2021年10月4日月曜日

眞子さまへの「マスコミの誹謗中傷にはとても不快感」と田中優子前法大総長

 宮内庁は1日、秋篠宮家の長女・眞子さまが、「複雑性PTSD」(心的外傷後ストレス障害)と診断されていることを明らかにしました。
 実際これまでの、眞子さまの婚約者 小室圭さんのへのTVワイドショーでの執拗なバッシング報道は目に余りました。プライバシーに属するものまで手柄顔に明らかにしたうえで、争うようにして公然とバッシングを続けたのは異常というしかありません。
 それが小室さんに留まらず如何に眞子さまの心を傷められたのか、宮内庁の発表は改めて明らかにしました。
 同時に皇族の「人権」についても考えさせられました。人権的には極めて弱いお立場であることを改めて「認識」しておかなくてはいけなかったのでした。
 3日放送の『サンデーモーニング』(TBS系)にコメンテーターとして出演した法政大学前総長の田中優子氏の発言が話題となっています。
 ハフポスト日本版の記事を紹介します。
 日刊ゲンダイに森暢平 成城大学教授による「眞子さま『複雑性PTSD』公表後のTV局解説委員長の無責任な批判を問う」という記事が載りました。併せて紹介します。
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眞子さまに対する「マスコミの誹謗中傷にはとても不快感」
   田中優子氏がサンデーモーニングで表明
                 ハフポスト日本版 NEWS 2021年10月03日
 秋篠宮家の長女・眞子さまが複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されたことについて、10月3日放送の『サンデーモーニング』(TBS系)にコメンテーターとして出演した法政大学前総長の田中優子氏の発言が話題となっている。
 田中氏の番組での一連の発言を振り返る。
 
田中氏、眞子さまへの誹謗中傷「非常に不快で不可解」
 番組では、眞子さまが婚約者の小室圭さんと10月26日に結婚することが発表されたことを報道。眞子さまが複雑性PTSDと診断されたことにも触れた。
 番組司会の関口宏さんがコメントを求めると、田中氏はまず「マスコミの誹謗中傷にはとても不快感を持っています」とした上で、次のように述べた。
 
 以前から、美智子上皇后の時も、雅子皇后の時にもそういうこと(誹謗中傷)があった。で、今度は眞子さまが単に好きな人と結婚したいというだけのことなんですよね。
 彼ら(皇室)は国民のやることをなかなか批判できないし、それから訴訟も起こせないんです。つまり非常に弱い立場にいる。しかも女性ばかりです。皇室の中の女性ばかりを誹謗中傷の対象にしているっていう気がしてならないんです。
 それはなぜなのか、非常に不快であると同時に不可解なんですが、でもとにかく、その弱さを利用して購買数をあげて...みたいな気がするんですよね。やはりこれは女性に対しての言動というんでしょうかね。これをもうちょっと気をつけなければいけないだろうと思いますね。
 
 眞子さまは、どんな診断をされていたのか
 田中氏は、女性の皇族はこれまでも誹謗中傷にさらされてきたと主張。その上で、皇族の場合は誹謗中傷への対応策を講じにくい点を指摘した。
 毎日新聞の報道によると、医師による診断として、眞子さまが複雑性PTSDと診断された原因は「ご結婚に関する、ご自身とご家族及びお相手とお相手のご家族に対する誹謗中傷と感じられるできごとを、長期にわたり反復的に体験された結果」にあるとされた
 症状については、「結婚されることで、眞子内親王殿下のご結婚に関する、ご自身とご家族及びお相手とお相手のご家族に対する誹謗中傷と感じられるできごとがなくなれば、『複雑性PTSD』の改善が進むと考えられます」とまとめられた。
 眞子さまについて、Twitterでは「もうとにかく休んでほしい「26日、無理に結婚会見を開く必要はないのでは」「眞子さま叩かれすぎて気の毒です」との声があった一方、「結婚に反対する意見や批判もあり、すべてが誹謗中傷ではない」という声もあった。


眞子さま「複雑性PTSD」公表後のTV局解説委員長の無責任な批判を問う
               森暢平 成城大学教授 日刊ゲンダイ 2021/10/04
 10月1日に発表された眞子さまの「複雑性PTSD」というご病気。眞子さまを追い詰めたもののひとつは、マスメディアによる「わがまま」批判や、小室圭さんや母親への非難である。驚いたことに病名発表の翌日も、解説委員長という肩書の人物を登場させて、眞子さま批判を放送するテレビ番組があった。2日昼の「今田耕司のネタバレMTG」(読売テレビ)である。前日収録とはいえ、こういう無責任な番組が眞子さまを追い詰めていたと思うと、そのまま放送されたことが残念でならない。
 読売テレビ報道局解説委員長・高岡達之氏はまず、皇籍離脱に伴う一時金の受け取り辞退について次のように述べた。
「もらう、もらわないを、彼女(眞子さま)が決めることは法律に書いてありません。そんなことは。皇室経済法という法律にもとづいて、金額をこういう会議(皇室経済会議)で決めます。(略)最も日本で法律に厳しいご一家です。だから、そこの方が『私の気持ちがこうだから』、それもね、前代未聞なんです。よくあるでしょ、地方の知事さんでね、お役所で、『ややこしいことがありましたから、お給料返納します』、そんなもん認められませんから。返上しますというお気持ちはいいけども、それを許可するために議会を開き、条例を変え法律を変え(る)」
 高岡氏は都道府県知事の給与返上が議会で決まることとの対比で、眞子さまの意向で一時金辞退が決まるのはおかしいと主張する

■皇室制度について理解不足
 解説委員長ともあろう人が、皇室制度の基本的なことがわからないまま世論誘導してしまっている。まず日本国憲法を最初から読んだほうがいい。憲法は天皇がご自分の意志を持つことを禁止していない。国事行為は内閣の助言と承認にもとづくと、きちんと明記してある。
 公的行為や私的行為についても天皇・皇族が何かを発意したら、内閣の付属機関たる宮内庁が助言(アドバイス)し、最終的に承認される。天皇・皇族の発意が禁止されているわけではない。天皇・皇族は意思を持つ人間である。税金を払っている「国民」に隷属しているわけでもない。ただ、その意思の実現には、内閣の助言と承認が必要という建てつけになっている。
 以前から一時金の受け取りに批判があることに悩んでいた眞子さまは、宮内庁参与たちに相談し、前職と現職の宮内庁長官とも話し合った。地方議会での同意のプロセスは、この場合、これらの相談である。宮内庁は、内閣法制局にも、杉田和博内閣官房副長官とも相談し、菅義偉首相にも話を通した。そのうえで、受け取り辞退という眞子さまの意向を「承認」し、宮内庁として一時金受け取りは義務ではなく、皇室経済会議を開催しないと決めたのである。
「私の気持ちがこうだから」という眞子さまの「わがまま」で決まったわけでも、「前代未聞」と評価されるべき驚天動地の出来事でもない
 筆者自身は、一時金はぜひ受け取っていただきたかったという気持ちが強い。眞子さまがここまでの気持ちを持ったのは、眞子さまの気持ちに気がつかず、ただ皇族に公的役割ばかりを押しつける高岡氏のような言論であったことは指摘しておきたい。

■「わがままなプリンセス」というレッテル貼り
 高岡氏の意見を受けて、司会の今田耕司さんは「そういう説明をお二人にしたときに、2人はわからないんですか。『納得できない』『そんな時代じゃない』とか、そういうことなんですか。今、こんなにこじれてしまってるのは」と述べた。
 今田さんは、眞子さまが法律を理解せず、アドバイスにも耳を傾けず、ただ「納得できない」と言っているような「わがまま」なプリンセスだと思ってしまっている。タレントである今田さんが皇室に詳しくないのは仕方がない。しかし、そこに誘導したのは、解説委員長である高岡氏である。高岡氏の説明によって、今田さんのような誤解をした視聴者は多いであろう。解説委員長ともあろう人物が、自らの言論の責任をどのように感じているのだろうか。
 高岡氏は、小室さんの髪型についても批判する。
「(ここは)日本です。日本で、今田さんも堅いところに行かれることがあると思います。例えば、銀行におうち買うののお金の相談とか、ポニーテールの行員が並んでる銀行で金借りまっか? 国会議員がみんなポニーテールで壇上……、昔1人いましたけど、並んでる国会信用しますか?」
「日本に帰ってくるとわかった時点で、向こうの航空会社から、だいたい今どきネットで自分が日本でどない思われてるかわかってるわけですよ。(略)一般人だけれども、帰ってどういう扱いされるかがわからんような人間であったら困るんじゃないですか? もうニューヨーク散髪屋開いてますよ。行ったらいいじゃないですか!」

■皇族の婚約者に「わかれよ!」
「4年前に宮様と並んで会見した時点から、一銭の税金も使ってないかという話なんですよ。(略)並んで(会見を)した瞬間からもう皆さんの血税は彼に流れるわけです。彼が好まなくても。そういう方との結婚を覚悟するぐらいなら、国民がうしろでどう思うかいうこともわかれよ!」
 髪型によって、あたかも小室さんの「信用」がないかのような議論である。公共の電波を使った髪型批判が許されないのは、これまでも指摘したから繰り返さない。読売テレビの解説委員長という肩書の人物によってなされ、病名公表の翌日にも堂々と放送されている。「わかれよ!」という言葉使いも、立場ある人物が皇族の婚約者に投げ掛ける言葉とも思えない
 この番組は関西地方と九州の一部だけで放送されている。ローカルだから、解説委員長が適当なことを言っていいわけではない。準キー局にも相当な影響力がある。無責任な放送は、無責任な世論を形成する一因となる。
 病名公表後も、眞子さまをなお追い詰めている読売テレビの責任は重い。

森暢平(もり・ようへい) 成城大学文芸学部教授。元毎日新聞記者。著書に『天皇家の財布』(新潮社)、『近代皇室の社会史』(吉川弘文館)、『皇后四代の歴史──昭憲皇太后から美智子皇后まで』(吉川弘文館、共著)、『「地域」から見える天皇制』(吉田書店、共著)などがある。