2019年11月2日土曜日

首里城が焼失 国は早急に再建へ取り組みを

 沖縄はかつて琉球王国と呼ばれた独立国家でしたが、1609年に島津の侵攻を受けて薩摩藩に従属させられました。そして1872年(明治5年)には政府によって琉球藩とされ、1879年に沖縄県として大日本帝国に併合されました(琉球処分)。
 かつて琉球王国の宮殿だった首里城はこの間2度の火災に見舞われましたが、そのたびに再建されてきました
 
 太平洋戦争の末期米軍が侵攻してきた際 米軍の砲撃によって首里城は完全に破壊されました。戦後、沖縄の人たちは首里城の復元を望み、首里城の跡地に建てられた琉球大学の移転にあわせ、1980年代から本格的な再建が始まりました。
 遺構の詳細な調査文献等の史料解析、それに戦前の首里城を知っている人たちへの聞き込みなど厳密な調査って、30年以上の歳月と多額の費用をかけて今年1月、ようやく首里城公園の全域が完成したばかりでした。
 首里城の復元は単なる複製ではなく、大日本帝国により打ち捨てられてきた沖縄の文化・伝統・技術を、研究者や職人たちが調べ直し叡智を結集し再構築したものでした。
 それは明治政府による琉球処分から沖縄戦、サンフランシスコ講和条約での沖縄切り捨てにいたるまで、本土に蹂躙され続けてきた沖縄のアイデンティティを再発見し取り戻す作業でもありました。
 
 安倍首相は「政府として責任をもって全力で再建に取り組むことを約束したい」などと述べましたが、それだけで仏・ノートルダム火災のときに寄せたような哀切の思いの表現はなく、沖縄県民の心情を思いやるような言葉はまったくありませんでした。県民の切なる願いを無視して辺野古基地の建設という暴挙に邁進している人間であれば、それもやむを得ません。今はせめて再建を表明したことを多とするしかありません。再建に従事する人たちはきっと情熱を傾けてくれることでしょう。
 
 LITERAが「琉球王朝時代から戦後復興にいたるまでの沖縄の歴史そのものであり、沖縄のアイデンティティであった首里城が全焼したのだから、県民のショックと悲しみは察するに余りある。政府は本気で首里城の再建に取り組んでもらいたい」とする記事を出しました。
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首里城炎上でヘイトデマ垂れ流すネトウヨの歴史への無知
安倍首相は沖縄県民の心情に寄り添う姿勢なし
LITERA 2019.11.01
 沖縄県の首里城で火災が発生し正殿などが全焼したことをめぐり、ネット右翼たちがTwitterなどでまたぞろ「韓国人か中国人が放火」なるデマをばらまいている。
 
 〈韓国人による放火だろ〉
 〈首里城が燃えています。放火か、日本の歴史的建造物や文化財に対して破壊活動をする背景は日本人ではない、反日マイノリティによるテロを疑うべきです〉
 〈首里城燃えたのほぼ在日の犯行だろ。普通そんなの燃やさないから。文化壊す目的以外ないでしょ〉
 〈警備体制ちゃんとしてたのか? 沖縄には反日外国人が住みついている。 首里城を狙うのは火を見るより明らか〉
 
 消防などによると、11月1日の段階で出火原因は特定できていない。これら「韓国人・中国人放火説」なる言説はまったく根拠のないデマであり、差別を煽るヘイトスピーチだ。社会的事件が起きるたびに流れるヘイトデマが、今回の首里城炎上でもまたぞろ出てきたというわけだ。
 それだけではない。ネット上では〈首里城が焼き討ちされたか、沖縄に左翼ばかり入れてるから放火されるんだよ〉〈首里城燃えても沖縄がお気の毒に思えないのは、こういう反日左翼を県民が選んでいるからなんですよ〉なるツイートも目立つ。さらに沖縄タイムスが、火災の不安やショックで小学校を休んだ児童らもいると伝えると、ネット上では〈クソザコメンタルすぎて草。沖縄県民ってこんなのばっかなん?〉〈サボりたいだけやろ。自宅が焼けた訳でもなし、なんで飯食えんやら学校行けんやら言うてんの。沖縄やっぱり変〉なるコメントがつくなど、沖縄を貶める発言が飛び出しているのである。
 
 その下劣さに言葉を失うが、呆れるのはその無知・無教養ぶりだ。首里城がどういう歴史を持ち、沖縄県民にとってどういう存在なのかわかっているのか。首里城は、かつて琉球王国の宮殿だったという歴史のみならず、沖縄戦、戦後復興にいたる沖縄の歩みそのものを象徴している
 もともと首里は、かつての琉球王国の王都であり、独自の琉球文化の中心地だったが、1609年には島津の軍事侵攻を受け、薩摩藩に従属させられた。そして明治時代の1872年には政府によって琉球藩とされ、1879年に沖縄県として大日本帝国に併合された(琉球処分)。この間、首里城は二度の火災に見舞われているが、そのたびに再建されてきた。
 だが、その“琉球文化そのもの”といえる首里城は、太平洋戦争の沖縄戦で、ほぼ完全に破壊されてしまった。日本軍は首里城の地下に第32軍司令部を設置したため、この首里周辺の中部地帯は“防衛ライン”として最大の激戦地のひとつとなった。とりわけ1945年4月後半からは米軍の総攻撃を受け、あたりは首里城もろとも壊滅。琉球王国の歴史ある文化財が、日本の起こした戦争によって破壊されてしまった。つまり、戦争での首里城焼失は、“本土の捨て石”とされた沖縄戦の象徴でもある。
 
首里城は単なるレプリカではない、大日本帝国に蹂躙された沖縄のアイデンティティ再構築の象徴
 戦後、沖縄の人たちは首里城の復元を望んだ。首里城の跡地に建てられた琉球大学の移転にあわせ、1980年代から都市工事事業としての本格的な再建がはじまった。このとき、遺構の詳細な調査や、文献等の史料解析、さらに戦前の首里城を知っている人たちへの聞き込みなど、厳密な調査が行われたという。そして、30年以上の歳月と多額の費用、そして人々の努力を経て今年1月、ようやく首里城公園の全域が完成したばかりだった。この復元は単なるレプリカではない。大日本帝国により打ち捨てられてきた沖縄の文化・伝統・技術を、研究者や職人たちが調べ直し叡智を結集し再構築したものだ。それは明治政府による琉球処分から沖縄戦、サンフランシスコ講和条約での沖縄切り捨てにいたるまで、本土に蹂躙され続けてきた沖縄のアイデンティティを再発見し取り戻す作業でもあった
 
 その琉球王朝時代から戦後復興にいたるまでの沖縄の歴史そのものであり、沖縄のアイデンティティであった首里城が全焼したのだから、県民のショックと悲しみは察するに余りある。沖縄出身の作家・池上永一は、朝日新聞への寄稿(11月1日付)でこう記している。
 
 〈首里城が私にもたらしたのは、ウチナーンチュの私を肯定してくれる意識革命だった。
 私より上の世代にはルサンチマン怨念があった。琉球処分、沖縄戦、アメリカ統治時代、本土復帰と激動の歴史を経た沖縄を卑下するような認識だ。
 それが首里城の復元によって、私たちは自らを肯定的に捉えられるようになった。美しい文化があった琉球王国を懐かしみ、誇りに思うようになった。これらは偏に復元事業に携わった有識者や職人たちの知恵と技術の結晶である。〉
 
 〈首里城は文化財や世界遺産だけでは語りきれない、戦後沖縄の文化的達成である。私たちはここまで戻した。その誇りが一夜にして焼失してしまった。そのことが悲しくて、今は自分自身が消えてしまったような思いだ。〉
 
 琉球王国を描いた池上のベストセラー小説『テンペスト』のドラマ版(NHK制作、2011年)で主演を務めた、沖縄出身の女優・仲間由紀恵も、〈ニュースを見て大きなショックを受けました。故郷、沖縄のシンボルでもあり、琉球の歴史を語る上でも欠かせない首里城が焼失し、いたたまれない気持ちで一杯です〉と事務所を通じてコメントを出している。また、同じく沖縄出身のタレント・りゅうちぇるも、31日、Twitterに悲痛な心境を投稿した。
 
 〈え。。。言葉が見つからない。。。〉
 〈どうして?僕たちの宝物。誇りでありシンボルのような存在が、どうしてこうなってしまったの?ショックが大きすぎるよ〉
 〈つらい〉
 
安倍首相の首里城火災への反応は、仏・ノートルダム火災のときと大きな差が
 琉球・沖縄のシンボルであり、心の拠り所である首里城。その炎上にかこつけて、「反日外国人のしわざ」「左翼ばかり入れてるから放火されるんだよ」などとデマと二重のヘイトをぶちまけるネトウヨたちは、あまりに醜悪としか言いようがない。
 さらに気になるのは安倍首相の対応だ。
 安倍首相は、表向きには「政府として責任をもって全力で再建に取り組むことを約束したい」などと述べたが、それだけで沖縄県民の心情を思いやるような言葉はまったくなかった。Twitterでもいまのところ、首里城焼失について特別なメッセージは発信していない。今年4月にフランス・パリのノートルダム大聖堂が火災に遭った際、安倍首相は即座に「パリの象徴であり、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産として世界中に愛されているノートルダム大聖堂が炎に包まれるのを見て、大変な衝撃を受け、深く心を痛めている」というお見舞いメッセージをマクロン大統領に送っていた。この温度差はいったい、なんなのか
 
 米軍基地問題で“沖縄いじめ”を続けていることや、琉球王国を併合した明治政府をことあるごとに礼賛していることを考えれば、今回の首里城炎上についても、沖縄に寄り添う気持ちがあるのか疑問が生じて当然だろう。
 いずれにしても、首里城の炎上をダシにつかったヘイトデマは論外だ。そして政府には、表面上ではなく、本気で首里城の再建にとりくんでもらいたい。(編集部)