2021年10月2日土曜日

誰が見ても“安倍麻生傀儡” 岸田新政権の裏側と今後(日刊ゲンダイ)

 岸田政権になれば“安倍・麻生傀儡”になるというのが大方の見方でしたが、自民党役員人事を見るとものの見事にその通りとなりました。

 役員人事で唯一岸田氏の意向が反映できたのは福田達夫氏を総務会長に登用したことなのですが、うるさ型の面々が蝟集する総務会を新人がまとめるのはかなり荷が重いので、適切であったのかは疑問です。
 次の閣僚人事ではどうなりますか。
 日刊ゲンダイが「 ~ 岸田新政権の裏側と今後(上・中・下)」とする記事を出しました。(中)と(下)は有料記事で非公開ですが、集約サイト「阿修羅」に文字起こし版が載りましたので転載します。
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誰が見ても“安倍麻生傀儡” 岸田新政権の裏側と今後 <上>
                          日刊ゲンダイ 2021/09/30
大メディアは大ウソ報道、ワルたちが跋扈し派閥の論理で決まった総裁選
 ふたを開けてみれば、一番つまらない候補が新総裁に選ばれた。
 2週間もバカ騒ぎが続いた自民党の総裁選は、事前の予想通り、岸田文雄前政調会長(64)と河野太郎行革担当相(58)との“決選投票”となり、<岸田257票vs河野170票>と大差をつけて岸田が圧勝した。
 それでも1回目の投票には、どよめきが起こった。事前の予想に反し、岸田が1位になったからだ。よほど嫌われていたのか、河野が獲得した議員票は予想以上に少なかった。100票は堅いと見積もられていたが、獲得したのはわずか86票と、岸田の146票はもちろん、高市早苗前総務相(60)の114票にも及ばなかった。
「議員票が土壇場で大きく動いた。岸田さんは陣営の票読み通りで、増減がなかった。それに対して河野さんは、125票は取るとみられていたのに40票近くも減らしている。そのうち約25票が高市さんに行き、約15票が野田さんに流れた計算です。この40票の目減りは決定的だった。相当な切り崩しがあったのは間違いないでしょう。1回目の投票で河野さんは、党員票の44%を獲得しているのに、議員票は22%。“永田町の論理”が優先されたのでしょうが、党員票と議員票の乖離も相当なものです」(自民党関係者)
 大新聞テレビは、今度の総裁選を「派閥の縛りが利かない」「自主投票になる」「衆院選が近いから国民人気の高い候補が選ばれる」などと、シタリ顔で報じていたが、すべて大ウソだった。いつもの総裁選と同じように、長老が跋扈し、派閥の論理で決まったのが実態である。議員による自由投票だったら、党員の支持が低く、国民人気もない岸田が新総裁に選ばれるはずがない。
 特に目立ったのが、安倍前首相による中堅・若手議員への“圧力”だった。たとえば最新号の「週刊文春」によると、“河野支持”を打ち出していた柴山昌彦前文科相に電話をかけ、「河野には石破がつく。大丈夫なのか? この先、選挙もあるんだ」と、恫喝とも取られかねない言葉を投げつけていたという。圧力が効いたのか、柴山は河野の推薦人に名を連ねるとみられていたのに、名簿に名前はなかった。
 政治評論家の有馬晴海氏がこう言う。
「表向き、各派閥は“自主投票”としていましたが、派閥幹部の意向に従って動いていたのが実態です。“勝ち馬”に乗ろうと、細田派、麻生派、竹下派、さらに情勢を見ていた二階派まで最後には岸田支持で固まった。二階幹事長と岸田前政調会長は対立していましたが、安倍前首相が“仲介”し、27日に手打ちしたという情報も流れています。1回目の投票で河野さんの議員票が極端に少なかったのは、派閥の縛りもあったはずです」
 典型的な旧態依然の総裁選で誕生したのが岸田新総裁である。

しぶとく生き残った安倍・麻生と操り人形首相の今後
 岸田勝利の裏で蠢いていたのが「2A」と称される安倍と麻生財務相だ。キングメーカー気取りの2人が描いたのは「1回目の投票で河野の過半数獲得を阻止。決選投票で岸田、高市両陣営に連合を組ませ、河野の得票を上回る」とのシナリオ。狙い通りの展開に安倍は喜びを隠そうともしない。投開票後、自ら陣頭指揮を執った高市陣営の会合で「多くの自民党支持者が自民党の元に戻ってきてくれた」と破顔一笑だった。
 総裁選中も安倍はなりふり構わず“直電作戦”。若手議員の携帯に直接電話をかけ「高市さんを応援して欲しい」「でないと衆院選での応援は難しい」と半ば脅迫し、衆院選直前に安倍を敵に回したくない若手を震え上がらせた。予想を超える河野の惨敗を受け、高市陣営の稲田元防衛相は日刊ゲンダイに「(安倍直電の影響が)なかったとは言えない」と打ち明けた。
 安倍の謀略に「勝ち目ナシ」と悟ったのか、会場のホテルに集まってきた河野陣営は投票前から“お通夜”状態。いち早く到着した河野は仏頂面を浮かべ、続いた進次郎も硬い表情のまま足早に会場入り。陣営関係者も一様に「手応えナシ」「もう無理でしょ」と嘆息し、ニコニコしていた岸田・高市両陣営とは対照的だった。しぶとく生き残りを図った「2A」の強力な後ろ盾で勝たせてもらった岸田は今後、操り人形として働くことになる
「安倍、麻生両氏は新政権の人事や政策決定にも手を突っ込んでくるはず。岸田氏も2人の顔色をうかがい続けるようだと、約9年に及ぶ安倍路線の継続は必至。29日の会見でも、岸田氏は安倍氏の“急所”である森友問題の再調査を再び否定した。結局、2Aの都合で傀儡政権が誕生するだけなら、菅首相の不出馬表明以降、約1カ月の政策論争は無意味です」(政治評論家・本澤二郎氏)
 安倍と麻生の高笑いはしばらく続きそうだ。


誰が見ても“安倍麻生傀儡” 岸田新政権の裏側と今後 <中>
                          日刊ゲンダイ 2021/09/30
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
岸田勝因は「担ぎやすさ」と「消去法」早くも飛び交う短命説
 もう一つの岸田勝因は毒にも薬にもならない「担ぎやすさ」と「消去法」だ。特に石破憎しの安倍と自派閥の世代交代を恐れた麻生は、河野潰しで思惑が一致。他にいないからという消極的な理由で、岸田を推したに過ぎない。
「岸田氏には、ずっと安倍前首相から『禅譲』をほのめかされていたのに、昨年の総裁選で“あなたじゃ勝てない”とハシゴを外され、菅首相に惨敗した苦い経験がある。そこで彼はもっとスリ寄らなければと思ったのでしょう。総裁選でも安倍氏に森友再調査の否定、9条への自衛隊明記など『安倍改憲4項目』の実現を任期中に目指す、敵基地攻撃能力の保有と3つの誓いを立て、露骨に尻尾を振った。伝統的にリベラルな宏池会の魂を売り渡し、自ら進んで操り人形になったようなものです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 こんな「表紙のすげ替え」で国民は騙されるものか。仮に新政権誕生の「ご祝儀」相場で衆院選をしのいでも、すぐ来年夏には参院選が待っている。それまで政権はもつのか。
 安倍1強の自民党内で“反主流”と言えたのは石破派程度だったが、今回の岸田圧勝によって党内は波乱含み。人事を誤れば、真っ先にケンカを売られた二階をはじめ、河野支持を表明した菅や進次郎など名だたる面々が批判勢力となりかねない
参院選を迎える頃には間違いなく、『2A』の傲慢さが目につくようになる。世論の6割が安倍路線の継承を望んでいないのに、そんな政治を国民は許しません。それこそ2007年の参院選で大敗し、第1次政権を投げ出した安倍氏の二の舞いとなる可能性は十分にあります」(政治評論家・森田実氏)
 早くも短命説が飛び交うゆえんは、2A傀儡政権であればこそだ。

無残な惨敗 自分の人気を過信した河野太郎の自己愛
 一時は本命視されたが、結果は予想以上の惨敗。全ては河野の自業自得だ。担当大臣として、新型コロナワクチンの供給不足で大混乱を招いたのに、異様なほど自己評価が高い。
 総裁選の出馬表明直後に「河野太郎でなかったら、ワクチンはここまでこなかっただろう」と臆面もなく自画自賛。ネット上で〈言っててよく恥ずかしくないな〉などと批判が噴出したが、異論に耳を貸すタマじゃない。
 世論調査で常にトップに立ち、自分の人気を過信したのか、危うい本性をこれでもかと見せつけた。若手が立ち上げた「党風一新の会」との意見交換会で「政高党低じゃなきゃ困る」との持論を展開。「与党(の役割)は首相指名まで」「部会でギャーギャー言っているよりも……」と言い放ち、反感を買うと発言を撤回した。上から目線のパワハラ気質に本人だけが気づいていない
 生出演したフジテレビの番組では、河野陣営が高市陣営に票を融通する動きがあるとの解説に「フェイクニュースだ」と声を荒らげ、「桜を見る会」問題を告発した弁護士有志の公開質問状は受け取り拒否と“ブロック太郎”の本領発揮だ。
 意に沿わない言説のシャットアウトは、フォロワー数230万を誇る河野のツイッターではおなじみとはいえ、同じ振る舞いは現実世界では絶対に通じない。事実上の“次の総理”候補なら、なおさら。
 作家の適菜収氏は、日刊ゲンダイコラムで、河野を〈自己愛過剰で幼児的全能感が暴走〉と評したが、言い得て妙だ。
「当初は陣営に多数の議員が集まっていたが、終盤に差し掛かる頃には『ついていけない』と距離を置く議員が増えていった」(自民党関係者)
 前出の本澤二郎氏はこう言う。
「持論の脱原発も最低保障年金も結局、トーンダウン。最後まで折れずに貫き通していれば、党員票ももっと伸びたかもしれない。世論の反発を恐れて議員票の出方も違ったものになっていたでしょう。結局、河野氏は自滅したのです」
 河野は「またチャンスがあればしっかりやっていきたい」と語ったが、“うぬぼれ太郎”に再びチャンスは回ってくるのか。


誰が見ても“安倍麻生傀儡” 岸田新政権の裏側と今後 <下>
                         日刊ゲンダイ 2021/09/30
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
唯一期待できるのは所得倍増と新自由主義からの脱却だが、口だけになる懸念
「分配なくして次の成長はない」――。新しい日本型資本主義を標榜し、富の再分配を訴え、曲がりなりにも総裁選を勝ち抜いた岸田。「格差と分断を生んだ」と指摘する小泉政権以降の新自由主義経済からの脱却と、格差是正により中間層を復活させる「令和版所得倍増」など耳当たりのいい経済政策の数々も、その実現性は心もとない
 新総裁選出後の初の会見で再分配の道筋や財源を聞かれても、「民間で考えてもらう」などと見当違いの答えでウニャムニャ。具体策は何ひとつ示せていないままだ。
 岸田は総裁選の告示前日(16日)、経団連の十倉雅和会長と会談。全面協力を取りつけたが、長く新自由主義の下、市場原理に委ねた競争をあおってきたのは経団連ではないか。しこたま内部留保を貯め込み、従業員の給与に還元せず、格差を広げた大企業経営者たち。その集まりの経団連の応援を受け、岸田に「格差是正」を唱えられても鼻じらむだけだ。
「岸田陣営は早くから腕っこきの選挙プランナーを雇い、全党員への電話やハガキを送る回数も他陣営より多かった。皆、資金源がよく分からず不思議がり、経団連企業から薄く広く支援してもらっているのではないかと言われていました」(自民党関係者)
 岸田は経済政策の転換を強調しながら、諸悪の根源であるアベノミクスは堅持。陣営にはなぜか、首相秘書官として安倍を支えた最側近の今井尚哉・内閣官房参与も出入りしていた。
「そもそも岸田氏は『アベノミクスの加速』を掲げた高市陣営と手を握った時点で、格差是正への本気度が疑われます。結局は政策度外視で派閥の論理がまかり通る新政権となりそうです」(五十嵐仁氏=前出)
 唯一期待できそうな経済政策の転換も「口だけ」となりそうだ。

ハッキリ正体見えた自民党 面白くなってきた総選挙の行方
「わが国は民主主義の危機にある」というのが、岸田の総裁選出馬の動機らしい。その危機をもたらした安倍たちにすがりながら、よくぞヌケヌケと豪語できるものだ。「人の話をしっかり聞く」という当たり前すぎる“特技”とやらも、安倍と麻生の意向を「しっかり聞く」の誤りだろう。
 懲りもせず「派閥の論理」ムキ出しで選ばれた新総裁に野党も手ぐすね引いている。菅が総裁選不出馬を表明した直後は「菅首相を相手に選挙をやりたかった」と落胆ムードだったが、ケガの功名で逆に野党は結束。立民、共産、社民、れいわの野党4党は民間団体「市民連合」を介して消費税減税など共通政策を締結し候補者一本化の選挙区調整も猛スピードで進めている。
 4年前の衆院選の得票で見ると、野党候補一本化で自公候補を逆転できる選挙区は64もある。500票以内の僅差で迫るのも13選挙区に上る。そこにパッとしない、煮え切らない、6割の有権者が望んじゃいない安倍路線継承の傀儡政権が誕生するのだ。野党にすればまさにカモネギ。実際、岸田、河野、高市、野田の4人の中で“岸田首相”は一番戦いやすいはずだ。これで総選挙の行方ががぜん、面白くなってきた。
「ハト派イメージの強い宏池会の岸田氏を表に立て、好き勝手に操ろうとする従米・反中の極右勢力と、対中友好関係にも配慮する勢力との均衡が瓦解したのが、今回の総裁選の本質だと思います。新政権が米国に隷属し、対中国の先兵役を務める動きが加速するのは確実でしょうが、もう自民党に自浄能力は期待できません。野党による政権交代以外、安倍路線を転換する道はないのです」(森田実氏=前出)
 今度の総選挙こそ、この国をメチャクチャにしたワルどもに鉄槌を下さなければいけない。