安倍亜流の菅氏は、ご丁寧にも「訊かれたことに答えない」、「人の話を理解できない」、「キチンと説明出来ない」をそっくり引き継いだ挙句に、突然「政権をぶん投げる」ことまで安倍劇場を再演しました。
1日に首班に指名される岸田氏についてしんぶん赤旗は「岸田新総裁は安倍・菅直系/何から何まで路線継承 (jcp.or.jp)」という記事を出しました。実態はその通りなのですが、そうでなければ総裁に当選できないという意味で、党内力学上止むを得ない面がありました。
それにしても、早くも党内人事で甘利明氏を幹事長に、高石早苗氏を政調会長にという、あってはならないことが早速起きていて絶句ものですが、それも安倍・麻生の掣肘下の人事では仕方がなかったのでしょう。いずれは打倒されるべき政権ですが、その過程で岸田氏がその掣肘からどこまでから脱却できるかがポイントになります。
辛口で知られる植草一秀氏が珍しくブログに「侮れぬ自民党の力示した総裁選」と、総裁選の結果を評価する記事を出しました。
それは、日本は2001年以降、鳩山内閣の1年を除き20年間にわたって「新自由主義経済政策」路線を歩み、その結果世界有数の格差大国に成り下がり、年越し派遣村のような惨事が繰り返される事態になりましたが、総裁選中、岸田文雄氏(と野田聖子氏)はそこから脱却し福祉国家経済政策に変えることを主張していたので、「路線が修正される可能性がある」として相対的にベストの人物が選ばれたと評価しました。岸田氏には是非 福祉国家経済政策に修正して欲しいものです。
ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」を紹介します。
それとは別に、日刊ゲンダイに「『高市さんを幹事長に推せ!』派閥幹部が頭を痛める安倍前首相からのしつこい電話」とする記事が載りました。それは、安倍氏が極右の高市氏を最大限に評価して、何としても自民党の中心に据えたいとする執念を示すもので、あまりのエクセントリック(偏芯・異常)さに呆れます。
まだまだそうした人物がデカイ顔をしている現実を知らされます。併せて紹介します。
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侮れぬ自民党の力示した総裁選
植草一秀の『知られざる真実』 2021 年 9 月 29 日
9月29日に投票日を迎えた自民党の党首選。
勝利したのは岸田文雄氏だった。
党員票382票、議員票382票で行われた1回目の投票結果は以下の通り。
岸田文雄 国会議員票146票 党員票110票 合計256票
河野太郎 国会議員票 86票 党員票169票 合計255票
高市早苗 国会議員票114票 党員票 74票 合計188票
野田聖子 国会議員票 34票 党員票 29票 合計 63票
1回目の選挙で過半数に達した候補はいなかった。
1回目の投票でトップに躍り出たのは岸田文雄氏だった。
過半数を確保した候補がいなかったため、上位2者で決選投票が行われた。
投票は47都道府県1票ずつの党員票47票と国会議員票382票で行われた。
投票結果は以下の通り。
岸田文雄 国会議員票249票 都道府県票 8票 合計257票
河野太郎 国会議員票131票 都道府県票39票 合計170票
この結果、岸田文雄氏が自民党総裁に就任し,10月4日に召集される臨時国会で第100代内閣総理大臣に就任する見通し。
メディアは河野太郎人気をはやし立てたが河野太郎氏は大差で敗北した。
河野太郎氏は、国民は自分を総理に選出すると嘯(うそぶ)いていたが、国民の多数は河野氏敗北、岸田氏選出の結果を歓迎していると思われる。
所詮は自民党の党首選であり、誰が選出されても大転換は起こらない。
しかし、各候補に差異がないわけではなかった。
重要な二つの視点がある。
第一は経済政策路線。
2001年以降、自民党の経済政策路線の中核に新自由主義が置かれた。
大資本の利益を極大化すること、そのために労働者への分配を極限まで圧縮すること。
大資本のための経済政策運営が強行された。
その結果として、日本は世界有数の格差大国に成り下がり、年越し派遣村のような惨事が繰り返された。
これに対する基本路線が福祉国家路線。
最適資源配分よりも所得再分配を重視する考え方と表現することもできる。
自民党政治の二大潮流である清話会(旧福田派)と平成研(旧田中派)はそれぞれが新自由主義経済政策と福祉国家経済政策を代表する政策集団だ。
大平正芳氏の系列である宏池会は平成研に近い考え方を示してきた。
今回総裁選で新自由主義経済政策路線を提示していたのが河野太郎氏と高市早苗氏。
これに対して岸田文雄氏と野田聖子氏は福祉国家経済政策の主張を示していた。
第二の視点は人格。
首相の条件として最重要であるのが「人格」。
人格面で最重要であるのが「公私の分別」。
安倍・菅内閣の最大特徴は「私の優先」だった。
「公」よりも「私」を優先する。
森友・加計・桜疑惑は、すべて安倍氏が政治に「私」を持ち込んだもの。
菅氏も「公」の視点ではなく「私情」を軸に官僚人事を壟断した。
為政者に求められる最重要の資質が高邁な精神性、公の優先である。
この人間性、人格面での比較をすれば、岸田文雄氏と野田聖子氏の評価が高かったと言える。
岸田氏は経済政策における「新自由主義からの脱却」を明示した。
2001年以降、鳩山内閣の1年を除き20年間にわたって日本の経済政策の中核に位置付けられてきた「新自由主義経済政策」の路線に修正が加えられる可能性がある。
また、安倍・菅内閣と比較して、人格面での優位が岸田氏に認められた。
問題は自民党の私優先路線派の3A=安倍・麻生・甘利の影響力を排除できるのかどうか。
この点を注視する必要がある。
しかし、自民党は4人の候補者のなかでは最適な人物を党代表に選出したと言える。
岸田内閣の下で実施される次の衆院総選挙は野党にとって非常に厳しいものになる。
野党は謙虚に低迷を反省し、総選挙に対する取り組みを一気に加速しなければならない。
(以下は有料ブログのため非公開)
「高市さんを幹事長に推せ!」派閥幹部が頭を痛める安倍前首相からのしつこい電話
日刊ゲンダイ 2021/09/30
「総裁選は終わった。ノーサイドだ」
自民党の岸田文雄新総裁(64)は総裁選の投開票が終わった後、こうあいさつしていたが、実際は違うらしい。幹部ポストをめぐって水面下で激しい綱引きが行われているというのだ。党最大派閥「細田派」の所属議員がこう明かす。
「総裁選直後から、安倍さんが幹部にしつこく電話をかけてくるのです。『高市さんを幹事長に推せ』と」
安倍氏は、自分が号令をかけて高市早苗前総務相(60)を押し上げ、それが決戦投票につながり、岸田氏が勝ったのだからポストを与えろ――と言いたいらしいが、理由はそれだけじゃないという。
「安倍さんは菅政権で自分を応援していた右派系支持者が離れたと思っていて、それが不満だったようです。だから、高市さんを幹事長に就けて彼らの支持を取り戻したい。総裁選後、『(これで)多くの自民党支持者が戻った』と話していたのは、その表れです。でも、こう言っては何ですが、安倍さんはもう、うちの派閥を離れているのです。しつこく電話してくるのはたまりませんよ」(前出の細田派議員)
「ノーサイド」どころか、これからが本当の「キックオフ」らしい。