2021年10月2日土曜日

“安倍官邸のアイヒマン”元内調・北村滋氏が新官房副長官か(LITERA)

 菅首相の退陣に伴って体調不良が伝えられていた杉田和博・副官房長官と、菅氏の信頼が厚かった和泉洋人総理大臣補佐官が退任します。問題は副官房長官の後任ですが、“安倍官邸のアイヒマン”と呼ばれた元内調・北村滋氏が復活するようです。北村氏は岸田氏と開成高校の同窓という関係だそうですが、岸田氏の監視役として安倍晋三氏が差配したというのが真相です。北村氏も政権中枢への復活を強く望んでいたようで、総裁選が始まる直前から岸田事務所に出入りしていたと言われています。

 内調の活動は映画『新聞記者』で描かれていたように、北村氏率い内調“安倍の私兵”として正規の調査活動に加えて官僚や自民党員の監視も行っています。
 彼が安倍政権時代に一体どんなことをしてきたのか、LITERAが伝えました。
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岸田体制で “安倍官邸のアイヒマン”北村滋が官房副長官か…前任の杉田以上の謀略、安倍の意を受けて岸田を監視する役割
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 1200万円賄賂事件で国民への説明から逃げつづけている甘利明氏が幹事長、暴言マシーンの麻生太郎財務相が副総裁と、さっそく安倍政権時の「3A体制」を復権させた岸田文雄・次期首相だが、さらに「安倍政治の復活」を証明するような人事案が飛び出した。
 というのも、事務担当の官房副長官に、安倍政権時代に内閣情報官としてさまざまな謀略を仕掛け「官邸のアイヒマン」と呼ばれてきた北村滋・前国家安全保障局長を起用する方向で検討に入ったというからだ。
 しかし、これも案の定と言わざるを得ない。本サイトではいち早くお伝えしていたように、岸田氏が総裁選への出馬表明をおこなう少し前から、北村氏と、安倍政権で「影の総理」と言われてきた今井尚哉・元首相補佐官が岸田陣営に出入り。自民党議員や党員の情勢情報をあげてきたほか、公安ネットワークを使って石破茂氏や河野太郎氏のスキャンダルを必死で探していると囁かれていた。しかも、北村氏は岸田氏と開成高校の同窓で、北村氏は安倍氏と岸田氏をつなぐパイプ役にもなってきた。
 つまり、安倍晋三・前首相は「高市早苗を新総理に!」と極右・ネトウヨ層を盛り上げる一方、ちゃっかり岸田氏のもとに最側近を送り込んでコントロール。新政権でも暗躍させようというのである。
 しかも、北村氏にとってもこの人事は、権力中枢への念願の返り咲きでもある。
 北村氏は第1次安倍政権で首相秘書官に就任し、安倍首相は北村氏に全幅の信頼を寄せ、側近中の側近として重用してきた。とくに第2次政権で内閣調査室のトップに就任させてからは、まるで私兵のような役割を担わせてきた。内閣情報官の首相への定例報告は週1回程度だったのだが、北村氏はほぼ毎日のように首相と面会。それは2019年に国家安全保障局長に就任させてからもつづいた。
 ところが、菅政権になると一転。安倍政権時から官邸内は「今井・北村」と「菅・杉田」で溝があったため、北村氏と二人三脚で安倍前首相に仕えてきた今井首相補佐官は内閣官房参与へと外され、菅義偉首相は北村氏と同じ元エリート警察官僚である杉田和博官房副長官をそのまま側近として重用。北村氏は国家安全保障局長のままだったが、官邸中枢から遠ざけられるようになった。実際、北村氏は今年7月に股関節の治療を理由に国家安全保障局長を退任したが、これも北村氏本人は退任する気がなかったにもかかわらず、NHKなどが退任の報道を出したことで既成事実化し退任に追い込まれたという話もある。
 つまり、菅首相によって体よく追い払われたものの、安倍前首相の傀儡である岸田氏が次期首相となったことで北村氏は完全復活、めでたく権力中枢に戻ろうとしている……というわけだ。

前川喜平文科次官の「出会い系バー通い」報道も公安と内調が仕掛けたものだった
 たとえば、2014年、小渕優子衆院議員や松島みどり衆院議員など、当時の安倍政権閣僚に次々と政治資金問題が噴出した直後、民主党(当時)の枝野幸男幹事長、福山哲郎政調会長、大畠章宏前幹事長、近藤洋介衆院議員、さらには維新の党の江田憲司共同代表など、野党幹部の政治資金収支報告書記載漏れが次々と発覚し、政権の"広報紙"読売新聞や産経新聞で大きく報道された。実は、この時期、内調が全国の警察組織を動かし、野党議員の金の問題を一斉に調査。官邸に報告をあげていたことがわかっている。
 また、その翌年の2015年、沖縄の米軍基地問題で安倍官邸に抵抗している翁長雄志・沖縄県知事をめぐって、保守メディアによる「娘が中国に留学している」「人民解放軍の工作機関が沖縄入りして翁長と会った」といったデマに満ちたバッシング報道が巻き起こったが、これも官邸が内調に命じてスキャンダル探しを行い、流したものと言われている。
 ほかにも、2016年に浮上した民進党(当時)の山尾志桜里政調会長のガソリン代巨額計上問題や、民主党代表候補だった蓮舫氏の二重国籍疑惑SEALDsをはじめとする安保反対デモ、「イスラム国」人質殺害事件での人質のネガティブ情報などにも、内調の関与がささやかれた。
 いや、野党や反対勢力だけではない。映画『新聞記者』にもあったように、北村氏率いる内調は“安倍の私兵”として、官僚や自民党員の監視も行っている。2017年には韓国・釜山総領事だった森本康敬氏が更迭されたが、これは森本氏がプライベートの席で慰安婦像をめぐる安倍政権の対応に不満を述べたことを内調がキャッチ。官邸に報告した結果だったと言われる。
 また、2017年、「総理のご意向」文書を"本物"だと証言した文科省元事務次官の前川喜平氏に対して仕掛けられた「出会い系バー通い」スキャンダルも、映画とまったく同じで、もとは公安が調査してつかんだものだった。このとき、前川氏に脅しをかけたのは、やはり公安出身の杉田和博官房副長官だったが、読売新聞や週刊誌に情報を流したのは、北村氏率いる内調だったと言われている。
 驚いたことに、内調の謀略は同じ与党の自民党議員にも向けられていた。昨年の自民党総裁選で、内調のスタッフが全国で票の動向や“演説でウケるネタ”などを探っていただけでなく、安倍首相の対立候補だった石破茂衆院議員の言動の“監視”も行ない、官邸に報告をあげていたという。

NSCの事務方トップになった北村氏は山口敬之の事件もみ消しにも関与
 さらにきわめつけは、映画のモチーフでもあった、安倍官邸御用達ジャーナリスト・山口敬之氏による伊藤詩織さんへの「性暴行」もみ消し疑惑への関与だ。
 周知のように、この問題は2017年に「週刊新潮」(新潮社)がスクープしたのだが、記事が掲載されると知った山口氏が北村内閣情報官にもみ消し相談を行なっていた疑惑が続報で暴かれてしまったのだ。
 きっかけになったのは、山口氏が「北村さま」という宛名で〈週刊新潮より質問状が来ました〉〈取り急ぎ転送します〉と書いたメールを「週刊新潮」編集部に誤送信したためだった。北村氏は「週刊新潮」の直撃に「お答えすることはない」といっただけで否定しておらず、「北村さま」が北村氏であることは間違いないだろう。
 しかも、山口氏が「週刊新潮」に誤送したメールに、なんの挨拶や前置きもなかったことなどから、山口氏と北村氏は以前から非常に近しい関係にあり、かなり前からこの問題について相談していたこともうかがえた。
 いずれにしても、北村氏は内調をこうした安倍政権や応援団を利する謀略を主任務とする「安倍様の私的諜報機関」に変えてしまったのだ。
 そして、安倍政権はそんな人物を、今回、国家安全保障局のトップにあてようというのである。
「もともと、NSCは安倍首相が第一次政権の時に立ち上げようとしたもので、その手足となって動いたのが、当時、首相秘書官だった北村氏だったのです。北村氏は当初から、国家安全保障局を公安の支配下に納めようと動いていたのですが、結局、初代局長のポストは外務省に取られてしまった。しかし、第二次政権で安倍首相に私兵として尽くした結果、めでたく、NSCを手に入れたというわけです」(官邸担当記者)

北村の謀略で、CIA偽情報でイラク戦争起こした米国と同じ事態が
 しかし、前述したように、NSCは自衛隊の海外派兵、集団的自衛権の行使容認条件などで首相が諮問にはかる組織で、国家安全保障局長はその補佐にあたる。今度は、北村氏が安全保障や集団的自衛権行使をめぐって、内調の時に駆使した謀略をはかるということなのだ。
 これは決して妄想ではない。実際、米国でブッシュ大統領がイラク戦争を引き起こした口実になったのは、CIAが「フセイン政権が大量破壊兵器を保有している」という偽情報をあげたことだった。
 同じように、日本版CIAトップだった北村氏が、自衛隊に海外で武力行使させたい安倍首相の意向を受け、NSCを舞台に武力攻撃事態や重要影響事態をめぐる恣意的な情報を出す、そんな可能性は決して低くないだろう。
 これは、まさに謀略によって、日本が戦争に巻き込まれてしまうということを意味している。いまのところマスコミはベタな伝え方しかしていないが、もっとこの人事の危険性を追及するべきではないのか。 (編集部)