2019年11月5日火曜日

憲法から定理を導けば「9条は改正不可」と 数学者の秋葉・前広島市長が証明

 憲法の条項のうち、改正が禁止されているものを改正禁止条項」といい、フランスやイタリアの憲法では、共和政体を憲法改正の対象にできないことが条文に明記されています。日本の憲法では、そうした明文規定はありませんが、国民主権に反する憲法・法令等を排除するとした前文の第1段や、基本的人権を侵すことのできない永久の権利とした第11条や第97条が改正禁止条項にあたるとされますデジタル大辞泉・・・「憲法改正禁止条項」より)
 
 1999から3期 広島市長を務めた秋葉忠利さんは、東大数学科を出て米マサチューセッツ工科大(MIT)で博士号取得し、ニューヨーク州立大広島修道大で教鞭をとった数学者です。
 秋葉忠利さん今夏出版した著書「数学書として憲法を読む」で、数学の理論を立証する手法を使って日本国憲法から「定理」を導き出す独自の解読をしたなかで、定理の一つとして、戦争放棄を定めた9条などは「改正禁止条項」に当たると訴えています。
 従来の論理はいわば憲法の理念に基づくものですが、秋葉さんが試みたものは、9つのルールを設定して、それを数学的厳密さもって適用することで、いわば形式論理学的に展開したものと言えます。
 憲法公布記念日(文化の日)に当たっての東京新聞の記事です。
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【問】憲法から定理を導け 【解】9条は改正不可 
前広島市長・数学者 秋葉忠利さん「証明」
東京新聞 2019年11月4日
 日本国憲法は3日、公布から73年を迎えた。前広島市長で数学者の秋葉忠利さん(77)は今夏に出版した著書で、数学の理論を立証する手法を使って日本国憲法から「定理」を導き出す独自の解読をした。定理の一つとして、戦争放棄を定めた9条などは「改正不可条項」に当たると訴えている。 (村上一樹)
 
 著書のタイトルは「数学書として憲法を読む」(法政大学出版局)。安倍政権が九条に自衛隊を明記するなどの改憲に本腰を入れようとする中、「護憲・改憲の議論以前に、そもそも憲法はきちんと読まれているのか」との思いから、憲法を時の政府や法学者による解釈にとらわれず、文字通り数学的、論理的に読み解くことを試みた。
 まず(1)単語の意味を文字通りに解釈(素読律)(2)一つの単語、フレーズは同じ意味(一意律)(3)書かれていないこと、他の文献に依存しない(自己完結律)-など九つのルール(九大律)を設定。ルールに従い、憲法に書かれたことだけを議論の出発点となる「公理」と見立て、そこから論理的な結論となる「定理」を「証明」していった。
 導き出した定理のうちの一つは、憲法には一条や九条、一一条、一二条など、改正してはいけない条項があるということ。秋葉さんは、条項の中に「永久に」「国民の総意」「不断の」などの絶対的な表現と関連がある八つが「改正不可条項」に当たると指摘する。
 
 九六条には憲法改正の規定があるが、数学的には、絶対的表現(X)は時間的に全ての未来を縛る力があり、条文を変えると「永久に」といった単語の意味と矛盾が生じる。このため、Xの関連条項は九六条の対象外と解釈できるという。
 秋葉さんは「実際の社会は数学だけでは割り切れない。数学的に読み解いた結論が全てではないが、論理も大事だ。憲法の建設的な議論につながってほしい」と願っている。
 

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<あきば・ただとし> 1942年11月3日、東京生まれ。東京大理学部数学科卒。米マサチューセッツ工科大(MIT)で博士号取得。ニューヨーク州立大などで数学を教える。広島修道大教授を経て、90年衆院選で初当選。99年、広島市長に初当選し、3期務める。現在、原水爆禁止広島県協議会代表委員。著書に「真珠と桜-『ヒロシマ』から見たアメリカの心」(朝日新聞社)など。