2019年11月1日金曜日

マラソン・競歩だけではない さながら炎熱地獄の東京五輪

 来年に迫った東京五輪のマラソンと競歩は、IOCの決定で会場が炎熱の東京から札幌に移りました。その時期 札幌なら涼しいとは言い切れませんが、東京よりもはるかにマシなことでしょう。少なくとも「選手第一」に徹したと言い訳することが出来ます。
 コースが涼しくなるようにと、それなりに努力した小池都知事は大いに不満なようですが、納得できる成果が出ず解決できなかったのですからやむを得ません。
 しかし炎熱の東京での実施が困難な種目はマラソンと競歩に限りません。車いすで行うロードレースはもっと過酷だと言われます。パラリンピックの各種目についても、選手の健康の観点から真剣に検討すべです。
 
 日刊ゲンダイが五輪に限定して他の種目では問題がないのかの観点から記事を出しました。
 それによると、総合馬術、ホッケー、テニス、ゴルフは特に危険で、IOCは屋外競技であるビーチバレー、7人制ラグビー、野球、自転車競技についても問題視しているということです。
 またトライアスロンと水泳オープンウオーターの会場となるお台場海浜公園の海水は、選手から「トイレ臭い」というクレームが出ているし、ボート会場のスタンドは屋根が半分しかないため、ボートの世界ジュニア選手権を見に来て、刺すような日差しを浴びた観客には、大変に不評だったということです。
 新国立競技場でのフィールド競技には日光直射の問題は起きないのでしょうか。
 
 まさに何もかもが問題という感じですが、この期に及んでこんなことになった根本原因は、日本五輪招致委員会がこの時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」(立候補ファイル)と謳ったことにあります。
 まさに、安倍首相の「福島原発はアンダーコントロール状態にある」という放言と並ぶ「ウソ八百」です。
 30日放送の『ワイ スクランブル』(テレビ朝日)に生出演した、当時の招致委員長であった猪瀬直樹・元東京都知事そのことを問われると、「プレゼンテーションってそんなもんでしょ」と開き直ったということです。
 
 何ともふざけた話で問題になりませんが、ただ「そもそもは新国立競技場はザハ・ハディドさんの設計だったわけで、屋根があって勿論クーラーが効いていることが前提なんです」と述べたのには一理あります。しかしそれは後付けの言い訳と思われ、実際にそうはなっていないし、何よりも五輪招致時の言い分に反します。
 あらゆる会場をそうするには莫大な費用が掛かるわけで、その覚悟が本当に安倍首相や猪瀬氏にあったかは疑問です。猪瀬氏はその後数千万円の不明朗な金を受領していたことが指摘され知事職を辞任したので、「後は野となれ山となれ」だったようです
 
 いずれにしても史上最悪の5輪という汚名を回避するためには、残された期間内で会場の移転を含めて、競技時刻の変更の他、ハード面でも何が出来るのか最善を尽くす必要があります。
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東京五輪崩壊 マラソン・競歩以外に変更すべき競技はある
日刊ゲンダイ 2019/10/31
 マラソンと競歩で「終わり」なのか。
 2020年東京五輪のマラソンと競歩の札幌開催について協議する国際オリンピック委員会(IOC)の調整委員会が30日から始まった。コーツ委員長は会議冒頭の挨拶で、「16日のIOC理事会でマラソン・競歩の札幌開催は決まった」と発言。東京都の小池百合子知事は「東京都に詳しい説明、議論もないままで、極めて異例の事態ととらえている」と述べ、納得できる説明を求めた。
 だがしかし、今回の開催地移転の話はマラソンと競歩で終わるとは限らない。
 
 コーツ委員長は25日の小池知事との会談で「マラソンと競歩以外にも暑さ対策に課題が残る競技があり、開始時間の変更を検討する必要がある」と語っていたという。1日まで行われる調整委員会では、さらに開催地や会場移転、競技の開始時間変更も議題になるとみられている。こうなると、真夏の東京で五輪を開催すること自体、無理があると言っているようなものだ。
 
■馬はヘロヘロ、海はトイレ臭
 実際、多くの競技が五輪本番に向けて8月にテスト大会を実施。暑さに関するいくつもの問題が浮き彫りになった。
 総合馬術(12~14日=海の森クロスカントリーコース)は、本番の競技時間(午前8時30分~11時10分)を想定し午前10時に開始。気温30度以上、湿度も80%以上という過酷な条件で人はもちろん、暑さに弱い馬もヘロヘロ開始時間を早朝に前倒しするよう求める声が多数出た
 
 トライアスロン(15~18日)と水泳オープンウオーター(11日)の会場となるお台場海浜公園は、トライアスロンの選手から東京湾の水が「トイレ臭い」という声が上がり、テスト大会前日の水質検査では、基準の2倍を超える大腸菌が検出された。よって、スイムは中止となり、ランとバイクのみのデュアスロンとなった。
 ホッケーのテスト大会(17~21日=大井ホッケー場)も最高気温が40度近くまで上がった。
「新しいホッケー場は風通しがよく、海風も入る。スタンドは東向きなので観客は日陰で観戦できる。テスト大会は無観客でしたが、関係者で2600人収容のスタンドはほぼ満員。熱中症の人は一人も出ませんでした。ホッケーの本拠地(ナショナルトレーニングセンター)は岐阜にある。東京より暑さは厳しいので慣れている。試合後半も大丈夫でした」(日本ホッケー協会広報部)
 ただし、あるホッケー関係者はこう言う。
「20日のインド戦は開始時間(午前11時45分)前には気温は37度まで上がり湿度もかなり高かった。選手のベンチにはミスト噴霧器も置かれていたものの、五輪本番は緊張の度合いが違う。カンカン照りのピッチで60分のプレー(各15分の4クオーター制)は厳しいですよ」
 
 海の森水上競技場でテスト大会を兼ねたボートの世界ジュニア選手権(7~11日)には、世界各国から多くの観衆がやってきた。会場では瞬間冷却剤などが配布されたが、屋根が半分しかないスタンドにいる観客は、刺すような日差しに文句タラタラだった。日本ボート協会吉田健二広報委員長が言う。
「風があれば50人ぐらいが入れる遮熱テントの下にいれば体感温度は問題ないでしょう。高い効果が証明された。テスト大会のときは、そのテントは3張りでしたから、かなりの数のテントを海沿いに張って欲しいと組織委員会にお願いしました。スタンドの屋根が半分なのは小池知事が節約したからです。屋根をスタンドの全面につけることと、アイスバスの設置を要望しています」
 果たして組織委員会は、全ての要望を聞き入れてくれるだろうか。
 
■地獄のフェアウエー
 ゴルフも心配だ。埼玉県といえば熊谷が日本一暑いことで知られている。昨年の7月23日には最高気温が41・1度を記録。観測史上、国内最高気温を塗り替えた。会場の霞ケ関カンツリー倶楽部は、熊谷から車で40~50分ほど南下した川越にある。某メンバーが言う。
7月後半から8月中旬の暑さは地獄です。コース内の気温は40度前後まで上がる。この2、3年は異常です。汗は滝のように流れてくるから、パッティングの時が困る。冷水を大量に飲んでも汗になるのでオシッコが出ない。思考能力も低下するし、プレーが雑になる。自分のコースのことですから悪く言いたくはない。でも、一年で最も暑い時季に、なぜ日本で最も暑いといわれる地域でオリンピックをやるのか。コースコンディションも最高の状態でお迎えできるかわかりません。酷暑の中で、プレー時間は4時間以上。選手もそうですが、帯同するキャディーが先にやられますよ」
 
 テニス会場の有明テニスの森公園も、屋根があるのはセンターコートだけ。それ以外のコートは炎天下で2~3時間は走りっぱなしだ。競技時間の長短はあれど、ビーチバレー7人制ラグビー野球自転車も屋外競技だ。「アスリートファースト」を理由にマラソン・競歩の札幌移転を決めたIOCは、これらの競技を問題視している。コーツ委員長に会議で指摘される前に、組織委員会は競技時間や会場を再考した方がいい。もう、「東京五輪」ではないのだから。