2021年10月18日月曜日

米中対立で日本は安易に米に与するべきでない(しんぶん赤旗)

 オバマ大統領時代には米中の経済協力は緊密で、毎年定期的に双方の国に舞台を変えながら数百人規模の経済官僚や経済人たちが協議を行うなど、その親密度は日米の比ではありませんでした。それがトランプ大統領になってから中国叩きに必死になったのはトランプの性格にもよりますが、基本的にはGDPで世界第2位になった中国がいずれ米国を抜き去るだろうと推定されるのに対して、それをなんとか防止したいからに他なりません。

 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、日本のGDPが世界第2位に浮上した時には、米国は日本を叩くことに必死でした。
 日米貿易不均衡の是正を目的として「日米構造協議」が1989年~1990年に、その後1993年に「日米包括経済協議」と名を変え、1994年からは「年次改革要望書」に変わりました。それらは米国の国益追求に貫かれた日本への内政干渉で一貫していて、多くは日本の国益に反するものでした。年次改革要望書」では、毎年米国の要望について各項目毎に実施状況を報告させるなどして実践を強要しました。
 多くの国民がそうした事実を知ったのは関岡英之著『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書 04.4.21) に拠ってで、2008年に民主党の鳩山内閣が登場してようやく廃止されました。
 その内容には驚くべきものが多く、公共事業に対して1995年~2007年の13年間に630兆円を投入することを約束させられたのはそのいい例で、日本はそれによって健全財政から巨額の赤字財政国家に転落しました。小泉・竹中による郵政民営化法も米資本に郵政株を取得させるのが狙いでした

 今月に入って中国が1日から4日に戦闘機など延べ約150機を台湾の防空上の監視空域に進入させたことをNHK等が報じていますが、その時に日米英など6カ国の艦艇が沖縄南西の海域で共同訓練を行っていたことは報じませんでした。その後6カ国4日から9日まで南シナ海に場所を移し別の共同訓練実施したことも。
 米国には米国の必要性があって中国敵視政策を進めている訳なので、隣国である日本が安易にそれに同調するのは間違いです。
 しんぶん赤旗が「米中対立と日本 緊張高める軍拡路線の転換を」とする「主張」を掲げました(17日)。16日には「金融課税先送り 不公平たださず何の『分配』か」との主張を出しています。併せて紹介します。
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主張 米中対立と日本 緊張高める軍拡路線の転換を
                       しんぶん赤旗 2021年10月17日
 目前に迫った総選挙(31日投票)では、米国と中国の対立激化をめぐり日本が進むべき針路が争点の一つとして問われています。自民党・公明党政権はバイデン米政権に追随し、日米同盟と日本の軍事力を一層強化し、中国に力で対抗する姿勢を鮮明にしています。中国が台湾周辺や尖閣諸島をはじめ東シナ海や南シナ海で執拗(しつよう)に繰り返している覇権主義的行動は断じて許されません。しかし、軍事と軍事の対決は軍拡競争の悪循環を招き、不測の衝突などから破滅的な戦争を引き起こしかねません。

「臨戦態勢の軍事行動」
 今月2日と3日、日米英など6カ国の艦艇が沖縄南西の海域で共同訓練を行いました。米原子力空母ロナルド・レーガンとカール・ビンソン、英空母クイーン・エリザベスのほか、「ヘリ空母」と呼ばれる海上自衛隊のヘリ搭載型護衛艦「いせ」などが参加しました。米英の空母3隻が集結するのは異例です。これに対し中国は1日から4日に戦闘機など延べ約150機を台湾の防空上の監視空域(防空識別圏)に侵入させました。
 沖縄の地元紙は、これらの動きを「沖縄周辺の海と空で、臨戦態勢と言えるほどの軍事行動が繰り広げられている」(琉球新報7日付)と指摘しました。
 日米英など6カ国は4日から9日まで南シナ海に場所を移し、別の共同訓練も実施しました。岸信夫防衛相は、米英の空母などとの訓練は「『自由で開かれたインド太平洋』の維持・強化に向けた結束が不可逆的であることを示すもの」と強調し、「引き続き活発に共同訓練する」と表明しています(5日の記者会見)。
 加えて重大なのは、3日に、「空母化」の改修を進めている海自のヘリ搭載型護衛艦「いずも」で、米海兵隊のステルス戦闘機F35Bの発着艦試験が行われたことです。岸防衛相は「日米の相互運用性の向上に資するもので、日米同盟の抑止力・対処力の強化にもつながる」(同)と述べ、米海兵隊のF35Bが空母化される「いずも」を使用することを明らかにしました。
 自民党の選挙公約は、中国に対抗して「防衛力を大幅に強化する」とし、GDP(国内総生産)の2%以上という目標も念頭に軍事費の増額を目指すとしています。「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力」=敵基地攻撃能力の保有も進めるとしています。岸田文雄首相はすでに、「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の改定論議を始めるよう関係閣僚に指示しています。
 岸田氏をはじめ自公政権内では、米国の戦争に自衛隊が参加・協力する安保法制を「台湾有事」で発動する可能性も公然と語られています。憲法違反の安保法制の廃止、敵基地攻撃能力の保有にもつながるF35など米国製兵器の大量購入や「空母化」などの大軍拡から軍縮への転換は喫緊の課題です。

憲法9条生かした外交へ
 中国の覇権主義的行動に対しては、国際法に基づく冷静な外交的批判が何より重要です。「中国包囲の軍事的なブロックをつくるという排他的アプローチではなく、中国も包み込む形で地域的な平和秩序をつくっていく包括的なアプローチが大切」であり、「地域と世界の平和に貢献する、憲法9条を生かした外交」(日本共産党の総選挙政策)こそ必要です。


主張 金融課税先送り 不公平たださず何の「分配」か
                      しんぶん赤旗 2021年10月16日
 岸田文雄首相が、自民党総裁選で公約としていた金融所得課税を見送りました。株取引にかかる税率が低すぎることは以前から広く問題にされていました。「成長と分配の好循環」「新しい資本主義」を口にするのであれば、不公平税制に手をつけない道理はありません。所得再分配の根幹をなす税制のゆがみを放置したままで、コロナ危機を乗り越え、経済を再建することはできません

富裕層の負担拒む首相
 岸田氏は「1億円の壁の打破」「金融所得課税の見直し」を総裁選の政策集に明記しました。所得税は高所得ほど税率が上がる累進課税です。しかし実際の負担率は年間所得が1億円を超えると所得が多くなるほど下がっていきます。株取引にかかる税率が低いので株で多くの利益をあげる富裕層ほど負担が軽くなるためです。
 給与所得にかかる所得税率は住民税を含めて最高55%です。これに対して株の値上がり益への税率は20%です。欧米では30%前後の税率が当たり前です。米国のバイデン政権は株式売却益にかかる国税の税率を5%引き上げることを提案しています。
 株取引への日本の異常な優遇税制は累進税制を損ない、税収を減らすとして見直しを迫られてきました。経済同友会は2016年の税制改革提案で「株式譲渡所得および配当所得課税の税率を5%程度引き上げる」ことを提言しました。経済協力開発機構(OECD)は17年の対日経済審査報告で、株売却益や配当の税率を25%に引き上げることを勧告しました。
 ところが岸田氏は首相就任後、「まずやるべきことがある」として、いつ着手するかも示さず先送りしました。参院本会議で日本共産党の小池晃書記局長が「なぜ優先順位を下げたのか」と質問しても答えません。株で大もうけする富裕層に忖度(そんたく)した結果であることは明白です。
 日本の株価は、安倍晋三政権が日銀と公的年金積立金の二つの公的マネーを株式市場につぎ込んだことによってつり上げられました。コロナ危機下の株価上昇で富裕層の資産は倍に膨らんでいます。首相が「分配」を言うなら、応分の負担を求めるのは当然です。
 日本共産党は「新経済提言」で、富裕層の株取引への税率を欧米並みに引き上げることを提案しています。株の譲渡所得には、高額部分に欧米並みの30%の税率を適用すべきです。株式配当には、少額の場合を除いて、他の所得との分離課税を認めず、総合累進課税を義務づけます。これによって富裕層の配当所得には所得税・住民税の最高税率が適用されます。

再分配機能の強化こそ
 消費税について岸田首相は「当面手を触れることは考えていない」として共産党が求めた5%への引き下げを拒みました。大企業の法人税負担率がさまざまな優遇措置によって中小企業の半分程度になっていることも見直さず、不公平税制を正す姿勢がまったくありません。コロナ危機で広がった格差を是正するために、税による再分配機能を強化して国民の暮らしを立て直すことが急務です。
 野党の共通政策は消費税減税、富裕層の負担強化を提言しています。公平な税制を実現するために市民と野党の共闘で政権交代を実現することが重要です。