2019年11月28日木曜日

首相の「桜を見る会」問題 はトカゲの尻尾切りでは済まされない

 安倍首相は「桜を見る会」問題で、事前にホテルニューオータニに因果を含めて、身勝手な筋書きを作ったうえで15日に、20分余りかけて記者団に説明しました。それで万事終了の積もりだったようですが、実際には常識的におかしいことだらけなのでヤブヘビになりました。それで翌日もう一度補足の説明をしましたが、同じことでした。
 それ以来ぶら下がりでの説明はやめ、勿論国会の質疑にも応じなかったので、代わりに菅官房長官が野党の攻撃の矢面に立たされました。しかしウソつきのレベルでははるかに劣るので、野党から袋叩きにされています。菅氏にすれば大迷惑な話なので、最近はかつて「官邸の守護神」などといわれた面影はすっかり消えて、うんざりした表情を浮かべる場面が増えたということです。
 そこにきて今度は二階幹事長が26日、記者会見で桜を見る会の招待者名簿は、のちのちの記録、来年の参考にもなるから、いちいち破棄する必要はない」と安倍政権の対応に苦言を呈し、さらに皇位継承に関して、「男女平等、民主主義社会であることを念頭に考えていけば、おのずと結論は出ると思う」と、女性天皇を容認してみせましが、これは安倍首相の行動や意向を真っ向から否定するものです。
 これまで政権を支えてきた2本柱が俄かにおかしくなったわけで、安倍首相の心胆を寒からしめました。まさに内憂外患で、今は疑心暗鬼に苛まれていることでしょう。

 安倍首相は「モリカケ」の問題でも、はじめは大ウソを言い立てて否定しますが、辻褄が合わなくなると今度は内容を微妙に修正して言い逃れをします。官僚たちはその線に沿って、資料を廃棄したり隠蔽したり、改竄したりして不都合な証拠を残さないようにして来ました。
 しかし「桜を見る会」問題では、官僚は全く関与していないので責任の押し付けようもなく、官僚側も忖度のしようがありません。そこで今度はすべてをホテル側に押し付けて済まそうとしている訳ですが、そこは官僚による鉄壁のガードとは違って手抜かりが色々あるのでさすがに無理です。二階、菅氏だけでなく自民党内にも突き放した見方があるということです。

 日刊ゲンダイが「目に余る最高権力者のウソ強要 イカれた首相を徹底検証」と題して、この7年間の安倍首相のウソつきの手法を検証しました。
 AERAは「桜を見る会で安倍首相メンツのためだけの発言で事務方が大慌て 帳尻合わせも限界」とする記事を出し、今回ばかりは誰か関係者のトカゲの尻尾を切って幕引きにはできないと述べています。
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目に余る最高権力者のウソ強要 イカれた首相を徹底検証
 日刊ゲンダイ 2019/11/26
 息を吐くように嘘をつく首相に付き合わされる方も正直、たまったものではないだろう。
 日ごとに目に余る公私混同がハッキリしてくる安倍首相主催の「桜を見る会」。1000人もの首相推薦枠があった招待者選考について、安倍は当初、「とりまとめには関与していない」と明言していた。しかし20日の参院本会議では、自らの事務所が幅広く参加者を募っていたのを知っていたばかりか、「私自身も相談を受ければ、意見を言うこともあった」と認めたのだ。
 つまり、当初の説明は真っ赤な嘘。それでも往生際の悪さが安倍の真骨頂だ。当初の説明は、内閣府などが行う招待者の最終的なとりまとめには「関与していない」との趣旨だったと突っぱね、野党が批判する虚偽答弁には当たらないとホザくのである。
 桜を見る会の主催者である安倍の意向に、内閣府などの“木っ端役人”が逆らえっこない。「関与なし」と断言した後、安倍事務所がこの会を含む観光ツアーの案内を地元有権者に配っていたことが発覚。そのため、詭弁を弄したに過ぎない。
 追い込まれると、説明内容を微妙に修正し、苦しい言い逃れを始める。この7年間、繰り返された光景とはいえ、つくづく、安倍は不誠実きわまる人物である。会の「前夜祭」としてホテルニューオータニなどで開かれた夕食会を巡る安倍の説明だって、額面通りに受け取るバカはいない。
 会費5000円は安すぎるとの批判に「参加者の大多数が宿泊者という事情などを総合的に勘案してホテル側が設定した」と言い張ったが、それを裏付ける見積書も明細書も「ない」。にわかに信じがたい説明だ。

7年繰り返された「そのうち忘れてくれる」
 その上、2015年に安倍事務所名で参加者に配られた注意文書の記載には、前夜祭の会場とホテルが異なるケースもあり、早くもほころびを見せている。あとはホテル側が保管しているはずの明細書などを示せば、安倍の大嘘は確定だが、なぜか、会場のニューオータニは詳細な説明を避けている。
 共産党の田村智子参院議員の国会質問で“桜疑惑”がクローズアップされた3日後の11日夜、安倍は経団連の今井敬名誉会長らと会食。19日にも再び今井氏と会食した。多忙を極める首相が短期間に2度も同一人物と食事をともにするのはまれだ。恐らく今井氏の現在の肩書である「ニューオータニ取締役」と無縁ではないだろう

 さらに先週発売の「週刊文春」によると、安倍事務所は15日、ニューオータニの広報部長ら2人を議員会館の部屋に呼び出し、話し合いの場で「会費5000円」が厳重に確認されたという。安倍の説明にニューオータニが口裏を合わせ、すでに根回しは済んでいると考えるのは、決して「邪推」とはいえまい。
「集中審議を拒み、政治の私物化の説明責任を避け、ホテル側にゲタを預けてしまう。ホテル側が説明しない限り、そのうち国民も忘れてくれると、安倍首相は高をくくっているのです。この7年はその繰り返し。モリカケ疑惑などで周囲の迷惑など顧みず、ごまかし、偽り、隠し、逃げおおせてきた“成功体験”に味を占めているとしか思えません。ただ、桜疑惑は政治を歪める政権にストップをかける絶好のチャンス。関係者は真相を語り、ウミを出し切るべきです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏)

公権力の全てを私物化するハンパない全能感
 内閣府の国会答弁もフザケている。今年の招待者名簿について「会の終了後、遅滞なく速やかに廃棄している」と説明したのに、実際は会開催から1カ月近くも放置。1枚残らず廃棄したのは、共産党議員から資料要求があった5月9日だったというから驚く。
 ドンピシャ過ぎるタイミングは証拠隠滅としか思えない。ところが、内閣府の大塚幸寛官房長は、各局の使用が重なっていた大型シュレッダーが空いたのが、たまたま、この日だったというから耳を疑う。本紙の調べで、大型シュレッダーは1時間に約11万枚のA4用紙を裁断できる高性能機種と判明。ほかに普通のシュレッダーも部署ごとにあるのに、大型シュレッダーに順番待ちができるとは、日々どれだけの公文書を廃棄しているのか。いかにも苦しい言い逃れである。
 ひとたび疑惑が表面化すると、焦点の文書は「廃棄した」と強弁。その忖度こそ「私が最高権力者」と言ってはばからない首相に仕える官僚たちの生き抜く知恵となってしまった。それでも「天網恢々疎にして漏らさず」。国会や会見で繰り返し「ない」とされた防衛省のイラク日報や、財務省が改ざんする前の森友学園との交渉記録なども、結局は発見された。

 官僚らが「廃棄した」との嘘をつかざるを得ないのも、安倍のせいだ。ゴマカシ答弁とのつじつま合わせに、どれだけの人を巻き込めば、安倍は気が済むのか。
 森友疑惑では、安倍が「私や妻が関係していたなら、総理大臣も国会議員も辞める」と国会で強弁して以降、当時の佐川宣寿理財局長は虚偽答弁を連発。公文書改ざんにも手を染め、罪悪感に耐えられなくなった近畿財務局の担当職員は自ら命を絶った
 加計疑惑でも官邸で愛媛県、今治市、加計学園職員と面会していた柳瀬唯夫・元首相秘書官は、一貫して「記憶の限り、会っていない」とスットボケ。やっと面会を認めたのは愛媛県が面会記録を公表した後で、それでも「首相案件との言葉は使わない」「首相に報告したこともない」と強弁し、安倍をかばい続けた

開口一番「長くやりたい」
 周囲の人の記憶を都合よく飛ばし、証拠を突きつけられるまで本当のことを語らせない。真相は常に小出しで、いざとなれば部下に全責任をかぶせる ―。実に卑劣な首相はそうまでして権力にしがみつき、一体、何をやりたいのか。イカれた首相のオツムの中身はどうなっているのか。前出の五十嵐仁氏が言う。
「とにかく、自分の名前を歴史に残したいだけでしょう。『史上最長政権』だけでは飽き足らず、政治的レガシーを残したい。そのためにも憲法を変えたくて仕方がなく、そのタイミングを待っているのだと思います。ただし改憲は、安倍首相が祖父・岸信介氏が成し遂げられなかった遺志を引き継いだ個人的な悲願でしかない。国や国民生活のことよりも、自分の野心を優先させるとは、恐ろしいほどの権力の私物化です」

 政治評論家の森田実氏は14年10月、官邸で安倍と昼食を共にした際、直接、安倍本人に「一番やりたいことは何ですか」と聞いたことがある。森田氏に当時のやりとりを聞くと、「開口一番『長くやりたい』との答えが返ってきました」とし、こう続けた。
「理由は外交に取り組みたいとのことで『1年くらいでは海外で名前を覚えてもらえない。だから長くやらないとダメだ』とも語っていました。現職総理や総理候補と呼ばれる政治家に『やりたいこと』を聞き、『長くやりたい』と答えられた経験はなかった。今や『長くやりたい』だけが自己目的化している印象です。過去の長期政権は何らかの実績を残してきましたが、安倍政権は、外交はおろか内政もロクな結果を残していない。やるフリだけで周りの人間に嘘を強要し、責任を押しつけ、身を守ってきた7年間です。マトモな政治家なら責任を感じて心を痛めるものですが、安倍首相は平気の平左。ひたすら権力を握っていたいだけのモラルなき政治家は恐怖です。慣れっこになってはいけません」
 桜を見る会の公私混同はあくまで氷山の一角。自称「最高権力者」の全能感はハンパなく、公権力を徹底的に私物化しているのだ。


桜を見る会で安倍首相「メンツのためだけの発言」で事務方が大慌て
帳尻合わせも限界   (AERA 2019年12月2日号)
AERA dot. 2019/11/26
 桜を見る会を巡る問題で、安倍首相本人と昭恵夫人の関与が明るみに出た。野党だけでなくポスト安倍の面々も説明を求めており、逃げ切りは難しい情勢だ。この問題をめぐる事務方や与野党の動きに迫った、AERA 2019年12月2日号の記事を紹介する。
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 20日の参議院本会議。これまで安倍晋三首相は「桜を見る会」の招待者の人選に関し、「そのとりまとめには関与していない」と明言してきたが、ここにきて安倍事務所が内閣官房からの推薦依頼を受け、幅広く参加希望者を募る中で、「私も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった」と自らの関与を認めた。虚偽答弁への謝罪はなく、野党は反発を強めている。

 霞が関の関係者はこう分析する。
首相答弁が後になって翻るのは周知の事実。これは首相が秘書官とだけ調整し、事務方に根回しをしないことが原因。会見でもその場のメンツを守るためだけに思いつきで発言をする傾向がある。その度に事務方が慌てて、帳尻を合わせるために動く。ただ、どうにもならないことが出てくるから、後になって自らの発言をそれらしく訂正し、翻さなければならない

 部下の手柄は上司のもの。上司の失敗は部下の責任 ──。結果、矢面に立たされているのが内閣府の大西証史内閣審議官だ。衆院の内閣委員会では野党の追及に対し、「安倍事務所において幅広く参加を募る中で、夫人からの推薦もあったとのことだ」と「昭恵枠」の存在を認めた。
 また、共産党の宮本徹衆議院議員が、内閣府に対して桜を見る会に関する資料を要求をした日と、政府が参加者名簿を破棄した日付が同じだった件について問われると「大型のシュレッダーを使おうとしたところ、各局の使用が重なったから」と釈明。このやりとりを見た野党議員は語るに落ちたと憤る。
「政権中枢を支えるエリート中のエリートが、この程度の言い訳しかできない実態が、この案件の根の深さを物語っている。絶対にオモテにできない事情があるのだろう

 首相本人が直接関わるこの疑惑は、自民党内のポスト安倍をめぐる動きにも影響を与える様相を呈してきた。石破茂元防衛大臣は17日、テレビ番組で安倍首相は改めて会見を開いて、国民に経緯を説明するべきだとの考えを示した。また、野党が求めている首相出席の集中審議を開催する見通しが立っていない件に触れ「国会で説明できないとなればいろいろな場がある。質問する側も準備して臨み、首相がきちんと答える場だ」と踏み込んだ発言をした。
 同じく、岸田文雄政調会長も「国民が疑念を持つならば説明責任を果たしていくことは大事だ」と発言していて、いずれも「これで幕引きにはならない」という構えだ。

 首相の虚偽答弁を受け「税金の私物化」を中心に追及することで野党は一致。改めて衆参両院予算委員会の集中審議開催を要求した。政府・与党がこれを拒否した場合について、立憲民主党の安住淳国対委員長は「やらないなら、来年の通常国会で2カ月間かけてこの話をやらせていただく」と強気の姿勢を見せた。この発言に首相周辺は神経をとがらせていると自民党関係者の一人は語る。
「首相本人が説明責任を果たさなければならない案件であり、それに加えて総理夫人の昭恵さんも関係していることが表沙汰になった今、この防戦一方の政局はあのモリカケ問題を連想してしまう。まさか通常国会の冒頭で首相が解散に打って出るとは思いませんが、党内ではポスト安倍の動きも含め気が抜けない年末年始になりそうです」
 この問題が表面化した時、首相周辺は「この程度の問題か」と高をくくっていた。しかし問題が長期化し、拡大したことで、ボディーブローのようにじわじわと政権の体力を奪っている。今回ばかりは、誰か関係者のトカゲの尻尾を切って幕引きにはできない。そのことは首相本人がよくわかっているだろう。(編集部・中原一歩)