15日夜突然行われた安倍首相の「桜を見る会」問題に関する約20分間の会見は、わずか10分前に通告して不意打ちで開いたもので、この限られた記者たちによる「ぶら下がり会見」で、公職選挙法/政治資金規正法違反の「疑惑に対する説明をした」ことにしようとするものです。
そしていつもの口調で言い訳をし終えると、首相は「大体いまお答えをしたことが、ほとんど全てではないのかなと思っております」と断言し、記者から 後日に記者会見を開く予定はあるのかと尋ねられると、「あらためて会見するというのであれば、いま質問してください」とたたみ掛けたということです。
LITERAが「安倍首相が「桜を見る会」問題でありえない言い訳!~ 」と題した記事で、首相の言い訳の部分を速記録風に紹介しています。
それによると、前夜祭の会費が異常に低額であったのは「ホテル側が決めたこと」だとして、肝心な会計に関する部分では、安倍晋三後援会としては会費の支払に全く関与しなかったので、政治資金収支報告書に記載する義務はなかったと強弁しました。
そして「野党から政治資金規正法に関する指摘があるが、収支報告書の訂正をすることは?」と訊かれると、「いまお話ししたとおりで……最初、聞いておられました?」「つまり、お金の出入りはですね、一切ないわけですから」「(会計は)まったく問題ない」「私、もう出なければなりませんので、同じような質問はちょっと避けていただきたい」とまくし立てたのでした。いつも国会答弁などで見受けられる態度です。
しかし、会費が異常に低かったことへの疑惑や政治資金収支報告書不記載の事実は、そんな説明では「逃げ」とゴマカシの姿勢だけが目立ち全く解消されません。
郷原信郎弁護士が「“桜を見る会前夜祭”安倍首相の『ホテル名義の領収書』説明への疑問」とする記事を出しました。
LITERAの「安倍首相が「桜を見る会」問題でありえない言い訳!~ 」の記事も併せて紹介します。紙面の関係でLITERAの記事は最後の節のみとしましたので、全文をご覧になりたい方は下記から原文にアクセスしてください。
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安倍首相が「桜を見る会」問題でありえない言い訳!
地元後援会の大量招待を「長年の慣行」、前夜祭もすべて「ホテルが」
LITERA 2019.11.16
(前 略)
参加費も「参加者からホテル側への支払いがなされた」とあり得ない主張
ともかく、この問題は見積書なり請求書なり証拠を出していただかないことにはお話にならないが、安倍首相は「前夜祭」の収支報告がおこなわれていない点、つまり政治資金規正法違反(未記載)疑惑についても、普通では考えられない突飛な言い訳をした。
「夕食会費用については、会場の入り口の受付にて、安倍事務所職員が1人5000円を集金をし、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に、集金したすべての現金をその場でホテル側に渡すというかたちで、参加者からホテル側への支払いがなされたということでございます」
つまり、安倍首相側は受付係として集金しただけで、精算もせず、その金はそっくりそのままホテルに渡した、というのである。
だが、こちらもそんなわけがないだろう。いくら前もって参加者を募っていても、これほど大規模なパーティなら、事情があってドタキャンする人は必ず出てくるものだ。その当日キャンセル分の補填は誰がおこなったというのだろうか。あるいは万が一多すぎた場合の余剰分は誰の懐に入るのか。それとも、これもホテル側が「事情を踏まえてくれた」とでも言うのだろうか。
ようするに、安倍晋三後援会が会費を受け取ってホテル側に支払っていた場合は政治資金収支報告書に記載する義務があるため、関与していないと主張したいのだろうが、あまりにも常識はずれすぎるのである。
その上、「野党から政治資金規正法にかんする指摘があるが、収支報告書の訂正をすることは?」と訊かれると、「いまお話ししたとおりで……最初、聞いておられました?」「つまり、お金の出入りはですね、一切ないわけですから」「(会計は)まったく問題ない」「私、もう出なければなりませんので、同じような質問はちょっと避けていただきたい」とまくし立てたのだった。
この余裕のない受け答えからも怪しい臭いがプンプンするが、このように、安倍首相の唐突かつ一方的な会見では、何ひとつ納得のゆく説明はおこなわれなかったのだ。
にもかかわらず、どうやら安倍首相はこれをもって説明責任を果たしたと逃げるつもりらしい。(中 略)
地元支持者を一体何百人招待していたのかも具体的にあきらかにしなかった上、違法疑惑も証拠も出さず一方的に「ホテルが決めたこと」「まったく問題ない」と言い張るだけ。──これで説明は果たしたなんて、ふざけているとしか言いようがない。
(後 略)
“桜を見る会前夜祭”安倍首相の「ホテル名義の領収書」説明への疑問
郷原信郎が斬る 2019年11月16日
今年の「桜を見る会」の前日にホテルニューオータニで開かれた前夜祭について、安倍首相は、昨日、「すべての費用は参加者の自己負担。旅費・宿泊費は、各参加者が旅行代理店に支払いし、夕食会費用については、安倍事務所職員が1人5000円を集金してホテル名義の領収書を手交。集金した現金をその場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた。」と説明し、少なくとも2017年分までの安倍総理に関係する政治団体の収支報告書に“前夜祭”の収支について記載がないことについては「収支報告書への記載は、収支が発生して初めて記入義務が生じる。ホテルが領収書を出し、そこで入ったお金をそのままホテルに渡していれば、収支は発生しないため、政治資金規正法上の違反にはあたらない。」と述べたそうだ(テレ朝ニュース)。
この「説明」には、いくつかの疑問と問題点がある。
「ホテル名義の領収書」と代金支払いの関係
最大の問題は、安倍事務所職員が参加者から集金して「ホテル名義の領収書」を渡したとされている点だ。
少なくとも、ニューオータニほどのホテルが、実際に金銭を受領していないのに「ホテル名義の領収書」を渡すことはあり得ない。「ホテル名義の領収書」が渡されたのであれば、その領収書の額面の金額に見合う支払が、安倍事務所職員からホテル側に前もって行われたはずだ。
会の参加者の人数が予め確定しているのであれば、その確定額を安倍事務所側が「立て替え」、ホテル側に支払って、その金額に見合う領収書を受け取って参加費と引き換えに参加者に渡したということもあり得るだろう。しかし、前夜祭は、「自由参加」の立食の会であり、予め参加の申込みが行われているわけではないはずだ。そうなると、安倍事務所職員が、予め金額を確定してホテル側に支払い、その分の「ホテル名義の領収書」を受け取るということはできないのが通常だろう。
安倍首相の「説明」にある「ホテル名義の領収書」というのが、ホテルニューオータニの正式の領収書であったとすると、安倍事務所側で、「参加者数」を決めて、一人当たりの領収書の金額に「参加者数」を乗じた金額をホテル側に支払って、その人数分の「ホテル名義の領収書」を受領し、参加費の支払と引き換えに参加者に渡したということしか考えられない。
そうなると、そこで前提とされた「参加者数」が、実際の「想定参加者数」と一致していたのかどうか、ということが重大な問題となる。「ホテル名義の領収書」を受け取る際の支払いの前提となった「参加者数」よりも、実際に5000円の参加費を支払った人が少なかった場合、その差額は、安倍事務所側が負担し、安倍事務所には、その分の「ホテル名義の領収書」が残ったということになる。この場合、一人分の「ホテル名義の領収書」の金額と、1人当たり参加費の支払額は一致するが、安倍事務所のホテルへの支払額の総額と、参加者から受け取った参加費の総額は一致しない。
ホテル側に実際に支払われたパーティーの費用の総額が明らかになっていないので、「ホテル名義の領収書」が一枚5000円だったとしても、一体、何枚の領収書が安倍事務所側に渡されたのかが判断できない。
また、ホテルへの支払いが一人当たり5000円では到底足りず、その差額を安倍事務所側で補填しようと考え、「想定参加者数」を大幅に水増しし、実際に参加した人からの支払いとの差額を安倍事務所ないし安倍後援会側が負担したという可能性もある
仮に、そのようなことが行われたとすると、公選法上、政治資金規正法上、どのような問題が生じるのか。
公職選挙法上の問題
まず、公選法199条の2が禁止する「公職の候補者等の寄附の禁止」に当たるか。
確かに、前夜祭の飲食の提供について、ホテル側が、一人当たりの価格設定を「5000円」としていて、その金額と一致する5000円の会費が支払われていれば、金額が釣り合っているので「寄附」には当たらないようにも思える。
しかし、もし、その「5000円」が、実際の参加者を大幅に上回る「想定参加者」を前提に設定されたものであり、実際に提供される飲食費の一人当たりの金額が「5000円」を大幅に上回っていたとすれば、その「超過金額」の分の「寄附」をする意思があり、実際寄附が行われたことになる。
その場合、安倍事務所側が、ホテルへの参加費総額を支払って「ホテル名義の領収書」を受領した際に前提とした参加者数が、実際に想定していた参加者数に見合ったものであったかについての事実確認を行う必要がある。
政治資金規正法上の問題
政治資金規正法上は、安倍首相の「収支は発生しないため、政治資金規正法上の違反にはあたらない」との「説明」は、全く通る余地がない。
「桜を見る会」のツアーは、安倍晋三後援会名義で参加を呼び掛けていることからしても、政治団体である同後援会の活動の一環として行われていることは否定できない。その後援会の事務を行う安倍事務所側が「想定参加者数」でホテル側に支払いをしたとすれば、それ自体が、政治団体としての安倍晋三後援会の「支出」であり、その後、実際に参加者から「一人5000円」で受領した参加費の総額が「収入」となる。この「支出」と「収入」の両方を、政治資金収支報告書に記載すべきであることは言うまでもない。
この場合、安倍晋三後援会の政治資金収支報告書への不記載ないし虚偽記入の政治資金規正法違反が成立することになる。
一流ホテルのニューオータニであれば、「代金を受領しないまま、ホテル名義の領収書を安倍事務所側に大量に渡すことはあり得ないだろうし、参加者数が確定しないのに、一人当たりの参加費を「5000円」として領収書を交付し、参加者が想定より少なかった場合のリスクをホテル側が負担するということも考え難い。
安倍首相自身が「説明」に用いた「ホテル名義の領収書」が、この「桜を見る会」の前夜祭をめぐる問題の事実解明の“鍵”となるかもしれない。