2019年11月5日火曜日

05- 安倍内閣 「統一教会がらみ」閣僚は10人も

 旧統一教会は、違法な伝道や異常な霊感商法で世間を騒がせました。今は「世界基督教統一神霊協会」と改名したものの健在で、日本国内で信者から集める「献金」目標は非常に高くなっているということです。
 そうした違法な伝道や霊感商法被害の救済に取り組んでいる全国霊感商法対策弁護士連絡会は9月、全国会議員に対して旧統一協会と関係をもたないことを求める要望書を送付することを明らかにしました。連絡会事務局長山口弁護士は会見で、「安倍首相が旧統一教会と親和的なことから、集会に参加する議員が増えている」としたうえ、「旧統一教会はいまも反社会的行為を組織的にしている団体であり、政治家が関係を持つことは違法活動にお墨付きを与え、反社会的活動の是正が困難になる」と強調しました。
 
 ハーバー・ビジネス・オンラインが、安倍政権は「(旧)統一教会関係者」塗れとする記事を出しましたので紹介します。
 安倍首相の祖父岸信介氏が統一教会の教主と親密な関係にあったことは有名な話です。その流れかどうかは不明ですが、安倍首相も同様に旧統一教会とは親密な関係にあるようですが、そのことと「嫌韓」とは、どういう関係にあるのでしょうか。
 記事は長文のためかなりの部分を省略しました。全文をご覧になりたい方は、記載のURLからアクセスしてください。
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菅原経産相辞任で「統一教会がらみ」閣僚は10人に
安倍内閣と統一教会の関係を読み解く
 藤倉善郎  2019.11.02
 

第4次安倍再改造内閣と宗教・カルト・ニセ科学

 先だって、ジャーナリストの鈴木エイト氏が「統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、『菅政権』への布石」で、第4次安倍再改造内閣で新入閣・再入閣を果たした7人と統一教会(世界平和統一家庭連合)の関係をリポートした。そこで名前が挙がらなかった留任者なども含めて、大臣、副大臣、政務官など安倍政権の要職と統一教会の関係をリポートする。いずれも鈴木氏が積み重ねてきた取材のデータを筆者(藤倉)が若干の補完をしながら整理したものだ。

留任組にも4人の統一教会系閣僚
 上記の記事で鈴木氏が挙げたのは、武田良太・国家公安委員長、竹本直一・科学技術担当大臣、萩生田光一・文部科学大臣、加藤勝信・厚生労働大臣、衛藤晟一・一億総活躍大臣、田中和徳・復興大臣、菅原一秀・経済産業大臣。再入閣の加藤氏を除き、全員が初入閣だ。うち菅原氏はすでに経産相を辞任したため、第4次安倍再改造内閣で統一教会と関わりを持つ閣僚は11人から10人となった。以前、閣僚の半数を占める。
 そして新・再入閣組だけでなく、留任組の中にも4人、統一教会と関わりを持ってきた閣僚がいる。
 まずは安倍晋三首相だ。安倍首相は官房長官時代の2006年に福岡で開催された統一教会系「天宙平和連合(UPF)」の大規模イベントに祝電を送ったことで知られている。以降も、2011年に統一教会系のワシントン・タイムス紙に掲載された全面意見広告に賛同者として氏名を記載。2010年と2012年には統一教会系「世界戦略総合研究所」で講演。2013年4月には統一教会に対して直々に、同年7月の参院選で北村経夫候補(自民・比例)への組織票支援を依頼した。2016年には統一教会の徳野英治会長と総会長夫人を首相官邸に招待している。
 安倍首相はここ数年、ワールドメイト教祖・深見東州(半田晴久)氏の「バースデー書画展」に毎年欠かさず祝電や花を贈っている常連でもある。しかし上記を見れば、統一教会とは単にお付き合いで祝電を送るというレベルを遥かに超えた関係であることが明らかだ。
 麻生太郎・財務大臣も安倍首相同様、2011年にワシントン・タイムス紙の意見広告に名を連ねた。高市早苗・総務大臣は2006年5月、安倍首相も祝電を送った福岡でのUPFの大規模集会に祝電を送っている。菅義偉・官房長官は2013年7月、前出の北村経夫氏について統一教会福岡教会など2つの教会での講演を手配。2017年5月には、統一教会の金起勲・北米会長が率いるワシントン・タイムス一行を首相官邸に招待している。

官房副長官や党4役にも
 このほか西村明宏・内閣官房副長官が今年6月に仙台国際センターで開かれた統一教会系団体主催の「激動の二〇一九年 日本の行くべき道 安全保障フォーラム 宮城県大会」に、宮城県代表世話人として参加した。このイベントでは統一教会の徳野英治会長も講演を行った。当時、鈴木エイト氏が西村氏本人に取材を試みたところ、秘書が「特に他意はなく、前任の代表世話人から西村氏が引き継いだ」という趣旨の説明をしている。
 また内閣改造と同時に自民党4役等の人事も発表されたが、選対委員長となった下村博文氏も、統一教会との関わりが深い。
 2012年に前出の「世界戦略総合研究所」の定例会で講演。この年には、自身が代表を務める自民党東京都第11選挙区支部が統一教会系の「世界平和女性連合」に会費1万5000円を支払っている。2013年と2014年に3度、統一教会系「世界日報社」が発行する月刊誌『VIEWPOINT』にインタビューや座談会の形で登場した。2013年には、世界戦略総合研究所の阿部正寿所長の書籍出版記念会に出席。2016年には自民党東京都第11選挙区支部が世界日報社から6万円の寄附を受け取っている。
 長らく名称変更を行えずにいた統一教会が2015年に世界平和統一家庭連合と名称変更した際、この下村氏が文科相だったことから、下村氏が文化庁に何らかの圧力をかけたのではないかと疑う声まである。
 下村氏も、ワールドメイトとの付き合いも深く、安倍首相同様に教祖の誕生日イベントに花を贈るなどしているほか、ワールドメイト系イベントに出席し挨拶に立ったこともある。EM菌などのニセ科学(疑似科学)や予言者の予言をブログやネットTVで紹介するなどしてきたこともあって、文科相時代には「文部疑似科学大臣」などと揶揄されたこともある。
 党4役ではないが、幹事長代行の稲田朋美氏も、2009年11月に世界平和連合福井県大会で講演。翌2010年4月にも、世界平和女性連合の福井県連合会の春の集いに出席し来賓として挨拶している。
副大臣・政務官にも計7人 内容 省略
統一教会への優遇ではない? 内容 省略
これは信仰の自由や政教分離に関わる問題なのか
 第4次安倍再改造内閣発足以来、鈴木エイト氏と私は複数のメディアでこの問題についてコメントをしたり自ら記事を書いたりしてきた。それらについてのネット上の反応などを眺めていると、「信仰の自由」や「政教分離」に言及するものも散見された。
 注意したいのは、閣僚その他の政治家とカルト集団との関わりを示すこれらの情報は、必ずしも個々の政治家が統一教会の信者であることを意味しないという点だ。むしろそのようなケースのほうが少ないかもしれない。ここで指摘しているのは、国会議員が統一教会のイベントに参加し箔付けに利用されたり、霊感商法や偽装勧誘で問題視されている反社会的な宗教団体やその関連団体から寄付を受けたり会費を支払ったりしているという問題だ。
 もちろん、国会議員が反社会的な宗教団体の構成員であるなら、それはそれで問題だ。仮に信者だと判明した場合にはそういった批判もありうるが、さしあたってここで指摘しているのはそういうことではない。つまり個人の信仰の自由とは無関係だ。
 政教分離についてはもう少しややこしいが、これも国会議員が統一教会と付き合いがあるというだけで即アウトとも言い切れない。そもそも統一教会かと関わりを持つ国会議員は他の宗教団体とも関わりを持っているケースが多く、統一教会だけを優遇しているとは言いにくい。また宗教団体が政治活動を行うこと自体を否定することもできないし、政治家が宗教団体のイベントに顔を出すことは一切許されないとも言えないだろう。
 政教分離原則との兼ね合いは、宗教的な価値観が政権に反映されている具体的な側面について批判的に見ていく必要がある。単にイベントに参加したという事実だけで判断できるわけではない。
 当然、統一教会についても同様だ。ここで列挙したような情報は、政教分離にからむ問題を議論する上でも参考になる事実の一つにはなるかもしれない。しかし飽くまでもその程度だ。これだけで政教分離について議論するのは雑すぎるので、私自身はあえて踏み込まない。
 もともと鈴木氏や私が安倍内閣と統一教会に言及しているのは、政教分離原則について云々するためではない。霊感商法などで社会的に問題視されている宗教団体に政治家が関わること自体に問題があるという、政教分離原則以前の問題を示すためだ。

嫌韓政権なのになぜ韓国のカルトと手を組むのか
 もうひとつ、ネット上での反応で目についたのが、「嫌韓政権である安倍政権が、なぜ韓国のカルトと手を組んでいるのか」というたぐいの皮肉や疑問の声だ。
 確かにこれは皮肉の一つも言いたくなる構図だし、「なぜ?」と疑問を持つ人がいるのも無理はない。しかし、こうなっている理由はシンプルだ。
 たとえば『日本会議の研究』の著者である菅野完氏は常々、日本会議の行動原理を「左翼が嫌い」という言葉で説明している。
 たとえば日本会議は、生長の家出身者のほか神社本庁、霊友会、佛所護念会、キリストの幕屋など様々な宗教団体の関係者による寄り合い所帯だ。教義はそれぞれ違う。神道系、仏教系、キリスト教系と言った調子で、全く別のカテゴリの宗教同士が寄り合っている。その最大の共通項が「左翼が嫌い」というわけだ。
「左翼が嫌い」という点では統一教会も同様だ。統一教会は韓国発祥で教祖・文鮮明は韓国人。日本を敵視するなど、ネトウヨなら「反日」と叫んで怒り狂ってもおかしくない言葉も残している。しかし統一教会は日本に上陸して間もない1960年代から「国際勝共連合」を組織し、反共運動を展開してきた。その流れで保守運動と連携し、現在も続いている。
 韓国のカルトが安倍政権と手を組む。是非は別として、日本の保守運動の実情を考えれば特段の不自然さはない。
 それどころか日韓関係が深刻に悪化しているいま、統一教会と関わりは政治家たちから「日韓友好」の一環として正当化されている面もある

 先日、鈴木エイト氏が「統一教会イベント、新たな来賓政治家が判明、来賓国会議員数水増し疑惑も<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第20回>」としてリポートした統一教会イベント。ここでは、大村秀章・愛知県知事が祝電で「混迷する東アジア情勢」に言及。挨拶に立った原田義昭・前環境大臣や工藤彰三・衆議院議員らも日韓関係悪化に言及。その上で、日韓友好イベントとしてこの統一教会イベントを称賛した。
 こんな調子だから、自民党系の政治家たちにとって統一教会と関わることに問題は感じていないのだろう。しかし統一教会を「韓国なのに」「韓国だから」という目で見すぎると、前述の皮肉的な構図に翻弄されてしまうし、「日韓友好」で誤魔化す政治家の言説に惑わされることになりかねない。
 本来、「カルト問題」に国境も国籍も関係ない。どこの国からやってきた団体であろうが日本で生まれた団体であろうが、人々に害をなすカルトは所詮カルトだ。そして、それに加担する政治家はカルトの手先である。そう考えれば、さして複雑な問題ではない。<取材・文・図版/藤倉善郎>
藤倉善郎
ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult3。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)