安倍・菅政権時代にはTV報道に対して異常で違法な干渉が行われました。それはまさに「箸の上げ下げに文句をつける」だけでなく、気に入らないMCやコメンテータは局の上層部に圧力を掛けて降板させるという具合で、一応報道の自由が謳われている民主国家であり得べからざることでした。
同時にTVの弱腰もそれに負けず劣らず問題でしたが、それは9年近くに及ぶ長期の悪辣な政権の継続の中で、局の上層部が極右化されていた結果であって救いのないものでした。
それにしてもそこまで悪影響を及ぼした巨悪の安倍・菅氏がやっと首相の座から退任してホッとしたのもつかの間、今度は、自民党の総裁選で民放は連日ワイドショーで取り上げて、来る日も来る日も候補者たちがTV画面を独占しました。
間もなく衆院の総選挙があるのが決まっている中での民放のこうした態度はやはり異常です。すでに民放局の判断基準が大きく偏位していることの顕れなのでしょう。
その挙句、岸田首相が選出されてからも、10日には『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ)に、11日には『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)に、そして12日には『報ステ』(テレビ朝日)にと、3日連続で岸田首相が単独出演するという事態が起きました。
既に国会の解散と衆院総選挙の日取りが決まっている中で、自民党総裁である岸田氏だけがこうしてTVでクローズアップされるのは勿論問題で、後日厳正に審査されるべき事柄です。
LITERAが取り上げました。
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岸田首相の総選挙直前『報道ステーション』単独出演に「中立性欠く」と批判殺到!「野党も党首討論でなく単独出演させろ」の声
水井多賀子 LITERA 2021.10.14
本日14日、岸田文雄首相が衆議院を解散した。就任からわずか10日後の解散というのは1954年の第一次鳩山一郎内閣の45日間を大きく上回る歴代1位の短さだが、ボロが出ないうちに「ご祝儀」を狙って総選挙に雪崩込みたいという下心しか感じられないものだ。
だが、問題は、この間のテレビの公平性や中立性も無視した姿勢だ。たとえば、きょう、『報道ステーション』(テレビ朝日)は与野党各党の党首討論を放送するが、岸田首相はわずか2日前の12日にも『報ステ』に単独生出演したばかりだ。
この日の『報ステ』は、「岸田総理に問う“日本のミライ像”」と題し、新キャスターの元NHK記者・大越健介が「生討論で迫る」という触れ込みだったが、冒頭からおっぱじめたのは野球話。岸田首相も「(開成高校野球部時代のポジションは)セカンドかショート」などと答えた。
総裁選中からテレビは「岸田氏は愛妻家」だの「お好み焼きと納豆が好き」だの、どうでもいい話題ばかり垂れ流してきたのに、今度は「元野球少年」……。一応、大越キャスターは野党からあがっている「発言がブレている」「アベノミクスの3番煎じ」といった批判を織り交ぜながら岸田首相の経済政策を追及し、最後には核廃絶問題を取り上げて「岸田総理は核兵器禁止条約に背を向けているのでは」と迫った。だが、放送日やその前日の国会代表質問で岸田首相が拒否した森友問題再調査について追及されることは一切なかった。
しかし、問題は追及が甘いか鋭いかというものではない。あらためて指摘するまでもなく、衆院選の公示が19日、投開票が31日と直前に迫っているなかで、テレビ番組が野党の代表を出演させることもなく岸田首相だけを単独出演させ、主張を一方的に垂れ流したことだ。
しかも、この日の『報ステ』は、岸田首相をなんと30分以上も出演させたのである。解散後に野党も交えた党首討論を開催したからといって、とてもチャラにできるものではないだろう。
実際、12日の岸田首相単独出演には非難が殺到。デーブ・スペクターも〈岸田総理が報ステのレギュラー!!〉とTwitterに投稿したほどだったし、日本共産党の小池晃書記局長は〈テレビ朝日の「報道ステーション」は、総選挙直前に岸田首相・自民党総裁を単独出演させています。放送の中立性と、ジャーナリズムのあり方から見て、極めて大きな疑問を感じざるを得ません〉と指摘。同党の山添拓参院議員も〈今後は順次、岸田氏と同じ尺で野党各党の単独インタビューもするのだろう。なにしろ総選挙前なのだから〉と投稿した。
あまりにも当然のツッコミと言わざるを得ないが、しかし、総選挙直前の岸田首相の単独テレビ出演は『報ステ』だけではなかった。岸田首相は10日には『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ)に、11日には『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)に出演、なんと『報ステ』まで3日間連続で単独テレビ出演していたのである。
テレビ局や岸田官邸としては「所信表明演説を受けて政策を問うための出演」として正当化するのだろうが、それは言い訳にならない。実際、昨年9月に首相に就任して10月26日に所信表明演説をおこなった菅義偉・前首相の場合、演説をおこなった当日夜にNHK『ニュースウオッチ9』に出演したが、首相就任および所信表明演説直後のテレビ出演はこのときだけだった。
しかも、岸田首相の『報ステ』出演時は公示まで1週間のタイミングだ。報道の公平性・中立性を考えれば、岸田首相とともに野党代表を出演させて討論するか、あるいは山添議員が指摘したように、岸田首相が出演したのと同時間を使って別の日に野党の代表のインタビューをそれぞれ放送するべきだろう。だが、『報ステ』が岸田首相の単独出演から2日経ったきょう放送するのは、前述したように、与野党党首が揃って出演する党首討論。岸田首相は今週2回目の出演となる。
フジ『日曜報道』テレ東『WBS』だけでなく『報ステ』までがなぜ選挙直前の単独出演を
そもそも、御用メディアであるフジテレビの『日曜報道THE PRIME』や、菅首相時代から首相会見でよく質問者に指名され、岸田首相の初会見でも指名されていたテレ東の『ワールドビジネスサテライト』はまだしも、『報ステ』はいまだ民放を代表する報道番組のひとつだ。また、前述したように『報ステ』は元NHK記者の大越氏がメインキャスターに就いたばかり。ご存知のとおり、安倍政権以降の『報ステ』は古舘伊知郎や小川彩佳の降板をはじめ、番組リニューアルを大義名分にした社外スタッフの首切りなどが起こり、どんどんと政権に忖度した報道姿勢が目立つようになっていたが、大越キャスターの誕生でその方向性も改まるのかと注目を集めていた。しかし、そんななかで岸田首相を単独生出演させて30分以上も特集するとは──。ようするに、この間、政権批判潰しに躍起になってきたテレ朝のドン・早河洋会長の存在があるかぎり、『報ステ』の忖度報道も変わらないということなのだろう。
いや、看過できないのは『報ステ』だけではない。テレビ局はどこも自民党総裁選の告示前から候補者を連日のように生出演させ、野党が要求してきた臨時国会の招集を拒否するという憲法違反の状況を批判することもなく、さんざん自民党のPRに手を貸してきたからだ。
実際、岸田首相だけに絞ってみても、9月の1カ月間に岸田氏が出演したテレビ番組の数は20を超えているのだ。以下、列挙しよう。
9月2日 『ひるおび!』TBS(高市早苗も出演)
『報道1930』BS-TBS
9月5日 『日曜報道THE PRIME』フジテレビ
9月6日 『スッキリ』日本テレビ
『大下容子ワイド!スクランブル』テレビ朝日
9月9日 『バイキングMORE』(フジテレビ)
9月10日 『Nスタ』TBS
『日経ニュース プラス9』BSテレ東
9月14日 『BSフジLIVE プライムニュース』BSフジ
9月15日 『報道1930』BS-TBS
9月17日 『LiveNews イット!』フジテレビ(候補4人で出演)
『報道ステーション』テレビ朝日(候補4人で出演)
『ワールドビジネスサテライト』テレビ東京(候補4人で出演)
『news zero』日本テレビ(候補4人で出演)
9月18日 『自民党総裁選 討論会』NHK(※日本記者クラブ主催討論会の中継)
9月19日 『日曜報道THE PRIME』フジテレビ(候補4人で出演)
『日曜討論』NHK(候補4人で出演)
9月20日 『BSフジLIVE プライムニュース』BSフジ(候補4人で出演)
9月22日 『news23』TBS(候補4人で出演)
9月24日 『深層NEWS』BS日テレ(候補4人で出演)
9月26日 『日曜報道THE PRIME』フジテレビ(候補4人で出演)
政治的公平を無視するテレビ局 総裁選中に野党の政策をまともに取り上げたのは『モーニングショー』だけ
まさしく「メディアジャック」と呼ぶべきものだが、繰り返すがこれは岸田氏の出演に絞ったものであって、告示前には河野太郎や高市早苗、野田聖子といった候補者がそれぞれワイドショーやニュース番組に単独出演してきたのだ。
さらに、候補者が出演せずとも、ワイドショーやニュース番組はこの間、総裁選の話題を大々的に取り上げてきた。自民党は各候補の出陣式にはじまり、所見発表演説会や「党風一新の会」と候補者との意見交換会、共同記者会見、4日間の政策討論会などと“ニュースのネタ”をばらまいていたが、テレビはそのネタに食いついて毎日のように紹介してきた。
その一方、野党が打ち出す政策や動きについて紹介する時間は申し訳程度で、総裁選中に野党4党の代表らを出演させて総裁選候補者の主張と比較するなど、まともに野党の政策を取り上げたのは『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)だけ。あとは、自民党PR報道のみならず、八代英輝弁護士が共産党のデマ発言をおこなって同党と野党共闘を攻撃した問題で批判を受け、スポンサーのCM放映休止という事態に陥った『ひるおび!』が、アリバイ的に野党議員を出演させるようになったことくらいだ。
つまり、衆議院の任期満了が近づき選挙が間近に控えていることは明々白々であるなかで、テレビは視聴者のほとんどが投票権さえない政党内の選挙の報道に明け暮れ、それだけに飽き足らず、総選挙の公示まで約1週間というタイミングでも自民党・岸田首相の一方的な主張を喧伝しつづけたのだ。
もちろん、これから『報ステ』だけでなく各局の報道番組で与野党代表を集めた討論がおこなわれるが、自民党の代表たる岸田首相だけが単独インタビューを受けたことはこれで相殺されるものではない。しかも公示後はどの局も放送法や公選法を気にして、総裁選のときに繰り広げたような選挙報道はおこなわなくなる。ようするに、野党が政策について主張する機会が自民党にくらべて圧倒的に少ないまま投開票を迎えるのだ。
本サイトでも既報のとおり、今月5日放送の『ひるおび!』では、野党の代表らを出演させながらも自民党の補完勢力である日本維新の会の松井一郎代表が野党共闘にウザ絡みを繰り広げただけなく、構成や進行も“野党下げ”のために仕掛けたのかと言いたくなるような内容だったが、そのなかで芸人のバービーは「こうやって野党を一列に並べるような話し合いじゃないほうがよかった」「おひとりずつちゃんと聞けたほうが(よかった)。この間の(自民党)総裁選のときは、おひとりずつ聞けたじゃないですか」と指摘していた。まさしく至極当然の指摘だが、テレビ局側にはこの真っ当な感覚がない、ということなのだろう。 (水井多賀子)