材に対しても、都の感染症対策部が「医療資源があるのに、わざわざ、医療的に環境の悪い体育館に臨時病床をつくる必要性はない。検討する予定もありません」と答えている(19日付)。
 この状況下で「医療資源がある」などとよく言い張れたものだが、これはようするに、パラリンピックを開催している都市に野戦病院があるという異常な状況を見せたくないだけではないのか。

野戦病院の候補地「東京ビッグサイト」はパラリンピックのイベントに使用
 野戦病院については、いまごろになって田村憲久厚労相が各都道府県に整備を要請する考えを示したが、都の頑なな姿勢を見れば、これが都で実行されるのかは疑わしい。さらに、野戦病院としての活用例として名前が挙げられている東京ビッグサイトについては、東京都も政府も使用させるはずがない。
 というのも、東京ビッグサイトは現在、東京五輪から引きつづいてパラリンピックでも、メディアの活動・取材拠点である「国際放送センター」「メインプレスセンター」として使用中。さらに、東京ビッグサイトの青海展示棟内と青海地区セントラル広場西側は、パラ期間中、来場者のスポーツ体験やスポンサー企業の出展、オフィシャルショップなどのイベント会場として使用される予定だからだ。
 専門家からも「すぐに野戦病院を設けるべき」という声があがる事態なのに、その候補地はパラのために使用される──。しかも、新規感染者を抑え込まなくてはならないときに、スポンサー企業のPRのために1日計1万人を入れる大規模イベントまで開催しようとは、「狂気」としか言いようがない。
 国会の閉会中審査での丸川珠代・五輪担当相の答弁によれば、パラ開催で必要な医師はピーク時に約120人、看護師は約150人を想定しているという。この医療従事者を投入して東京ビッグサイトに野戦病院をつくれば、一体どれだけ都民の安心につながるだろう。
 しかし、この期に及んでもパラ開催と13万人もの子ども動員を「理解しろ」と要求し、感染拡大も医療崩壊も他人事のように涼しい顔をしている小池都知事には、都民の不安はまったく届かない。本当の意味で「非常事態」なのは、この冷酷なモンスターがトップにいるという事実のほうだろう。(野尻民夫)