自民、公明両党が連立政権を組んで10月5日で20年となりました。
しんぶん赤旗が、「政治考 自公連立20年(上・下)」を4~5日に連載しました。
自公連立は、自民党が小選挙区を勝ち抜く上で絶大な効果を発揮し、創価学会の固定票を上乗せすることで殆どの接戦区を制して来ました。まさに自民党にとってはこれ以上はない選挙協力でした。
しかしここにきて自公協力は大きな行き詰まりに直面しています。
7月の参院選での自民党の比例得票は約1771万票でしたが、それは16年参院選よりも240万票減らしたもので、全有権者に占める絶対得票率は16・7%でした。
同じく公明党の比例得票は約654万票で、16年参院選より104万票も減らしました。17年総選挙でも16年比で60万票減らし、得票減に歯止めがかかりません。
第2次安倍政権発足後、集団的自衛権の行使を可能とした安保法制(戦争法)をはじめ秘密保護法や共謀罪法など憲法違反の政治が行われてきましたが、公明党はそのすべてに賛成して来ました。
実際に安保法制(15年)では、公明党の北側一雄副代表が、自民党の高村正彦副総裁と協力し、集団的自衛権行使の正当化の議論を提供し、共謀罪法(17年)では、公明議員が『何の問題もない』と国会審議で繰り返しました。
創価学会の初代会長の牧口常三郎氏は、戦前治安維持法で検挙され獄中死しました。それなのに治安維持法の平成版である共謀罪法を「何の問題もない」とするのはあまりにも安易です。それらの悪法は平時には問題とならないものの、世情がキナ臭くなった時に牙を剥くことを知らないのでしょうか。
創価学会員の中から「自民党にくっつくことで公明党は弱くなり、弱くなるからより自民党に頼らざるを得ない」、「平和の党、福祉の党を名乗りながら・・・」との怒りの声が上がっています。
安倍政治へのすり寄りが、創価学会・公明党自体の政治的力を弱めている・・・その皮肉な結果が明らかになりつつあります。
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政治考 自公連立 20年(上)止まらぬ得票減
しんぶん赤旗 2019年11月4日
自民、公明両党が連立政権を組んで10月5日で20年となりました。安倍晋三首相はその連立を、新元号「令和」の英訳をもじって「ビューティフル・ハーモニー」と自画自賛しましたが、自公協力は今、大きな行き詰まりに直面しています。
7月の参院選での自民党の比例得票は、1771万2373票。16年参院選の2011万4788票から240万票減となり、全有権者に占める絶対得票率は16・7%と、政権から転落した09年総選挙の18・10%をも下回りました。
公明の選挙支援
中選挙区制だった、1958年総選挙での同党の絶対得票率は44・17%で過去最高でした。現在はまさに過去最低レベルです。それなのに「安倍1強」と言われ、過去最高レベルの議席を確保しているのは、最高得票者1人しか当選できない小選挙区制を中心とする制度の下で、公明党の選挙支援を受けているためです。
その、公明党の今回の参院選の比例得票は、653万6336票で、16年参院選の757万2960票から104万票も減っています。自公連立政権発足以来最低への落ち込みで、同党は危機感を募らせます。17年総選挙では697万7712票で、16年比で60万票減らしていました。得票減に歯止めがかかりません。
自公連立20年のもう一つの特徴は、その対極に、市民と野党の共闘が全国に広がりつつあることです。
第2次安倍政権発足後、集団的自衛権の行使を可能とした安保法制=戦争法による立憲主義の蹂躙(じゅうりん)をはじめ、秘密保護法や共謀罪法など憲法破壊の政治に国民的な危機感が広がりました。また安倍政権下での消費税の2度の増税(14年4月と今年10月)で、税率は5%から10%に。福島原発事故の教訓を無視し、全国で原発再稼働が進められようとしています。
安倍自公政権の「主要政策」に対する国民世論は「反対」が多数です。もはや「多数意見すら通らない」まま、憲法と生活を破壊する政治の暴走に「野党は共闘」の声が起こりました。
“共闘しかない”
一橋大学の中北浩爾教授(政治学)は、「二大政党制は幻想だった」と指摘。「現行の選挙制度のもと、自公は緊密に選挙協力を行い、長期政権を築いてきた。それを倒すには、野党が共闘するしかない。その意味で、安保法制成立後の共産党の呼びかけは評価できる」と語ります。
16年の参院選から始まった市民と野党の共闘は、困難を伴った17年総選挙を経て、今年の参院選で、参院での「改憲勢力3分の2」を突き崩しました。(つづく)
政治考 自公連立 20年(下)協力で相互劣化
しんぶん赤旗 2019年11月5日
国政選挙での深刻な得票減に危機感を強める公明党。関係者から「高齢化に伴う組織力の低下」もささやかれますが、それだけでしょうか。
「自民党にくっつくことで公明党は弱くなり、弱くなるからより自民党に頼らざるを得ない」―。神奈川県の40代の創価学会員の男性はこう指摘します。
第2次安倍政権発足以降、「公明党はブレーキどころかアクセルを踏み続けてきた」とし、「平和の党」「福祉の党」を名乗りながら、平和、福祉の「破壊の党」となってきたことへの怒りを隠せません。
政治的力弱める
「安保法制=戦争法(15年)では、公明党の北側一雄副代表が、自民党の高村正彦副総裁と協力し、集団的自衛権行使の正当化の議論を提供してきた。共謀罪法(17年)では、公明議員が『何の問題もない』と国会審議で繰り返し、参院では公明の秋野公造法務委員長が審議打ち切りの強行採決を主導した。森友学園疑惑では竹谷とし子参院議員は、学園理事長だった籠池泰典氏がいかに悪い人物かだけを強調した」と指摘。「この状況の中で、まじめな学会員ほど反発し気持ちを落とした。組織を守ることで国が滅び、国民や創価学会員が不幸になっても構わないという体質だ」と語ります。
安倍政治へのすり寄りが、創価学会・公明党自体の政治的力を弱めている―。協力が相互に劣化を生む皮肉な結果です。
自公協力に反対して自民党を離れた元自民党の地方議員の一人は「自民党の衰えに公明の下駄をはかせて政権を維持するのが自公協力だった。自民党も組織力を低下させたが、政権のうまみにありついた公明党は自民党化して公明党としての力を失い、互いに補い合う新しいメリットが生まれている」と告発します。
自民党の二階グループの関係者は「公明党はますます強く自民党の後援会名簿の提出を迫ってくる。自民党候補は、公明党の確実な支援を得るために、街頭で『比例は公明』を叫んでいる」と語ります。まさに権力目当ての究極の野合です。
これを倒し新しい政治を開くカギは、市民と野党の共闘を、より強く有権者にアピールする共闘のバージョンアップです。
野党の覚悟問う
日本共産党の志位和夫委員長は、野党連合政権への話し合いを始めようと提起し、れいわ新選組の山本太郎代表、社民党の又市征治党首と会談し、連合政権づくりへ合意を交わしました。他の野党党首にも対話を呼びかけています。
一橋大学の中北浩爾教授(政治学)は「『自公』対『野党』の対決は、単純な『権力』対『人民』の構図ではない。自民党と公明党は地域に堅固な支持基盤をつくり上げている」と指摘。「市民を含む野党共闘の意義はこの点にあり、どれだけ地域に根を張れるかが成否を決める。野党が正論を掲げても勝てないのは、選挙協力の緩さと支持基盤の弱さゆえではないか」と投げかけます。
そのうえで「現在の野党は安倍政権批判でまとまっているが、本当に自公に代わって政権を担当できるか。何よりも国民が安心して政権を託せる枠組みと政策が不可欠だ。また、互いに譲り合う姿勢がないと、連立政権は続かない。それぞれの野党の覚悟が問われる」と語ります。 (おわり) (中祖寅一、日隈広志)