森友学園問題で、約8億円も値引きして売却した国有地取引をめぐる行政文書(5849ページ)については昨年8月財務省が不開示を決定しましたが、今年6月、総務省の「情報公開・個人情報保護審査会」が不開示決定を違法だと判断したことで、開示されました。
そもそも国会で激高した安倍首相が、「私や妻が関係していたら間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と断言したことが、その後の前代未聞の公文書の改竄という事件につながり自殺者まで出したのですから、官邸は、首相を窮地に追い込む個所については「最高裁まで争う覚悟で非公表」とするという決意だったので、当然開示された文書でもその部分は黒塗りになっていました。
要するに最も重要な個所が、今回も非公表になっていたのでした。
その一方で、籠池諄子氏が近畿財務局の担当者にコースターを投げつけたり、暴言を吐いたという箇所は洗いざらい公開し、籠池夫妻が飛んでもないクレーマーであったという印象を与える仕掛けになっているということです。
まさに官邸の意向とその卑劣さが手に取る様に分かる話です。
LITERAの記事を紹介します。
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森友新文書5849ページでわかった新事実! 公文書改ざんを生んだ安倍首相逆ギレ発言の舞台裏 しかし肝心の部分はいまだ黒塗り
LITERA 2019.11.08
安倍首相が「終わったこと」にしようとしている森友学園問題で、大きな動きがあった。約8億円も値引きして売却した国有地取引をめぐる行政文書5849ページが開示されたというのだ。
これらの文書は、立憲民主党の川内博史議員が情報公開請求していたものだが、財務省は昨年8月に不開示を決定。だが、この決定に川内議員が不服を申し立て、今年6月、総務省の「情報公開・個人情報保護審査会」が財務省の不開示決定を違法だと判断していた。そして今回、開示されたことをテレビ東京のニュース番組『ゆうがたサテライト』が5・6日の放送で2日つづけて伝えたのだ。
今回、開示された5849ページもの文書は、財務省が作成した国会答弁の想定問答や、近畿財務局が本省である財務省や国交省の大阪航空局とやりとりした応接録など。
たとえば、はじめて総理入りの国会審議で森友問題が取り上げられた、2017年2月17日の衆院予算委員会での安倍首相の答弁。このとき、民進党の福島伸享議員(当時)から昭恵氏と籠池泰典氏の関係について問いただされ、安倍首相が激昂した様子で「私や妻が関係していたら間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と断言したことは、その後の公文書改ざんを引き起こすきっかけにもなり、多くの人の記憶に残っているだろう。ところが新文書によると、じつは財務省が用意した想定問答に書かれていた答弁は、こういうものだった。
「法令及び国有地の処分ルールに基づき、大阪の私学審の設置認可適当の答申を踏まえ、国有財産地方審議会において処分方針の了承を得ているものであり、誰が小学校の校長であるかは関係ない」
しかし、安倍首相は福島議員の追及に激昂し、想定問答を読み上げず、「私や妻が関係していたら間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と断言してしまったのだ。そして、この宣言をきっかけにして公文書の改ざんが進められ、ついには近畿財務局の職員は自殺にまで追い込まれてしまったのだ。
実際、昨年6月6日付の毎日新聞でも、この日の答弁をどうするかを今井尚哉首相秘書官や杉田和博官房副長官らが話し合いをもち、「首相が『自分も妻も問題には関わっていないが、こんな話になって申し訳ない』と言えば済むのではないでしょうか」という提案がなされ、今井首相秘書官がこれを安倍首相に伝えたというが、当の安倍首相が「私も妻もまったく関与していない」と耳を貸さなかった、と報じている。こうしてまわりの進言も無視して陳謝するどころか逆ギレして啖呵を切ったことが公文書改ざんという国家的犯罪の引き金になったことをあらためて考えると、いまだに安倍首相が総理も国会議員も辞めていないことの理不尽さを痛感せずにはいられないだろう。
だが、今回開示された文書でもっとも重要なのは、近畿財務局と財務省のやりとりが記された応接録だ。
一体、財務省は近畿財務局にどういった指示を出し、その結果、国有地が約8億円も値引きされることになったのか。そして、そこに昭恵氏は介在していないのか──。このように近畿財務局と財務省のやりとりは、森友問題の全容を解明する上で、非常に重要な意味をもつものなのだ。
しかし、今回開示されたものは、この肝心の文書が黒塗りにされているというのである。
安倍首相は「膿を出し切る」と言いながら、都合の悪い事実はいまだに隠すとは……。だが、逆にいえばこの黒塗りにされた文書こそが、安倍首相の“アキレス腱”なのである。
籠池夫妻の異常性だけ公表し安倍首相に都合の悪い部分は黒塗りする印象操作
事実、昨年5月に作成された国交省と財務省の協議メモに、政府が近畿財務局と財務省のやりとりを隠蔽することに、どれだけ血道をあげているかがよくわかる記述がある。このメモは財務省が森友学園側との交渉記録(応接録)と改ざん前決裁文書を国会提出することを決めたのと同時期に作成されたものだが、近畿財務局と財務省のやりとりを記した文書について、こう言及されているのだ。
〈役所間のやり取りの公表に先鞭をつけてよいものか、悩ましい。近畿財務局と理財局のやり取りについては、最高裁まで争う覚悟で非公表とするのだろうが、近畿財務局と大阪航空局のやり取りについては、森友問題に限って考えればメリットもあり得る。色々とひどいことを言われたことが明らかになるし、「大阪航空局に言っておく」とした部分の帰結も分かってすっきりする。〉
近畿財務局と理財局のやりとりは「最高裁まで争う覚悟で非公表」とする──。つまり、今回黒塗りにしたことからもあきらかなように、政府は事実を隠蔽しつづける姿勢を一貫して崩していないのだ。
しかも、このメモでは「メリットがあるものは出してもいい」としているが、実際にこのとき財務省が公開した近畿財務局の交渉記録のなかには、籠池諄子氏が近畿財務局の担当者にコースターを投げつけたことや暴言を吐いたということが書かれた箇所があり、これをメディアも大きく取り上げた。こうして「出していいものと絶対に出さないもの」を政府が選別した結果、籠池夫妻を“トンデモクレーマー”として注目させることに成功したのだ。
開示する文書によって意図的に印象操作をおこなうとは姑息にも程があるが、じつはこのやり口は、今回の開示文書からも見て取れるのだという。たとえば、『ゆうがたサテライト』にVTR出演したNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、政府内のやりとりが黒塗りにされている一方、籠池夫妻と近畿財務局などのやりとりが不自然なほど詳細に公表されている点を指摘している。
「(公表されている)森友学園と財務省のあいだのやりとりというのは、ずっと読んでいくと森友学園側にすごく問題があるように見える記録になっているわけですよね。一方で、(黒塗りされた文書は、政府の)なかの協議の記録なので、自分たちの心象を悪くする要素を出していないのは、ちょっと恣意的というか作為的というか」
つまり、財務省と国交省にメモにあるとおり、政府はなおもミスリードを誘うための情報操作をおこなっているのである。
しかし、「最高裁まで争う覚悟で非公表」にするとまで言っているところを見ると、財務省は近畿財務局のやりとりのなかには、昭恵氏の介在どころか、安倍首相や官邸の関与をも示す重大な事実が書かれている可能性もあるのだ。
「膿を出し切る」と言って憚らない安倍首相には、この黒で塗り潰された部分を開示してもらわないかぎり森友問題は終わらないと、はっきり言っておきたい。 (編集部)