2021年10月28日木曜日

「敵基地攻撃」攻撃で日本が戦場に 日本に多大な犠牲と大軍拡もたらす

 北朝鮮の核・弾道ミサイルを念頭に、「敵基地攻撃能力」保有の是非が総選挙の重要焦点になっています。敵基地攻撃能力」とは、弾道ミサイルの発射基地など、敵の基地を直接、攻撃できる能力で、敵が攻撃に着手したあとに反撃するものです。攻撃への着手がないにも関わらず、単に攻撃する惧れがあるからとして敵基地を攻撃するのは明白な国際法違反です。
 では敵が攻撃に着手したことを瞬時に感知するが出来るのかといえば明らかにノーです。 これまで北朝鮮は度々ミサイルの発射実験をして来ましたが、発射後瞬時にそのことをキャッチしたという話は聞きません。せいぜい日本海のどこそこに着弾してから、韓国からの情報に拠って初めて把握できたというのが常です。
 どの地点からどの地点に向けて発射する「直前の状態にある」ことが「瞬時」に分からなければ有効な「敵基地攻撃」など成り立たない以上、「神」以外には行使できない能力ということになります(「情報があった」などは何の根拠にもなりません。米国のイラク攻撃がそのいい例です)。
 安倍首相は退任するに当たり「敵基地攻撃能力」の保有を検討するように言い残しましたが、その後有耶無耶になったのは当然のことです。それがこの衆院選に向けて再び「敵基地攻撃能力」保有の是非に焦点が当たったのは、自民党の高市政調会長がその保有の必要性を声高に叫んだからでした。では高市氏がそうした大前提をクリアしたのかといえば、そうでないことは論を俟たず、そうした問題意識を持っていたのか自体も不明です。最低限の論点整理も行わずにただ「必要」だと叫ぶのは児戯に等しいことです。
 それにしても毎回「ダシ」に使われる北朝鮮こそいい迷惑です。北朝鮮は既に20年近く前から日本を射程に収めるミサイル「ノドン」を数百基保有していますが、一度も撃っては来ませんでした。それは北朝鮮にはそんな意思はないし、必要もないからです。理に適った平和外交こそが求められる所以です。
 しんぶん赤旗が、「『敵基地攻撃』攻撃で日本が戦場に 犠牲と大軍拡もたらす」という記事を出し、「敵基地攻撃能力」保有の無意味さ・理不尽さに留まらず、日本が火の海に化し兼ねない無謀な政策であることを明らかにしました。
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「敵基地攻撃」攻撃で日本が戦場に 犠牲と大軍拡もたらす
                       しんぶん赤旗 2021年10月26日
 北朝鮮の核・弾道ミサイルを念頭に、「敵基地攻撃能力」保有の是非が総選挙の重要焦点になっています。自民党は選挙政策で「保有」を掲げており、維新もこれに追随しています。日本共産党は断固反対の立場です。北朝鮮の相次ぐミサイル発射は厳しく非難されるべきですが、「軍事対軍事」の道で問題は解決されません。
 仮に相手を攻撃すれば、必ず反撃されるのが軍事の常識です。日本全土が攻撃対象になり、民間人に多数の犠牲者が発生する可能性があります。そうしたリスクをいっさい説明せずに「敵基地攻撃」を議論するのは、国民の生命・財産を軽視した究極の愚論であり、無責任の極みです。
 敵基地攻撃で反撃を受けないためには、相手が反撃不能になるまで徹底的に攻撃し、短期間で壊滅状態に追い込むしかありません。そのために戦力の大量集中投下が必要になり、途方もない大軍拡が不可避です。しかも、太平洋戦争での本土空襲のように、相手国の一般市民の大量殺りくももたらします。平和憲法を持つ日本が、そのような選択肢をとるべきではありません。

「基地」存在せず
 そもそも、「敵基地攻撃」というものの、何をもって「基地」というのでしょうか。
 北朝鮮には中距離弾道ミサイル「ノドン」など、日本を射程圏内に収めたミサイルが無数に配備されていますが、ほとんどは車両や列車型など、移動式ランチャーから発射されます。さらに、北朝鮮は最近、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を洋上から発射。「基地」から発射される弾道ミサイルは、ほぼ皆無といえます。

既に新兵器誕生
 自民党は政策で「弾道ミサイル阻止」を掲げていますが、弾道ミサイル自体が“古い”兵器になり、いまは「極超音速」兵器の時代に突入しています。中国・ロシアが開発で先行。北朝鮮も保有に乗り出しています。
 極超音速ミサイルは、高高度の大気圏内を音速の数倍から数十倍の速度で飛びます。ロケットで大気圏外に打ち上げられ、慣性の法則で大気圏内に再突入する弾道ミサイルは軌道を予測することが可能です。しかし、極超音速ミサイルはスクラムジェットエンジンで変則的な飛行をするため、探知がきわめて困難です。松野博一官房長官は18日の記者会見で中国の極超音速兵器について問われ、「新たな脅威の中には従来の装備品では対処が困難と指摘されるものもある」と述べ、事実上、対処能力がないことを認めました。
 対処するためには新たな迎撃能力を一から構築する必要があり、際限のない軍拡競争をもたらします。

外交的解決こそ
 最も現実的な選択肢は、相手にミサイルを「撃たせない」ための外交的解決につきます。日本共産党の志位和夫委員長は24日のNHKの党首討論で、「外交的解決の条件はある」と指摘。今年5月の米韓首脳会談で、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築を一体で進めることを合意した2018年の南北「板門店宣言」、米朝「シンガポール共同声明」の有効性を確認し、外交努力で解決しようとしていることをあげ、「この動きを後押しすべきだ」と求めました。

 日本共産党は中国に対しても、中国包囲の軍事ブロックをつくる排他的アプローチではなく、中国も包み込み地域的な平和秩序をつくる包摂的なアプローチを訴えています。