9月下旬以降円は3週間で約4円も下落し、1ドル113円台の円安になりました。原因は米国の長期金利が上昇しドルが買われたためです。円安が進行すれば輸入物価は高騰するので値上げラッシュが予想され、日銀が12日に発表した9月の輸入物価指数は、すでに前年同月比31.3%も上昇しています。
このままでは不況下の物価高騰が庶民の懐を直撃します。
円安の進行を止める有効策は国債の利上げですが、日本はすでに906兆円という莫大な国債残高を抱えているので、利払いに莫大な予算を要することになり安易に利上げすることはできません。アベノミクスの手法は、「こういう段階になって取るべき措置を不可能にするもの」とは早くから指摘されていたことです。
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岸田政権「悪い円安」に対応せず…このままでは不況下の物価高騰が庶民の懐を直撃
日刊ゲンダイ 2021/10/16
9月下旬以降「円」が急落している。この3週間で約4円も下落。足元は2年9カ月ぶりの水準の113円台まで進行している。
ところが、13日の参院代表質問で円安進行の原因と影響、為替安定策について問われた岸田首相は、「為替動向についてはコメントは控える」と、ほとんど反応しなかった。しかし、この「円安」が、不況下に物価が高騰する「悪い円安」なのは明らかだ。
金融ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。
「急速に円安が進んでいるのは米国の長期金利が上昇しているからです。過度な物価高に対応するため、米国は金融引き締めを早め、政策金利を段階的に上げていくのは間違いありません。金利が上がれば、当然、ドルが買われ、円が安くなる。さらなる円安が進行すれば、輸入物価は高騰し、値上げラッシュが予想されます。景気が低迷する中の“悪い円安”と言えます」
日銀が12日に発表した9月の輸入物価指数は、すでに前年同月比31.3%も上昇している。
問題は岸田首相が機動的に円安に対応できるのかだ。円安の進行を止める有効策は利上げだ。ニュージーランドは今月、7年ぶりの利上げを実施。韓国も8月、2年10カ月ぶりに利上げし、さらに11月の追加利上げを検討している。
■輸出、インバウンド依存のツケ
「アベノミクス以来、日本政府と日銀は円安誘導によって、輸出とインバウンドを推進してきました。円高には警戒を示し、事実上の“介入”もしてきた。ところが、日本政府は、円安への対応はやったことがない。岸田首相も“円安介入”との発想はすぐには頭に浮かばないのではないか。実際、他国とは異なり、日本で利上げ議論はほとんど聞こえてこない。対応を誤れば、この先、大幅な物価高に見舞われ、国民が悲鳴を上げる事態になりかねません」(森岡英樹氏)
岸田首相が欠席したG20は13日、「物価安定のための行動」で一致して閉幕した。日本だけ周回遅れになるんじゃないか。