植草一秀氏が、「野党選挙対応に致命的な遅れ」として、立憲民主党の煮え切らない体質を痛烈に批判するブログを出しました。
昨年9月に菅内閣が発足した際、直ちに衆院総選挙が実施される可能性がありました。そうであれば本来であれば「政策連合」を確立し、候補者一本化を少なくとも1年前には完了していなければならなかったのですが、その候補者一本化がいまだに進展していません。「政策連合」が候補者調整委員会を立ち上げて、具体的に候補者一本化を協議していなければおかしいのに、どの党とどの党が共闘するのかさえはっきりしません。
これは偏に枝野氏をはじめとする立民党の主導部にその責任があります。連合の意向があって動きが取れなかったでは済まされません。むしろその意向を笠に着て、候補者一本化を直前まで遅らせた方が立民に取って有利と考えたというのが真相でしょう。枝野氏は途中の段階で立民党だけで過半数を取れる見通しが立ったとも発言しました。一体何処を見てそんなことが言えるのか、ただ呆れる発言です。これではこの先も野党共闘の見通しは暗いと思われます。
野党党首が話し合って、れいわが東京5区はじめ複数の候補予定者を下げ、一方 立憲は東京8区の吉田はるみ氏を下げて、れいわの山本太郎氏が8区の野党統一候補として立つことになり、山本氏はその線で活動を始めたのですが、これまで同地区で地道に活動を続けてきた吉田氏は突然の取り下げに納得が出来ず、周囲の応援団もその決定に憤激しました。
そうしたところ枝野氏は9日になって、れいわの山本氏が東京8区から立候補をすると発表したことに関し「困惑している」と記者団に語り、同区で擁立していた立憲新顔の吉田はるみ氏に「国会で仕事をさせたい」と述べました。そうであればはじめに「吉田氏の立候補は取り下げない」と言えば済んだ筈です。
困惑するのは山本氏の方で、途中で梯子を外されたのかとボヤくのは当たり前で、これでは当選もおぼつきません。
地元の反対は分かるものの、問題の根源は枝野氏の党首とは思えない不可解な態度にあります。田中龍作ジャーナルのブログを併せて紹介します。
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野党選挙対応に致命的な遅れ
植草一秀の『知られざる真実』 2021年10月10日
問題の核心は旧民主党、旧民進党、立憲民主党の鵺(ぬえ)体質にある。
日本支配勢力の基本戦術は野党の分断。
反自公勢力を「共産党と共闘する勢力」と「共産党とは共闘しない勢力」に分断すること。
このために共産党に対する誹謗中傷が展開される。
旧民主党、旧民進党、立憲民主党のなかに「水と油」が同居している。
「共産党とは共闘しない」を掲げる勢力は「隠れ自公」。
戦争法制を肯定し、原発稼働を容認し、消費税増税を容認する。
旧民進党が「希望の党」騒ぎをきっかけに、立憲民主党と国民民主党に分裂した。
この分裂が歓迎されたのは「水と油」の同居が解消されると期待されたから。
立憲民主党が共産党とも共闘する方向を明確に打ち出して強固な野党共闘体制を構築すれば政権奪還も可能になる。これが、立憲民主党が期待された理由。
実際、選挙では共産党が支援して立憲民主党が多数議席を確保した。
ところが、その立憲民主党が先祖返りしている。共産党とは共闘しない勢力が立憲民主党を振り回している。
2020年の京都市長選では立憲民主党が共産党推薦候補を支援せずに自公と手を組んで現職候補を支援した。
今回衆院総選挙でも立憲民主党は共産党候補を支援せず、国民民主党の前原誠司氏が出馬する選挙区の候補者を取り下げる。
背後に蠢(うごめ)くのはCIA。自民党も「隠れ自公」の国民民主党候補当選には協力的だ。
共産党を含む野党共闘が脅威になるため、反自公陣営の分断を図っている。
問題は、立憲民主党を支配する枝野幸男氏、福山哲郎氏、泉健太氏がそろって野党分断工作に関わっていること。
今回の衆院総選挙は実質的に任期満了。
昨年9月に菅内閣が発足した際、直ちに衆院総選挙が実施される可能性があった。
野党陣営が共闘体制を固めて、候補者調整を完了しなければならない時期だった。
それから1年経過している。政策を基軸に党派を超えて強い連帯を構築する。これが「政策連合」の考え方。
「政策連合」を確立し、候補者一本化を少なくとも1年前には完了していなければならなかった。ところが、その候補者一本化がほとんど進展していない。
政策協定を締結した陣営で、新たに候補者を擁立するなら、空白選挙区を優先するべきだ。
「政策連合」が候補者調整委員会を立ち上げて、具体的に候補者一本化を協議してきていなければおかしい。ところが現実にはどの党とどの党が共闘するのかさえはっきりしない。
今月末には衆院総選挙が投票日を迎えるのだ。
連合の新会長に就任した芳野友子氏は「共産党の閣外協力はあり得ない」と発言。
連合が野党分断推進勢力に支配されている現実が改めて鮮明になった。
立憲民主党は共産党を含む野党共闘を強固に打ち立てるのか。
それとも、共産党とは共闘しないのか。はっきりするべきだ。
「共産党と共闘しない」主張を明示しているのは国民民主党。
旧民主党、旧民進党、立憲民主党は「共産党と共闘する勢力」と「共産党とは共闘しない勢力」とに分かれるべきだ。
そして、基本政策を共有し、共産党とも共闘する勢力が一つにまとまり、候補者一本化を進めるべきだ。
共産党が立憲民主党候補の支援をやめれば、立憲民主党は議席を大幅に減らす。
本当に必要な野党抜本改革を実現するには鵺の立憲民主党の解体的出直しが必要だ。
鳩山友紀夫元首相との対談(アジア共同体研究所主宰YouTube動画「UIチャンネル」)
https://bit.ly/39BTgmd
10月5日発売の鳩山友紀夫元首相、孫崎享氏、前川喜平氏との共著『出る杭の世直し白書(ビジネス社) https://amzn.to/3hSer8a
のご高覧も賜りたい。
(以下は有料ブログのため非公開)
#吉田はるみだと思ってた 立憲幹部と山本太郎への凄まじい怒り
田中龍作ジャーナル 2021年10月10日
れいわ新選組・山本太郎代表の立候補宣言で揺れる杉並区。市民たちがきょう10日、阿佐ヶ谷駅前で街宣集会を開いた(呼びかけ:市民有志)。約50人が集まり「東京8区の候補者は吉田はるみさんしかいない」と声をあげた。
有志はすでに、共産党中央委員会、立憲党本部に要請行動を掛け「私たちは吉田さんで行く」と表明している。5日には枝野代表の個人事務所(さいたま市)にも足を運んだ。
その3日後に山本太郎の立候補宣言となったのである。それだけに立憲幹部への不信感と山本太郎への怒りは凄まじい。
参加者のほとんどは杉並区民だが、どうしても物申したい大学教授らが区外から駆け付けた。
希望者は持ち時間2分位で思う所を語った。20人余りがマイクを握っただろうか。批判の件数は立憲幹部に対するものが過半数を占めていた。
「山本さんが一人で決めたことじゃない。立憲幹部と相談して決めた」(大学教授・60代後半)。
「パリテ(⇒平等)を掲げる、ボトムアップを掲げる立憲民主党なのに(今回は)おかしい」(30代前半男性)。
憎悪のボルテージは山本への方がはるかに高かった。山本が選挙に初挑戦した2012年、山本陣営の選挙ボランティアだったという男性(60代)は、嘆き悲しんだ。
「私は山本太郎さんの選挙で駈けずり回った。私に人を見る目がなかった。(今回の山本の動きは)選挙を冒涜している。区民を冒涜している」。
男性は田中のインタビューに「来週からは街頭でチラシを配ったり、立憲の党本部に要請に行くなどして、山本さんの立候補を全力で阻止する」と答えた。
区外の大学教授(政治学地方自治)は2018年の新宿区長選で山本と一緒に街宣車に乗った。
「あの時は他人の話をよく聞く人だと感心した。山本さん(ネット中継を)見てますか?私たちの声を聞いて下さい。解決策はただ一つ。吉田さんが8区、山本さんが比例(ブロック)で出ることです」。
教授はスピーチの後、田中に「今は話を聞いてくれない」と残念そうに語った。
密室談合の結果、れいわが東京5区はじめ複数の候補予定者を下げ、立憲は東京8区を下げた。そして山本がその8区に立つことになったのである。
本来の立憲支持層や山本支持層の怒りは尋常ではない。このまま選挙に突入したとする。山本の街宣はヤジが飛んで演説もできなくなるだろう。立憲は大きく得票を減らすだろう。
~終わり~