米政府の「対外有償軍事援助」(FMS)で戦闘機やミサイルを購入する際、日本政府は協定を結べば得られる手数料の減免措置を取っていませんでした。FMSを使っている諸外国の多くは減免措置による減免を受けています。
18年度の日本のFMSの調達額は4078億円で、このうち減免対象の兵器は3314億円です。仮に日本が他国並みに0・5%分の減免を受けた場合、16億円低減でき、手数料全額が免除となれば削減額は39億円になります。累積の額は莫大になります。
会計検査院は以前からこの指摘を行ってきました。防衛省はこの度ようやく減免に向けた検討を始めたということです。
超高額の兵器を大量に購入していながら、何かと理屈をつけてこの制度の適用を目指さなかったのは大変な怠慢で、国民の税金を使っているという感覚がマヒしているとしか思えません。
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<税を追う>
米兵器輸入費、減免受けず 手数料、制度利用なら年10億円超減
東京新聞 2019年11月16日
米政府を通じて戦闘機やミサイルを購入する「対外有償軍事援助」(FMS)で、日本政府が協定を結べば得られる手数料の減免措置を取っていないことが、会計検査院の調べで分かった。FMSを使っている諸外国の多くは減免を受けている。近年、日本ではFMSによる兵器や武器の購入が急増しており、他国並みに減免できれば年間で十億円以上のコスト低減につながる。防衛省は検査院の指摘を受け、減免に向けた検討を始めた。 (中沢誠)
防衛省によると、FMSで兵器を購入する場合、品質保証や契約管理の手数料として、本体価格の1・2%が加算される。米国と協定を結べば手数料が減額される。検査院の指摘を受けて防衛省が確認したところ、減免を受けていたのは韓国やカナダなど十八カ国に上る。1・2%のうち0・5%分の減免が主流で、フランスは手数料全額が免除されていた。
日本のFMSの調達額は二〇一八年度で四千七十八億円になる。このうち減免対象となる兵器の購入額は三千三百十四億円。仮に日本が他国並みに0・5%分の減免を受けた場合、十六億円低減できる。手数料全額が免除となれば削減額は三十九億円にもなる。
検査院は「FMS調達の増加に伴い手数料も増えており、減免によって低減する余地がないか検討するべきだ」と指摘する。
防衛省の説明では、三年前に米国から減免制度の紹介を受けたが、「米政府の審査に二、三年かかると聞き、すぐに減免を受けるのは難しいことから議論が進まなかった」とし、これまで省内で検討してこなかったという。
防衛装備庁の風間政人・調達企画課長は「減免を受けるとなれば、日本が米国に装備品を売るとき、同様に品質保証などの業務を担うことになり、日本側の業務量が大きくなる懸念があった。FMSの調達額が高水準になっているので、減免制度も価格低減の方策として検討したい」と話している。
◆日米の力関係示す
<軍事ジャーナリストの前田哲男氏の話> 米国製兵器を爆買いしている日本からすると、減免は当然の権利のはず。多くの国が受けている減免を行使しようとしない、日本政府のコスト意識にはあきれる。全体の調達額から見ると小さいが、国民の税金だ。安倍首相とトランプ大統領の力関係や、米国に物を言えない日本の現状を象徴している。
<対外有償軍事援助(FMS)> 米国政府が同盟国に軍事援助の一環で兵器を売る制度。支払いは前払いで、納入後に米側が精算する。購入国は高性能の兵器を取得できる半面、価格は米側の見積もりに基づくため「米国の言い値」との批判がある。納期も米側の事情で変わるなど、米国に有利な内容となっている。日本は1956年から導入している。
調達額の単位は「米ドル」