岸田首相は「幅広い国民の所得を引き上げる」と述べましたがその具体策はあるのでしょうか。そもそも総裁選の時に「新自由主義を転換し新しい資本主義を実現する」としていましたが、その後「新自由主義からの転換」は口にしなくなり、「新しい資本主義の実現」についても具体策はなく、いま明らかになっている範囲では安倍・菅政治の踏襲でしかありません。
日本に実質的に新自由主義が導入されたのは40年前とも言われますが、小泉政権によって意識的に取り入れられてから約20年になります。
孫崎享氏が「日本の『没落』を国民は気付いているか」とする記事を出しました。
それによると20年の日本の平均賃金はOECD加盟35カ国中22位で、1人当たりのGDPは日本は世界の中で第45位というのが実態です。
なぜこうした状況に陥ったのかについて、孫崎氏は、かつて日本が世界第2の経済大国になったとき、世界各国はその理由を、①教育水準 ②軍備に金を使わずに経済投資 ③官庁の政策提言に加え、政・経・官が一体となっての行動 と分析しましたが、それが今や一変して教育への公的資金投入はOECD加盟国など42カ国中 日本は39番目で、日本は教育を軽視する国となっているからだと述べました。特に第一次安倍政権になってからは義務教育の改悪が強行され、軍備に金を使わずどころか米国に要求されるままに年額5兆円以上を投じるように様変わりしました。
義務教育から大学に至るまでの教育の荒廃を放置し、新自由主義を続け、軍事的脅威を煽りつつ軍事費に巨額を投じる軍国主義化に進むなら、日本はひたすら「没落」への道を歩み続けることになります。
孫崎氏のブログを紹介します。
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日本外交と政治の正体
日本の「没落」を国民は気付いているか…平均賃金、個人当たりGDPともに韓国を下回る
孫崎享 日刊ゲンダイ 2021/10/08
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
自民党の岸田新総裁は「幅広い国民の所得を引き上げる」ことを提言している。
日本は今、経済的に没落の道を歩んでおり、経済誌「エコノミスト」(10月5日号)は<OECDによると、20年の日本の平均賃金は3万8514ドルでOECD加盟35カ国中22位であり、同4万1960ドルで19位の韓国を下回った>と報じている。
この種のデータは、これに限らない。世界有数の情報機関であるCIA(米中央情報局)のサイトである<WORLD FACTBOOK>は、各国の「個人当たりGDP」を掲載している。
香港、マカオなどの地域も一単位として扱っているが、日本は世界の中で第45位。GDPは4万1429ドル。これに対し、韓国は41位(4万2765ドル)である。
日本国民は、「平均賃金」「個人当たりGDP」で日本が韓国の下位にあることを、どれだけの人が知っているのだろうか。
「労働者」ではなく、「企業」はどうか。
「トヨタ自動車」は世界に冠たる企業であり、アジア諸国のほぼトップに位置すると思うだろう。ところが、日経の東アジア企業の時価総額のランキングによると、1位は「テンセント」(中国)、2位は「TSMC」(台湾)、3位は「アリババ集団」(中国)、4位は「サムスン電子」(韓国)、5位は「貴州茅台酒」(中国)。そして6位が「トヨタ自動車」で、7位は「中国工商銀行」、8位は「招商銀行」、9位は「CATL」、10位が「美団」で、いずれも中国企業である。
テレビなどで「日本は最高」という番組がしばしばあるが、日本は没落の中にいるのが実態だ。なぜ、こうした状況に陥ったのか。
日本は一時、世界第2の経済大国だった。この時、世界各国は「日本の驚異」が生じた理由を調査し、①教育水準 ②軍備に金を使わずに経済投資 ③官庁の国益的政策提言に加え、政・経・官が一体となった行動 ― と分析した。
だが、これらの状況は今や一変した。教育への公的資金投入を見ると、OECD加盟国など42カ国中、日本は39番目であり、対GDP比で教育投資額は英仏米はもちろん、韓国よりも低い。日本は教育を軽視する国となっているのである。
このままだと日本の将来は悲惨だ。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。