2021年10月3日日曜日

03- スクープ “官邸案件”ODA不正疑惑で 関係者がJICAに告発

 外務省は「2020年版開発協力白書」で、「日本のODAは、国民の税金を原資としている」「ODA事業に関連した不正行為は」「ODAに対する国民の信頼を損なうものであり絶対に許されない」と述べていますが、その実態はどうなのでしょうか。

 しんぶん赤旗日曜版10月3日号に「スクープ“官邸案件”ODA不正疑惑 安倍前政権が進めたフィリピンの政府開発援助 ~ 」とする記事が載りました。
 これは5月に内部告発があった事案で、マニラの都市鉄道「MRT3号線」の改修・保守事業に関するものです。ODA事業の本体は381億円の借款契約なのすが、関連して施工監理の業務でコンサルタント会社らが共同企業体を組み、約15億円で契約した件に関わるものです。
 告発事案の確認は帳簿等で容易にわかる筈なのですが、5か月以上かかっているのに何の進展もないということです。関係企業が言を左右にして調査をサボり、隠蔽しようとしているものと思われます。
 この件を含めて安倍元首相は在任中に海外向けに総額60兆円(ODA借款を含む)を投じたとされています。元々こうした海外物件に関与した政治家には5%のバックマージンがあるというのがその世界の常識と言われており(国内の公共事業でも似たようなことが行われているとも)、政府関与の海外物件は伏魔殿とも呼べます。
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スクープ
“官邸案件”ODA不正疑惑 安倍前政権進めたフィリピンの政府開発援助 フィリピン運輸省が払う給料 ODA予算で肩代わり 関係者がJICAに告発
                    しんぶん赤旗日曜版 2021年10月3日号
 安倍前政権進めてきたフィリピンの政府開発援助(ODA)事業で不正がある  ODAの実施機関、独立行政法人「国際協力機構」(JICA)に関係者内部告発していることが編集部の取材で分かりました。ODA事業の原資は国民の税金。不正を知る人物「この事業は官邸案件と言われてきたJICAが忖度し、不正をなかったことにするは許されない」と話します。 取材班
 関係者が5月、JICAに不正を告発したのは、日本がODAの有償資金協力(円借歌)として行っているフィリピン・マニラ首都圏内の都市鉄道「MRT3号線」の改修・保守事業。381億円の借款契約額で201811月に調印されました。貸し付けを実施するのがJICAです。
 発注者はフィリピン運輸省。住友商事が受注し、19年3月に契約が発効(契約金額355億円)。施工監理のコンサルタント業務は20年2月、オリエンタルコンサルタンツグローバル(OCG)が幹事社の共同企業体が約15億円で契約しました。
 関係者がJICAに告発したのは、コンサル業務の発注をめぐりフィリピン運輸省高官がOCG側に不正な支払いなどを要求してきたこと。OCG側は、同省の管理下にあったスタッフの人件費をODA予算から流用して支払い、備品も無償提供したといいます。
 この不正について知る立場の人物は編集部に詳しく証言します。
 「コンサル業務の入札(19年6月)直前、フィリピン運輸省の鉄道担当次官がOCGの担当者を呼び、実質的に運輸省の管理下にあったスタッフをコンサル業務のメンバーに加えてほしい、と要求した。さらに契約交渉が始まる直前、再度担当者が呼ぱれ、本来は運輸省が支払うべき2人の給与を代わりに支払うよう求められた。2人にはODA予算から計1100万円が支払われたと聞いている」
 OCGが不正に給与を支払わされたのは、フィリピン運輸省の管理下にあった2人。肩代わりした2人の給与は、OCGが業務を開始(20年3月)する前の約半年分でした。

実態ない費用支出のカラクリ
パソコンなど物品無償提供も
 先の人物は不正支出のカラクリについても詳しく明かします。
  2人が事業に関するダミーの「報告書」をOCGに提出。同社はその対価としてフィリピン運輸省に費用計1100万円を請求。同省から支払われた計1100万円を同社が2人の口座に送金する。
 先の人物は「この手法はOCG側が提案した。社内では“実態の伴わない費用が日本の税金から支出されるのはおかしい″と異論が出たが、強行された」と明かします。
 問題の報告書は、請負業者(住友商事)の改修・保守事業とは関係のない、鉄道の構造物などに関するもの。2人が別案件のためにつくったものを、不正支出のために悪用した疑いがあります。
 フィリピン運輸省側の要求でOCG側は、ODA予算で購入した物品も不正に無償提供していました。
 先の人物によるとOCG側は、同事業の予算でパソコン数十台を購入。その3分の1ほどをコンサル業務開始当初からフィリピン運輸省側に提供していました。また、事業の予算で契約したレンタカー数台も同省側に提供していたといいます。

調査結果の公表や処分もなし
前首相肝いり事業への忖度か
 一連の不正について関係者は今年5月、JICAの不正腐敗情報相談窓口に告発。しかし現在まで、調査結果の公表や処分などは出ていません
 先の人物は指摘します。「事業の予算で購入したパソコンなどの機材は『資産管理台帳』に現使用者が記載されている。レンタカーの『運行記録』にも利用者が明記される。フィリピン運輸省関係者の名前があるかどうか、調べればすぐわかるはずなのに、JICAの対応は不可解だ」
 OCG副社長はJICAと統合した国際協力銀行でプロジェクト開発部長などを務めていました。先の人物は訴えます。
 「ODA事業をめぐり日本の税金が適切に使われているかどうかの大問題だ。“天下り″先となり、安倍晋三前首相肝いりの事業だったとしても、JICAはきちんと調査を尽くすべきだ」
 外務省の「2020年版開発協力白書」は「日本のODAは、国民の税金を原資としている」「ODA事業に関連した不正行為・・・は」「ODAに対する国民の信頼を損なうもので
あり、絶対に許され(ない)」としています。
 編集部の取材にOCGは「JICAの窓口にどのような情報があったのか、当社は知りえないため、回答のしようがない」と回答。JICAは「通報者保護の観点から、通報の有無についての回答は控える」と答えました。