2019年11月16日土曜日

ボリビアでの軍事クーデター 背後に米国

 南米のポリビアでは10月20日の選挙でエボ・モラレス大統領が勝利しましたが、警察それに富裕が大統領から離反したため、内戦を避けるためとしてモラレスは大統領を辞任しました。
 モラレス氏は先住民大統領で、就任した2006年から18年までに文盲率を130%から24%へ、また失業率を92%から41%へ、貧困率は606%から346%へ、また極貧率は382%から152%へ低下させるという善政を行いました。それにもかかわらずクーデターが起こされました。
 
 このクーデターを背後で操ったのは米国と言われています。モラレス政権が社会主義的で中国と近い関係にあったことは勿論気に入らなかった筈ですが、900万トン~1億4000万トンという世界一の埋蔵量がある地下資源「リチウム」の利権が狙いと考えられています。
 米国はベネズエラでも豊富な重油の利権を狙って、これまでクーデターを企てて来ましたが、幸いなことにそれはまだ成功していません。しかし実に陰険でアコギなことをするものでです。

 メキシコに脱出したと見られるモラレス大統領は議会の承認を得ることなく暫定大統領に就任したヘアニネ・アニェス元上院副議長(女性)の臨時政府を承認したトランプ大統領の決定を批判し、ボリビアのクーデターは米国による介入で発生したツイートしています

「櫻井ジャーナル」と「マスコミに載らない海外記事」を紹介します。
 紙面の関係で後者は記事の前半のみの紹介となっています。全文をお読みになりたい方は、記載のURLから原文にアクセスしてください。
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ボリビアで成功した軍事クーデターではファシストが重要な役割
櫻井ジャーナル 2019.11.13
 エボ・モラレスはボリビアを脱出してメキシコへ向かったようだ。10月20日の選挙で勝利、大統領を続けることになったのだが、中産階級より豊かな階層を母体とする抗議活動が激しくなる一方、軍や警察が大統領から離反、内戦を避けるためにモラレスは大統領を辞任したと言われている。
 この軍事クーデターの背景には埋蔵量は900万トンから1億4000万トンだというリチウムの利権があると考えらている。モラレス政権は中国との関係が深く、それを欧米の支配層が嫌った可能性は高い。

​このクーデターを率いていたルイス・フェルナンド・カマチョはファシスト運動の中から現れた富豪。キリスト教系カルトの信者でもあるが、その背景を知るには少なくとも第2次世界大戦直後からの歴史を思い起こす必要がある。
 第2次世界大戦後のアメリカの支配層はローマ教皇庁の協力者の手を借りてナチスの元高官や協力者をラテン・アメリカへ逃がしていた。「ブラッドストーン作戦」だ。その作戦で逃げたひとりがゲシュタポの幹部だったクラウス・バルビー。
 ボリビアでは1980年7月にもクーデターがあった。アメリカを後ろ盾とする軍人と大物麻薬業者が手を組んで実行したのだが、クーデター計画の立案者はバルビーだと言われている。このクーデターにはイタリアにおけるNATOの秘密部隊グラディオのステファノ・デレ・キアイエも参加していたという。

 ところで、モラレスは流血の惨事を避けるために辞任したというのだが、すでに反クーデター派の人びとは自宅を放火されたり銃撃されるなど弾圧の対象になり始めている
 CIAは1953年にグアテマラでヤコボ・アルベンス・グスマン政権をクーデターで倒した。アメリカを拠点とする巨大資本が持つ利権にとって脅威だとドワイト・アイゼンハワー政権は判断したのだ。
 グアテマラの庶民は相当数が戦う意思を示していたのだが、軍人はCIAに買収されていた。モラレスと同じように流血の惨事を避けるため、アルベンスは1954年6月に大統領官邸を離れる。

 クーデターで誕生した政権は労働組合の結成を禁止、ユナイテッド・フルーツでは組合の中心的な活動家7名が変死している。クーデター直後にコミュニストの疑いをかけられた数千名が逮捕され、その多くが拷問を受けたうえで殺害された。その後40年の間に殺された人の数は25万人に達するという。


ボリビアの軍事クーデターの中心は米軍の訓練を受けた軍人たちだった
櫻井ジャーナル 2019.11.14
 ボリビアのエボ・モラレス政権を倒したクーデターに軍や警察が参加していたが、その中心グループはアメリカ政府の創設した破壊活動訓練施設の出身だった。
 この施設は1946年にパナマでSOA(南北アメリカ訓練所)として創設された。その卒業生は帰国後、アメリカの巨大資本の利権にとって邪魔な人びとを排除するために「死の部隊」を編成したり民主的な政権を軍事クーデターで潰す際の中核になる。

 1984年にSOAはパナマから追い出され、アメリカのジョージア州フォート・ベニングへ移動。2001年にはWHISC(またはWHINSEC)へ名称を変更したが、行っていることに大差はない。
 この施設の卒業生は、例えば、1948年4月にコロンビアのホルヘ・エリエセル・ガイタンを暗殺、54年6月にはグアテマラのヤコボ・アルベンス・グスマン政権を軍事クーデターで潰した。1973年9月にはチリのサルバドール・アジェンデ政権もSOA卒業生による軍事クーデターで倒されている
 また、アメリカの巨大資本にとって邪魔な人を殺す「死の部隊」も同じ人脈によって実行されてきた。

 今回のボリビアにおけるクーデターを仕掛けたのはアメリカ政府であり、その背後には巨大資本が存在するが、現地で実際に動いていたグループの中心人物はコチャバンバで市長を務めたことのある元軍人のマンフレド・レイェス・ビラ。
​そのほか、軍の幹部だったレンベルト・シレス・バスケス、ジュリオ・セーザ・マルドナド・レオニ、オスカル・パセロ・アギレ、テオバルド・カルドソ・ゲバラが加わっていたのだが、この4人はいずれもSOA出身。事前にモラレス大統領の辞任を予告していた軍司令官のウィリアム・カリマンもSOAで訓練を受けている。

 モラレス大統領が引きずり下ろされた理由はいくつか考えられる。例えば、大統領に就任した2006年から18年までに文盲率を13.0%から2.4%へ、また失業率を9.2%から4.1%へ、貧困率は60.6%から34/6%へ、また極貧率は38.2%から15.2%へ低下させた。これは新自由主義の理念に反する。アメリカの支配層にとっては不愉快なことだろう。
 アメリカに限らないが、欧米の「先進国」はラテン・アメリカ、アフリカ、中東、アジアで資源を盗み、人びとを劣悪な状態で働かせて富を独占してきた。その略奪に金融システムも組み込まれているが、そのシステムで重要な役割を果たしている機関のひとつがIMF
 モラレス政権はIMFの呪縛から抜けだし、資源を自国民の為に使おうとした。そうした資源のひとつがリチウム。ボリビアのリチウム埋蔵量は900万トンから1億4000万トンだといわれているが、それをアメリカの巨大資本は自分たちのカネ儲けに利用するつもりだ。勿論、アメリカの支配層はこの資源をボリビアの庶民のために使う気はない。


ボリビア報道で「クーデター」という単語を頑固に避ける主流マスコミ
マスコミに載らない海外記事 2019年11月14日
ケイトリン・ジョンストン 2019年11月11日
 ボリビアで強暴な右翼暴徒とアメリカ政府に支援された軍事クーデターがおきたが、主流メディアの大見出しのどれからも、ほとんどこれを知ることはできない

「ボリビアのエボ・モラレス大統領は不正選挙非難の後、退任」とCNNが主張する。
「激化する抗議行動、ボリビアのモラレスは選挙の批判的報道の中、辞任」とワシントン・ポストが報じる。
「ボリビア大統領エボ・モラレス辞任」とニューヨーク・タイムズが言う。
「ボリビアのエボ・モラレス大統領、不正投票抗議の中で辞職」とBBCが断言する。
「ボリビア大統領、投票操作の主張のさなか退任」と我々はテレグラフに知らされる。
「ボリビアのモラレス大統領 疑惑選挙の激しい反発後に辞職」とシドニー・モーニングヘラルドが言う。

 そういうわけだ。たまたま(スマートフォンや、ラップトップや、ハイブリッド自動車や電気自動車用の電力供給のための重要なエネルギー源として、ある日 石油に置き換わるかもしれない)世界最大のリチウム埋蔵を有し、アメリカ政府による政権転覆の標的に定められていた事実が大量に文書化されている国で、膨大な人々を圧倒的な貧困から見事に救い上げた南米の社会主義政府の先住民大統領が、「選挙疑惑」に関するある種スキャンダルだけで辞任したのだ。右翼暴徒が、この大統領の家族を脅していたことや、国軍が文字通り、彼に退任するよう命じ、現在彼を逮捕すべく捜しているという事実、覆面兵士に、追放された官僚が駆り集められ、捕虜として抑留されるに至っている事実とは全く無関係なのだ。
 全てまったく正常で、全てまったく疑わしくないのだ。
国民の本当の代表を選ぶ民主的過程を保証するため#ボリビアでの新選挙を勧める@OAS_公式報告調査結果を全面的に支持する。選挙制度の信頼性は回復するに違いない。
- ポンペオ国務長官(@SecPompeo) 2019年11月10日
 いつも通り、この話題に関するマスコミ報道は、モラレスの強制辞任直前に、マイク・ポンペオ国務長官がTweetで「選挙疑惑」の話題を語ったアメリカ国務省と完全に一致している。ポンペオは、先月のモラレス再選の際、いかがわしい投票集計があったという、ワシントンに本拠を置く米州機構(OAS)の証拠の無い、信用に値しないとされている主張を引き合いに出していた。経済政策研究センターCEPRのマーク・ワイスブロットが、ネイション誌の最近記事で説明しているように、OASはワシントンからその資金の60パーセントを得ており、この中立のはずの国際機関に対して、アメリカは途方もなく大きい影響力を持っている。これは興味深いことに、化学兵器禁止機関OPCWへの不釣り合いな金銭的援助を、中立のはずの国際機関に、アメリカ方針に従うよう強いる影響力として利用しているという、我々が以前論じたワシントンの周知の実績とつながっている。

 言説支配の範囲は益々拡大しつつある。
10月20日の選挙で、彼らは不正行為の証拠を決して発見できなかったが、メディアは、この「真実後の世界」で、それが「真実になる」ほど頻繁にこの主張を繰り返した。スレッド:https://t.co/8oWFNKNebT 
- マーク・ワイスブロット (@MarkWeisbrot) 2019年11月10日

 アメリカに集中した帝国は、言う通りにしない政府には、成功するまで、クーデターの企てをしかけ続ける。2002年、ベネズエラでのクーデターは失敗し、2019年にも、失敗したが、連中は成功するまで試み続けるだろう。キックボクサーは、訓練された相手では、大半の攻撃が当たらないか、最小限のダメージにしかならないと考えて、打撃を組み合わせるが、最終的に、一発が効いて、ノックアウトする。帝国主義者の政権交代策も同じ「パンチ連打」原理を使っている。攻撃し続け、あらゆる機会に徐々に弱らせ、最終的に、何かが効果をあげるのだ。
(後 略)