2021年10月5日火曜日

コロナを抑え込んだ平井伸治・鳥取県知事に聞く(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイが、「注目の人 平井伸治鳥取県知事に直撃インタビューしました。質問者が良く平井知事の実績を調べた上でのインタビューになっています。

 平井氏は20年7月から政府のコロナ対策分科会のメンバーを務め、9月に全国知事会会長に就任しました。
 平井知事は、鳥取県で第5波のコロナ感染を抑え込めた理由を次のように語っています。

昨年2月から、厚労省の濃厚接触者の要件濃厚接触者の定義 「15分間、1m、マスクなし」を離れて、怪しいケースは全部検査に変えました。その手法を1年半で発展させ、第5波で有効に機能したと思います。第5波の要因となったデルタ株は伝播スピードが速く、感染範囲が広い。濃厚接触者だけの検査では2次、3次、4次感染を招き、ねずみ算式に感染者が増える。こうなると、ロックダウン的手法などで感染を鎮めなくてはならなくなる。中途半端じゃなくて、ローラー作戦で全部検査をするという手法が有効なのです。これを鳥取県はやった。たくさんの検査を実施するので、感染者数はいったん跳ね上がりますが、1週間ほどでだんだん減り、その先の感染は止まるのです。医療逼迫も回避でき、ロックダウン的手法も必要ない。保健所の努力である程度抑えられるのです

 因みに鳥取県のコロナの累計死者は5人、現在の重症者数はゼロ、感染者数累計1620人に対して退院・療養解除者数1599人です。
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注目の人 直撃インタビュー
平井伸治・全国知事会会長「岸田新政権が新型コロナにどう向き合うのか、最重視しています」
                          日刊ゲンダイ 2021/10/04
 新型コロナウイルスがようやくピークアウトし、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が10月1日、全面解除された。なぜ政府のコロナ対策は第5波では効かなかったのか。国と地方の連携はうまくいっているのか。先月、全国知事会の会長に就任した、鳥取県知事の平井伸治氏に聞いた。
                ◇  ◇  ◇
 ――菅政権の新型コロナウイルス対応をどう評価しますか。
 菅首相自身はワクチン接種率を引き上げようと、リーダーシップを発揮しました。政治的に大きな目標を打ち出したことで、7月に高齢者接種が行き渡ったのだと思います。

 ――菅首相の退陣表明を受けて、平井知事は「残念ながら未解決なことがたくさんある」とコメントしました。
 第5波は火が燃え盛る時に、十分な対策が取れたのか疑問です。対策の中心は飲食店への時短営業要請と酒類提供禁止が中心でした。第4波までは時短要請により感染を抑えられたという“成功体験”もあったのでしょう。酒類提供禁止を加えれば、大丈夫と踏んだのでしょうが、第5波では必ずしも効いたとは言えず、飲食店対策以外にも接触を減らすいろいろな工夫は考えられました。

 ――政府にどんな要請をしましたか。
 自治体が別の手だてを取れるように裁量権を与えてほしいとか、一歩踏み込んだ「ロックダウン的手法」の実施などを再三、申し入れましたが、結局、かなわなかった。そのうち、火がどんどん燃え盛り、全国に飛び火し、大火事になってしまいました。

■現場を信頼したフォローアップ体制が不十分です。
 ――政府は現場を熟知している知事を尊重すると言いながら、知事の意向をスルーすることが少なくありません。
 昨年春の緊急事態宣言の全国発令に伴う飲食店への協力金支払いの財源手当てについて、政府は当初渋っていましたが、最終的には地方の要請を受け入れてくれました

 ――その後、政府の対応に変化は見られたのですか。
 宣言や重点措置は全国ではなくピンポイントで指定するようになりました。火が燃え盛っているのだから、宣言や重点措置の適用を広げてとお願いしても、予算を気にしてか応じてくれません。制度が成熟し、自治体の要望の可否を判定する役所一流の「査定」が広がったのかもしれません。

 ――国と地方の連携は重要です。
 大きな意味で考えると、国と地方の関係ではこれほどパートナーシップを取ろうと双方努力したことはなかったと思います。コロナ禍は地方分権のひとつのターニングポイントになるかもしれません。ただ、まだ十分に現場の状況に即した、現場を信頼した政府のフォローアップ体制が十分できていません。地方側には焦燥感が残っています。

 ――知事同士の連携はどうですか。
 47都道府県の共通の敵はウイルスです。お互いに最前線で苦労している首長同士の協力関係は強まったと言えます。これまでは、距離もあり、全知事がまとまって動くことは難しかったですが、オンライン会議などタイムリーに情報共有を図り、行動を起こせるようになりました

 ――47都道府県も一様でなく、大都市よりも地方が感染を抑えている傾向がうかがえます。
 大都市など感染拡大に悩む自治体などは、厚労省や保健所実務の濃厚接触者の定義に忠実なのです。「15分間、1メートル、マスクなし」という基準でふるいにかけている。自治体が悪いのではなく厚労省の通達通りにやっていると思いますが、それでは不十分だったのです。

鳥取県は初動で“背伸び”したことが現在の余力に

 ――鳥取県は徹底検査で感染を抑えています。
 昨年2月から、厚労省の濃厚接触者の要件を離れて、怪しいケースは全部検査に変えました。その手法を1年半で発展させ、第5波で有効に機能したと思います。第5波の要因となったデルタ株は伝播スピードが速く、感染範囲が広い。濃厚接触者だけの検査では2次、3次、4次感染を招き、ねずみ算式に感染者が増える。こうなると、ロックダウン的手法などで感染を鎮めなくてはならなくなる。中途半端じゃなくて、ローラー作戦で全部検査をするという手法が有効なのです。これを鳥取県はやった。たくさんの検査を実施するので、感染者数はいったん跳ね上がりますが、1週間ほどでだんだん減り、その先の感染は止まるのです。医療逼迫も回避でき、ロックダウン的手法も必要ない。保健所の努力である程度抑えられるのです。

 ――今年3月、鳥取市や倉吉市でクラスターが発生した際、検体のウイルス量分析を受けて、平井知事は「我々はまだ解明できていないが、何か注意しなきゃいけないウイルスの連鎖が今、起きていますよ」と県民に警戒を呼びかけた。最悪の事態を想定した対応だった。一方、政府の対応は楽観的に見える。
 楽観的というか、もっと現場の感染の状況を見るべきだと思います。政府もメディアも統計上の数字を見て、前週から「増えた、減った」と対応しています。しかし、現場で真剣に一つ一つのウイルスを追いかけていると、こういうふうに感染が広がったから数字が増えたとわかるわけですよ。ウイルスのうつり方をつかんで、それに即した対策を県民と一緒に取っていかなければならないのです。

■新政権は重点措置を使いやすく
 ――鳥取県の検査能力は人口10万人あたり約1100件と全国トップ。確保病床数も人口あたりで全国2位です。もともと鳥取県は高齢者数に比して、医療機関が少ないはずです
 そうです。昨年1月15日に国内で最初のコロナ感染者が見つかり、16日に県相談窓口を設置して対策に取り掛かりました。その後、医師会と話をしたり、庁内組織をつくった。そして、検査の基準を広いものに改めました。なにせ病床が少なく、高齢者も多い。「これは大変だ。武漢のようになってしまう」という危機感を持ちました。病床を頼み込んで増やしてもらい、検査体制も格段に引き上げた。かなり“背伸び”をしましたが、それが今の余力になっていると思います。県内では生徒1人の感染が判明すると全校検査が普通に行われています。大都市ではなかなかできないでしょう。検査能力を持ち、陽性が判明しても、患者を受け入れられる病床を確保していますから、安心して徹底検査をできるわけです。

 ――国が現場に即した対応ができるように、知事会長としてまずどんなことをしますか。
 自民党総裁選が終わり、近く総選挙があります。新政権発足で政治のリーダーシップも変わります。知事会としても、新型コロナに新政権がどう向き合うのか、最重視している。総裁選や総選挙に当たって、各党や各候補者にコロナ対策についての要望事項を投げかけるようにしています。できれば公約に書いてもらいたい。やるべき感染対策が取れるように、例えば、重点措置をもっと使いやすくなるようにしたい。大都市と地方で保健所の状況や感染状況、人口密度も違うので、それぞれに応じた対策が取れるよう制度も見直してほしい。また、コロナ後の日本をつくっていかなければなりません。思い切った経済対策、出口戦略も真剣に考える時期が来ていると思います。それらに惜しみなく労力と資金を割いていただきたい。地方の現場の声に即したコロナ対策をさらに深化させてほしいと思っています。
(聞き手=生田修平/日刊ゲンダイ)

平井伸治(ひらい・しんじ) 1961年、東京生まれ。東大法学部卒業後、84年に自治省(現総務省)に入省。2001年、全国最年少(当時)で鳥取県副知事。07年の鳥取県知事選に初当選。現在、4期目。20年7月から政府のコロナ対策分科会のメンバー。今年8月、過去最多となる40道府県知事から推薦され、全国知事会会長に選出。任期は9月3日から2年間。