2021年10月31日日曜日

トドメを刺すのは有権者 接戦区を次々落とせば自民党は瓦解する

 31日は衆院選の投票日です。
 少なくともこの25年間、国民の実質賃金が下がった国は世界広しと言えども北朝鮮と日本だけで、他の国々は軒並み1・5~3倍にアップしています。
 2000年代初頭の小泉・竹中政権以降、日本の政治・経済は全く何の取り柄のないものに変わりました。彼らは新自由主義のもと、労働の成果を全て経営者や株主あるいは投機筋に吸い取らせて実質経済を痩せ細らせました。そうした政権を実に20年以上も「唯唯諾諾」として支持し続けてきた国民の側にも基本的な責任があると言えるでしょう。
 そんな政治はもう変えたいものです。財界ベース、投資家ベースそして米国ベースの政治はもういい加減終わりにしたいものです。
 日刊ゲンダイの「トドメを刺すのは有権者 接戦区を次々落とせば自民党の瓦解が始まる」と「自民急失速!大物議員27人落選の現実味、現職3大臣&党役員3人も崖っぷち」の2本の記事を紹介します。
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トドメを刺すのは有権者 接戦区を次々落とせば自民党の瓦解が始まる
                          日刊ゲンダ  2021/10/30
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
「大詰めを迎え、北海道から沖縄まで大激戦が展開されている。何としても押し上げていただきたい」
 投開票日(31日)まで残り2日となった29日、岸田首相は鹿児島市の街頭で声を張り上げた。接戦となっている選挙区をできるだけたくさん回りたい、ということで、岸田は最終盤の遊説の移動にチャーターした航空機を利用。おとといは青森、秋田、新潟、石川、香川。29日は鹿児島、宮崎、千葉を回った。
 過去、首相がチャーター機を使ったのは政権交代選挙となった2009年衆院選時の麻生太郎と、民主党政権に代わった翌10年参院選時の菅直人の2人。いずれも政権与党が敗北した選挙だった。つまり今回も、チャーター機を手配しなければならないほど、岸田自民党は厳しい状況に追い込まれているということである。
 実際、29日の読売新聞の1面見出しは「自民単独過半数は微妙」。自民について、<劣勢は序盤の46人から60人に増えた。当落線上で104人がしのぎを削る>と分析していた。定数465の衆院選で過半数は233。自民の公示前勢力は276だから、43議席以上減らす可能性があるということ。あと2日という段階で100人超もが接戦とは、岸田の尻に火が付くわけである。

「国民の声は聞いたけど、無視します」
 だが、“ご祝儀相場”がほとんどなかった不人気首相が激戦区で街頭に立ったからって、どれほどの効果があるのか。むしろ裏目に出るんじゃないのか。
 岸田の演説については、自民候補の陣営からですら「インパクトがなくてねえ」と落胆の声が上がる。「人の話をしっかり聞くのが特技」という岸田が、どの演説でも“小道具”として出して見せるあの小さなノートも怪しさ満載。「国民の声を書きためてきた」と熱心に訴えるものの、その中身について一度たりとも触れたことはない。演説の後半の毎度同じタイミングで片手に掲げてみせるが、ノートはやけに新しい。「国民の声」をそんなに聞いてきたのなら、演説の場で明らかにして、その解決策を聴衆にアピールした方がよほど票が増えるのに、絶対にやらない。
 話の中身もカラッポ。あれほど力説していた「新自由主義からの脱却」も「格差是正」も総裁選に勝つための口先公約に過ぎなかった
「金融所得課税の強化」をあっさり撤回したように、自民党の従来の金持ち優遇策を維持し続けている。街頭で配っている「政策パンフレット」には、「危機管理投資」「成長投資」の言葉が並び、「分配」は後回しだ。
 一方、立憲民主党は公約で「1億総中流社会の復活を目指し、国民の可処分所得を増やす政策に転換する」と訴える。富裕層や巨大企業への優遇税制の是正で所得再分配も強化するという。共産党は「家計応援の政治でボトムアップ」が公約だ。
 岸田は、世論の7割が望む「安倍・菅政権からの転換」を求める声には耳を塞ぎ、「モリカケ桜」はおろか、自分の地元・広島の選挙買収事件に絡む1・5億円問題すら検証せず、反省ゼロ。それで批判されると、党を挙げて「共産の力を借りて立憲が政権を取れば日米同盟は終わりを迎える」と悪質なデマを飛ばし、イチャモンでしかない野党連合批判に血道を上げるのだから始末に負えない。
 庶民に寄り添い、耳を傾けているのは与党なのか、野党なのか。一目瞭然である。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「あの『岸田ノート』は逆効果ですよ。『国民の声を聞く』と言いながら、具体的な新しい政策を打ち出すことなく、安倍菅路線を踏襲している。『国民の声は聞いたけど、無視します』と言っているようなものです。岸田首相の言う『分配』は成長が前提で、アベノミクス頼みにどんどん戻ってしまっている。一方の野党連合は、消費税を5%に戻すことで4党が一致したことが大きい。いまや、大企業への課税強化は国際的なトレンドです。米国ですら舵を切っている。与野党どちらの政策がいいのかは明確です」

単独過半数割れで不満噴出、政権は求心力低下
 最終盤でチャーター機を出さなきゃならなくなるほどの自民党の苦戦は、全289小選挙区の7割強にあたる217選挙区で野党候補が一本化されたことが最大の要因ではあるが、もう一つ、党執行部による候補者選定のマズさも透けて見える。
 例えば、長崎4区や福岡5区は、自民党の地方県連が世代交代を求めたのに、身内かわいさで本部が押し切ったケース。長崎4区の北村元地方創生相は岸田派、福岡5区の原田元環境相は麻生派だ。ロートルを優遇した結果、野党の新人に負けそうなのだから“自爆”としか言いようがない。
 岸田が狙ったのは、超短期決戦で逃げ切る戦略だった。自治体の準備期間を考慮して選挙日程の前倒しに難色を示した総務省を押し切り、「俺は政局が得意だ」と自負していたらしいが、勘違いも甚だしい。安倍・菅ファッショ政治で国民を愚弄し、あぐらをかいてきた自民党は、すっかり足腰が弱まり、常識すらなくなり、アチコチで組織内紛の醜態を晒している。
 トンチンカンの極みは東京15区だ。カジノ汚職で起訴され、自民党を離党した前職の秋元司が1審で実刑判決を受け、出馬を断念した。そうしたら党執行部は、1人しか当選しない小選挙区で2人を推薦。地元支部が担ぐ元職の公認要請を蹴って推薦に格下げしたうえ、あろうことか、つい半月前まで野党会派に所属していた前職にも推薦を出したのだ。
 これには東京都連がカンカンで、都連の総務会長でもある萩生田経産相が、「東京のことは東京の我々が決めるんですよ! 山形県の政治家(遠藤利明選対委員長)に東京の何がわかるんですか!」と、街頭演説で執行部批判したことが報じられた。内輪モメの泥仕合になっているのである。

「勝てる顔」のはずが自爆の愚
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏が言う。
「激戦に追い込まれているからでしょう。全国各地で自民党はモメています。九州なんて保守王国とされてきたのに、今回は落選危機の人がズラリ。比例単独に回された人は、大丈夫なのかと危機感を強めています。党内に禍根が残るのは必至。新執行部になってすぐ選挙で慌てたとはいえ、なんとかなるだろう、と甘くみて、岸田首相は自分の首を絞めている。でもまあ、『内輪モメして岸田降ろしでも何でも、どうぞやってください』ですよ。自民党は『菅前首相じゃ勝てない』とシャッポを代えた。『勝てる顔』として岸田首相を選んだわけですから、自業自得です」
 岸田は「自公の与党で過半数」を勝敗ラインに置くが、それがクリアできたとしても、問題は自民単独で過半数が取れるのかどうかだ。西銘復興相や若宮万博相ら、現職大臣どころか、甘利幹事長までが落選危機にある。
 接戦区を次々落とせば、不満がマグマのようにたまった地方組織から執行部批判や責任論が噴出するだろう。岸田の求心力は低下し、政権の足元は揺らぎ、大混乱となって自民党の瓦解が始まる
「与党が絶対安定多数の261議席を下回り、自民が単独過半数の233を割り込む。そうして自民党が混乱するのは、国民にとっては良いことです。新しい政治への転換の生みの苦しみだと思えばいいのです。国民の声を無視して、1強が力ずくで全てを推し進めるような政治が、これ以上続いていいわけがない。安倍菅政権で行われてきた政治や行政の歪み、立憲主義、平和主義、民主主義の破壊。これらをどうやって是正するのかが問われる選挙にならなければなりません。国民がきっちり審判を下し、『今までのやり方を転換します』と自民党に言わせないといけない」(五十嵐仁氏=前出)
 そうだ。トドメを刺すのは有権者なのである。


自民急失速!大物議員27人落選の現実味、現職3大臣&党役員3人も崖っぷち
                           日刊ゲンダイ 2021/10/30
 投開票が31日に迫った総選挙は、まったく結果が読めない展開になってきた。289ある小選挙区のうち4割が接戦となっている。野党共闘が奏功し、小選挙区で一騎打ちの戦いになっているのが大きい。落選が現実味を帯びる与党の大物議員も少なくない。
                ◇  ◇  ◇
 読売新聞の最新世論調査(26~28日)によると、自民は終盤に入り、野党に追い上げられている。自民候補の劣勢は序盤の46人から60人に増え、104人が当落線上だという。
 現職閣僚や党役員、大臣経験者ら自民の大物議員の最新情勢を探ると、27人もが、「劣勢」か「互角」の戦いを繰り広げている〈別表〉。現職大臣3人(若宮健嗣氏、山際大志郎氏、西銘恒三郎氏)と、自民党の執行部3人(甘利明氏、遠藤利明氏、高木毅氏)も大接戦となっている。
「党の顔」であるはずの幹事長の甘利氏は当選に黄信号がともり、全国遊説どころではなくなった。他人の応援をやめ、自分の選挙区に張り付いているありさまだ。野党候補に猛追されている。



■初入閣組の3大臣も苦戦
 岸田内閣で初入閣し、“箔”が付いたはずの自民の3大臣も苦戦。山際氏、西銘氏の2人は野党候補に迫られ、若宮氏はややリードされている。
 序盤は「盤石」とされた細田博之氏や高木氏もここへきて野党統一候補の猛追を受け、わからなくなってきている。選挙に強い2人が、ここまで苦しむのは異例のことだ。
 73歳定年制により、比例との重複立候補ができない林幹雄氏、原田義昭氏、山本幸三氏、北村誠吾氏、衛藤征士郎氏は野党候補にリードを許す崖っぷちの戦い。無所属の松本純氏と公明の斉藤鉄夫氏(広島3区)も比例復活はない。松本氏はかなり厳しい戦いだ。

■日に日に情勢悪化の石原伸晃氏
 情勢が日に日に悪化しているのが石原伸晃氏だ。幹事長や閣僚を歴任した石原派の領袖。東京8区で、連続10回当選している。れいわの山本太郎氏が同区からの出馬を取りやめ、野党統一候補となった吉田晴美氏(立憲)が勢いを増している。自民党が行ったとされる調査では先々週は石原氏が吉田氏をわずかにリードしていたが、先週は逆に9ポイント近く引き離されている。27日には岸田首相が東京8区入り。派閥領袖が総裁の応援を受けるのは前代未聞のことだ。
 27人のうち、何人が生き残るか。