2019年11月7日木曜日

共通テスト「国数記述式」にも課題は山積 中止すべき

 大学入試共通試験での英語の民間試験は著しく公平性に反するとされて、政府は24年度まで延期することに決めました。しかし24年度になっても民間任せの形で復活させるべきではないというのが、受験生や関係者のほぼ一致した意見です。
 この共通試験では、今回から国語と数学で記述式問題が出されることになっていますが、これについても採点の公平性が保てるのかについて関係者が問題視しています。
 
 50万人の記述式解答を採点するには、採点者一人では受験者50人分を見るのが限度とすれば、1万人の採点者が必要になります。そんな陣容を抱えている組織はどこにもありません。勢いアルバイトに頼るしかありませんが、それだけの規模になるとどうしても学生アルバイトが多数を占めるのではないかと見られています。
 1人で50人を採点する場合でも完全に公平で合理的な採点が行われるかは疑問です。それが1万人規模の採点者の間で統一的で公平な採点が行われるかとなると、そんなことを信じる人はまずいません。
 
 それが第一の根本的な問題ですが、もう一つ、受験者は自分が共通試験で何点採れたかを予測することで具体的な受験校を決めることになるのですが、記述式問題については何点取れたのかの予測がしにくいと言う問題があります。これも深刻な問題です。
 受験生や関係者から、「国数記述式問題」にも採点の公平性の問題が大いにあるとして、中止すべきだという要求が噴出しています。
 
 日刊ゲンダイ、東京新聞、日経新聞が取り上げました。
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民間試験よりも酷い 共通テスト「国数記述式」に課題山積
日刊ゲンダイ 2019/11/06
「安心して受験に臨める仕組みを構築していく」(萩生田文科相)――。来年度の大学入試から導入予定だった英語の民間試験活用の実施が突然、延期となり、新たな「大学共通テスト」を控えた高校生は大混乱だ。しかし、問題は英語だけじゃない。国語や数学の記述式問題でも問題は山積みなのだ。
 
 5日の衆院文科委で、野党議員は英語の民間試験に加え、国語や数学で導入される新たな記述式問題の採点についても参考人から意見を聴取。驚いたのは、採点者について参考人に尋ねた時だ。
「アルバイトということも当然ある」
 こう答えたのは、ベネッセの山崎昌樹学校カンパニー長。同社は、共通テストの「国語」の記述式問題の採点を大学入試センターから請け負っている。タダでさえ、正誤判断が難しい記述式問題を「アルバイト」が採点するというのだからビックリ仰天だ。山崎氏は「といっても、本当にそれ(採点)を瞬間的にやるということではなくて、数年間を通して、採点業務を真摯にやっていただいている方々」などと説明していたが、「(アルバイトが)学生なのか社会人なのか、どの国籍なのかは問うていない」とも発言していた。
 
 ベネッセが採点業務にたけた「赤ペン先生」を抱えているとはいえ、人生を左右しかねない大学試験の採点を「アルバイト」に委ねるかもしれない学生はタマッタもんじゃないだろう。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はこう言う。
「『共通テスト』を担う大学入試センターの試行調査(プレテスト)によると、採点の修正率は0・2~0・3%。つまり、センター試験の受験者数は約50万人なので、1000~1500人に採点ミスが生じることになる。アルバイトが採点の質を担保できるのか不明なうえ、このままでは多くの採点ミスが出かねません。国語の記述式は、5段階で評価するため、採点作業もかなり煩雑になります」
 
 受験生は「自己採点」をもとに志望校を選定する。つまり、ここの部分がいい加減な採点になると、すべてが水泡に帰すのだ。
「記述式問題は、多くの国公立大の2次試験で課せられています。大きなブレを生む可能性のある記述問題を共通テストに導入する理屈が果たしてあるのかは疑問です」(石渡嶺司氏)
 英語の民間試験に続いて記述問題導入も延期になるかもしれない。
 
 
大学共通テスト 国数記述式 採点に民間アルバイト
東京新聞 2019年11月6日
 「大学入学共通テスト」を巡り、衆院文部科学委員会が五日開かれ、国語と数学で新たに出題される記述式問題の採点者に、民間業者が雇用するアルバイトも含まれることが明らかになった。「公平・公正性が保てない」として、教育関係者らから強い反対の声が上がった。(柏崎智子)
 
 記述式問題の採点は、受験者数が約五十万人と膨大なため、テストを実施する大学入試センターでは対応できないとして、民間の「ベネッセコーポレーション」の子会社に委託される。
 文科委に参考人として出席したベネッセの山崎昌樹・学校カンパニー長は、採点者としてアルバイトを雇用するかを尋ねた畑野君枝議員(共産)に対し、「恒常的に(採点を)やっている人もいるが、アルバイトも当然いる」と認めた。
 学生アルバイトも含まれるかは直接答えなかったが「学生か社会人か、国籍(がどこ)か、私たちは問うてない。学力テストの採点者たり得る能力があるかを見させていただいている」と述べた。
 
 一方、「“入試改革”を考える予備校講師の会」は同日午後、立憲民主など野党共同会派の文部科学部会で、文部科学省に記述問題導入の中止を提言する緊急声明を提出した。
 部会には、大学教授や高校教職員、高校生も出席。マークシート方式ではなく、受験者が自由に文章などを書く記述式では、出題側の想定外の解答もあるのが常で、採点に時間がかかる上、採点者に出題者並みの能力が必要だと指摘。記述式は受験者が自己採点することが難しく、二次試験の出願先を正しく決められなくなる危ぐも訴えた。
 
 大学入学共通テストについては、文科省が二〇二〇年度からの英語の民間検定試験の導入を断念し、延期を決定した。五日の衆院文科委では、英語の入試問題に詳しい京都工芸繊維大の羽藤由美教授がこの制度が決まった時から破綻必至なことは多くの研究者が指摘してきた。民間ありきでなく、専門家の知恵を結集しゼロから考え直して」と訴えた。
 
 
大学入学共通テスト「国数の記述式も見送りを」 
 日経新聞 2019/11/5
英語民間試験の活用が見送られた2020年度開始の大学入学共通テストを巡り、高校現場や政界などから国語と数学の記述式問題についても導入見送りを求める声が出ている。採点の公平性への疑問や、受験生の自己採点の難しさが理由だ。文部科学省は不安解消策を講じた上で予定通り導入する姿勢だが、関係者の懸念は強い。
 
「記述式の自己採点は無理、危険だ。何点か分からないまま出願しないといけない」。5日、参院議員会館で開かれた野党の会合で静岡県立掛川西高の駒形一路教諭(国語)は語気を強めた。
記述式問題は従来のマーク式問題と異なり、採点が複雑で自己採点も難しい。50万人規模が受験する共通テストでは1万人程度の採点者が必要とみられる。駒形教諭は「1万人の採点者がいれば、採点基準は少しずつ変わっていく」と、採点がぶれて不公平になる恐れも指摘した。
 
自己採点が難しいのは解答例を読んで部分点がとれたかを判断する際などに読解力を求められるからだ。18年の共通テストの試行調査では、自己採点と実際の採点結果の一致率が国語で66.0~70.7%にとどまった。
現行の大学入試センター試験は全問題がマーク式。一致率は100%が期待でき、国立大入試などは自己採点の結果を基にした出願が定着している。代々木ゼミナールの佐藤雄太郎・教育事業推進本部本部長は「受験生は解答例と自分の表現が同じかどうかといった点で悩むだろう。得点が分からず、出願先選びが安全志向になる可能性がある」と危ぶむ。
 
5日の衆院文部科学委員会。全国高等学校長協会の萩原聡会長(都立西高校長)は「意見集約はしていないが今後の不安はあると認識している」と発言。日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘学園理事長)は「採点は各大学がしたらどうか。完璧な解答があるということに疑問がある」と述べた。
 
公明党の山口那津男代表は5日の記者会見で「公平性や評価の妥当性を確保するために最大限の配慮をすべきだ。与党の議論を十分にした上で、その意見を政府も受け止めるべきだ」と述べた。立憲民主党の福山哲郎幹事長も会見で「記述式という大きな課題が残っている」と強調した。
大学では東北大が不公平の恐れを理由に国語では記述式の成績を原則合否判定に活用せず、合否ラインに同点で並んだ場合のみ使うとしている。
 
一方、菅義偉官房長官は5日の会見で「今回の英語の試験とは違うのではないか」と述べ、見直しに慎重姿勢を示した。英語民間試験と異なり、大学入試センターが一律に実施する試験の一部であることなどを念頭に置いた可能性がある。
活用を予定している東京都内の有名私立大の入試担当者は同日、「自己採点が不正確になりかねないだけで活用を見送るのには疑問があるが、懸念の払拭へ万全の準備をしてほしい」と求めた。
 
文科省は対策を講じる考え。採点を確実に行い、自己採点をしやすくするための措置を検討する。入試センターは課題を洗い出すため11月中に高校生約1万人に記述式問題を解いてもらい、「模擬採点」を実施する。採点業務を受注したベネッセグループの企業とともに検証し、年明けに結果を公表する方針だ。