2019年11月12日火曜日

12- ウィーン芸術展 日本大使館が公認撤回

 オーストリアと日本の国交百五十年記念事業としてウィーンで始まった芸術展について、在オーストリア日本大使館は記念事業の認定を取り消しまし。ウィーン芸術展の開会から1ヶ月以上も経ってからのことです。
 大使館はその理由を、「展示全体が『日本とオーストリアの相互理解と友好を促進する』という認定要件に合っていなかった。どの作品が原因とは言えない」「日本の国会議員から外務省に意見があったことも要素の一つ」としていますが、愛知トリエンナーレへの政府の対応に似ています。国会議員からの意見が理由の上位にあるのではないでしょうか。
 同展に出品している卯城竜太さんは公認の撤回は「『国民が自国を批評する』という民主主義国家として当たり前のことに政府がネガティブな姿勢であると、海外に広く示してしまった」と批判しています。
 同じく同展に出品している会田誠さんは「欧米ではアーティストの)政治批判やパロディーは問題にならない」「表面的な『友好』ではなく、物事の複雑さやジレンマを表現するのが現代アートのアーティストだと思う」と語っています。
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ウィーン芸術展 公認撤回 出品者、不寛容な政府に反発
東京新聞 2019年11月7日 朝刊
 オーストリアと日本の国交百五十年記念事業としてウィーンで始まった芸術展について、在オーストリア日本大使館は記念事業の認定を取り消した。政府に批判的な動画や、東京電力福島第一原発事故をモチーフにした作品が含まれていたためとみられる。出品するアーティストらは批評に不寛容な政府の姿勢に反発を強めている。

 芸術展は、日本の表現の自由の限界をテーマにした「Japan(ジャパン) Unlimited(アンリミテッド)」で、現代美術家の会田誠さんや美術集団「Chim↑Pom(チンポム)」など約二十アーティストが出展。九月二十六日~今月二十四日、ウィーンの「ミュージアム・クオーター」で開かれている。
 会田さんは、日本の首相が国際会議で演説する動画を出品。別のアーティストは、終戦後、昭和天皇と連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサー最高司令官が並んで撮影した写真のパロディーを出品した。血の付いた放射線防護服に見える作品も展示されている。

 大使館によると、芸術展の開会後に内容を審査し、先月三十日付で公認取り消しを主催者側に通知。大使館は「展示全体が『日本とオーストリアの相互理解と友好を促進する』という認定要件に合っていなかった。どの作品が原因とは言えない」と説明する。「日本の国会議員から外務省に意見があったことも要素の一つ」とするが、展示は続いており「表現の自由の侵害には当たらない」とする。
 同展に出品する「Chim↑Pom」メンバーの卯城(うしろ)竜太さんは「複雑につくられた作品の一部を切り取って『反日』と断じることは本質を見誤っている」と批判。公認の撤回は「『国民が自国を批評する』という民主主義国家として当たり前のことに政府がネガティブな姿勢であると、海外に広く示してしまった」と話している。 (梅野光春、小倉貞俊)


安倍首相風刺のウィーン芸術展 日本大使館が公認撤回
日刊ゲンダイ 2019/11/07
 公権力による表現活動への抑圧が国外に広がった。日本とオーストリア国交150年の記念事業として同国の首都ウィーンで日本の芸術家らの作品を展示していた「ジャパン・アンリミテッド」について、在オーストリア日本大使館が公認を取り消した。芸術展は9月下旬から始まり今月下旬で終了の予定。記念事業の公式ロゴが使えなくなるだけで芸術展は続いているが、開会から1カ月以上経っての撤回は異例だ。
 芸術展は日本での政治社会批判の自由と限界に焦点を当てている。放射線防護服に日の丸の形に浮かんだ血が流れ落ちるようなオブジェや、安倍首相に扮した人物が歴史問題をめぐり韓国や中国に謝罪する動画も展示されている。「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」に参加していた美術集団も出展した。
 芸術展の学芸員は共同通信の取材に「欧州の感覚では無害だと思う。ポーランドやハンガリー同様、日本でも検閲が強まっているのを感じた」と話している。


「政治批判、欧米では問題にならない」 ウィーン芸術展公認撤回で会田さん
東京新聞 2019年11月11日
 日本とオーストリアの国交百五十年記念事業として首都ウィーンで開催された芸術展で日本政府側の公認が撤回された問題で、出品している美術家会田誠さんは十日、東京都内で開かれたイベントで「欧米では(アーティストの)政治批判やパロディーは問題にならない」と話した。
 出品作を巡っては、会田さんが安倍晋三首相を思わせる人物に扮(ふん)し、歴史問題に関して中国や韓国に謝罪している場面などが、インターネットで批判された。会田さんはイベントで共同通信の取材に応じ、作品は欧米の近代文化に対し、日本の美術家が疑問を呈した作品だとし、批判された場面は「目的ではなく、流れの中での表現」だと説明した。
 公認取り消しの理由について、在オーストリア日本大使館は今回の展示の内容が「友好的ではない」などとしている。会田さんは「表面的な『友好』ではなく、物事の複雑さやジレンマを表現するのが現代アートのアーティストだと思う」と語った。